第6回 組み込み系開発に求められる要素技術(ITスキル)
私は経験30年程のコンピュータ技術者で、ここ2~3年程はインドをナレッジアウトソーシング先にした仕事を行っていました。それ以前の10 年程のミッションは技術開発におけるプロジェクト管理でした。その中でプロジェクト進行上でのリスクで最も大きな問題に人材としての開発技術者の確保があり、更にはIT以外の方々がIT開発系の人材の特徴に対する知識を、全くと言っていい程理解していない事実を痛感していました。この事を「コミュニケーションリスク」として捉え改善の為の解説をいたします。
1.組み込み系開発に求められる要素技術(ITスキル)
今回のテーマはIT開発プロジェクトの中でも「組み込み系開発」と呼ばれるジャンルで、主な対象は製造業に携わる方となりますが、通常我々が信じている以上に「組み込み系」製品の我が国経済に与える影響が大きい事も知っておいていただきたいと思います。
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2.組み込み系のマーケット規模?
正しい認識はリスクコントロールの基本!の原則にしたがい、いわゆる 組み込み系の市場規模の概要を御紹介しておきます。ただし、ここでの数字は「IPA:独立行政法人・情報処理推進機構」、2005年06月時点での日本国内組み込み系の現状からの抜粋です。
① 市場規模
組み込みシステム関連産業の市場規模は51兆円!で、国内総生産の1割を占めるほどに成長しており、更なる成長も見込めるとの事。
② 組み込み系ソフト開発者の現状
・組み込みソフトウェア開発者の需要も急速に増えつつある
・組み込みソフトウェア開発に従事するエンジニア数:17万5000人程度との事
・現在は国内で7万人ほど不足している状態
(これはアンケートを実施した企業内での数字なので、国内の外部外注先の数字は含まれていません)
・年齢構成(熟練技術者が不足)
⇒ソフトウェア技術者では30代前半よりも若い人員が 6 割を超えている
⇒ハードウェア技術者でも同様に6割を超えている
③ 企業の対策
・ソフトウェア開発者不足を補うために8割以上の企業が外部委託(国内)
・1/3程の企業は海外にも委託している
⇒大部分が中国とインドへのオフショア
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3.組み込み系開発の問題点
この分野の業界とITエンジニアのスキル共に、急速に拡大する市場に追いつけず,開発現場が多くの課題に直面しています。
① 企業経営者の意識と製品の品質
当然の事ながら、競争力の強化の為、企業経営者は高い品質の製品を要求します。しかしながら、あるアンケート調査結果によると、下記のような結果も出ている事を知っておいて下さい。
・不具合率が10%を超えた企業は全体の約27%
・45%が不具合率10%を超えている
② 開発プロセスが守られていない
実は「組み込み系」開発に限らずITの技術開発全体に言える事ですが、下記のようなアンケート調査もあります。
・20%を超えるプロジェクトが、いまだ標準的な開発プロセスを適用していない
・開発計画書にしても、全社や部門共通のひな形があるのは35%程
⇒全く、作成しないプロジェクトも8.5%存在する!
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4.オフショア開発の利点と問題点
最近はインドを対象とした、オフショア開発が話題です。オフショア先にインドを設定することにより、高いクオリティーのソフトを安定して提供できる可能性がありますが、明らかに多くの方が誤解している部分もありようです。
① 日本企業から見たインド IT 企業の特徴
・優秀な人材が多数存在
⇒大量のソフト開発の需要に対応可能
・クオリティーの高さ
⇒緻密な作業習慣から高いクオリティーのソフトを提供
・バランスの良さ
⇒一定の機能のソフトを、一定の期間で、一定のクオリティーで提供
② 誤解している部分
・とくかく発注単価が安く済む?
これは一概には言えません、確かに人件費は安く済みますが、距離があるための通信、移動費用、更にはドキュメントの翻訳費用が発生する事を意識しておく必要があります。
・役割分担の不明確
どのタイミングで、何を、どちらが行うかのワークフローを定義して、管理しないとコミュニケーションリスクによる無駄作業が発生します。
③ 役割分担の例
オフショア開発を成功させる為の基本は、詳細な事前の取り決めにあります!
・「組み込み系」の場合
⇒日本側:要件確認、オフショア管理、最終検査
⇒オフショア側:設計、製造、検査
・「業務アプリ開発」の場合
⇒日本側:コンサル、要件分析、基本設計、オフショア管理、最終検査
⇒オフショア側:詳細設計、製造、検査、メンテナンス
【注意】
今回の記事を作成するにあたり、日本の組み込み系市場規模等の数値は「IPA:独立行政法人・情報処理推進機構」より提供されているダウンロード資料に記載されている情報によりました。
「2005年版組込みソフトウェア産業実態調査」
URL=http://sec.ipa.go.jp/download/200506es.php
ただし、ここで取り上げた情報は必ずしも政府外輪団体等の調査した正規のものばかりではなく、筆者個人の経験と感覚に基づいた情報も使用している事をお断りしておきます。 |
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■筆者より
「本稿はIT以外の方を対象としたコミュニケーションリスク軽減が目的。。。」等と宣言しておきながら、堂々と?「組み込み系開発に求められる要素技術」等とITエンジニアの言葉を使っている記事を読んでいただき感謝しております。人材に関するリスクコントロールは対象が人間であり、最も難しい分野であることを認めつつも、新たにプロジェクトコントロールに係る様になった方々はもとより、IT以外の方々で自分の周りで行われているIT開発のメンバーの構成とスキルの関係を理解したいと考えている方々の「コミュニケーションリスク」改善にたとえ1%だけでもお役にたてればとの思いでお送りしています。
同時に思わぬ所で、私の記事の読者の方からお声掛けいただき感動もしており、同時に幾つかの次回作のアイディアまでいただき感謝もしています。頂いたアイディアに付きましては真剣に検討しRMCA編集事務局へ提案したいと考えています。
★今後の予定
7.電子回路設計開発に求められる要素技術(ITスキル)
・ハードウエア開発技術者の持つ要素技術を理解するのもリスクコントロール
・製品の全開発工程でお仕事の手順
・製品種別により求められる要素技術
-アナログ回路設計技術者
-パルス回路設計技術者
-デジタル回路設計技術者
-低周波回路設計技術者
-高周波回路設計技術者
-電源回路設計技術者
以上毎月1回ペースでお送りしていましたが、次回で終了となります。 |