第3回 ITスキルスタンダードって何?
私は経験30年程のコンピュータ技術者で、ここ2~3年程はインドをナレッジアウトソーシング先にしたビジネスを行っていますが、それ以前の10 年程のミッションは技術開発におけるプロジェクト管理でした。その中でプロジェクト進行上でのリスクで最も大きな問題に人材としての開発技術者の確保があり、更にはIT以外の方々がIT開発系の人材の特徴に対する知識を、全くと言っていい程理解していない事実を痛感していましたので、この機会に解説させていただきます。
1.「ITスキルスタンダード」なるものがあります
一口にIT関連の「職種」といっても多岐に亘り、更に仕事に携わる技術者のスキルレベルとなると中々明確に判断できないのが実情です。そこで経済産業省で、一応の判断基準を定義していますので御紹介します。
① 「ITスキルスタンダード」とは指標
「ITスキルスタンダード」とは、各種IT関連サービスを提供する「職種」の単位で、業務に携わるのに必要な技術者の知識やスキルレベルなどを体系化した指標です。
それぞれの「専門分野」毎に達成度指標を定め、更に指標ごとに必要とされるスキル(熟達度)を7段階で定義しています。
② 11の「職種」
「ITスペシャリスト」や「ソフトウェアデベロップメント」、「プロジェクトマネジメント」、「マーケティング」など11の「職種」を定義し、それぞれを製品や技術などによっていくつかの「専門分野」 に細分化しています。
【表1:11の職種】
No. |
職種 |
No. |
職種 |
1 |
マーケティング |
7 |
セールス |
2 |
コンサルタント |
8 |
ITアーキテクト |
3 |
プロジェクトマネジメント |
9 |
ITスペシャリスト |
4 |
アプリケーションスペシャリスト |
10 |
ソフトウェアデベロップメント |
5 |
カスタマサービス |
11 |
オペレーション |
6 |
エデュケーション |
|
|
③ 7段階のレベル
個々の「職種」や「専門分野」に対して、技術者の実績や能力に応じた7段階のレベルを定めています。
・レベル1~2:
このレベルの知識は、e-ラーニングや大学の講義でもカバー可能。
・レベル3~4:
情報処理技術者試験で測定できる知識レベル。
・レベル5~7:
相当高度なスキルであり、対面のインタビューなども必要となるので、的確に認定することは困難。
●
2.要素技術と経験年数の関係
図1に有名な?「ITスキルスタンダード」のイメージ図を示します。
●最上段は「職種」:11種類の職種に分類されています。
●その下が「専門分野」で「職種」毎に細分されています。この部分はいわゆる「要素技術」の部分となります。
●下段部分が各「要素技術」別に求められる「レベル」と7段階に分類してマトリックスを構成しています。
※この図の一つの使い方としては、IT関連の「職種」と、必要とされる「要素技術」と、求められる「スキルレベル」を理解する指標として便利に使えます。
【図1:ITスキルスタンダード】

3.立場の違いによるコミュニケーションリスクの問題
図1の「ITスキルスタンダード」のイメージ図での「職種」毎に「専門分野」を分類して求められるスキルレベルを説明していますが、通常仕事を進めていく場合には異なる「職種」の担当者が参加して進められます。そこでは当然の事として「専門分野」の違いからのコミュニケーションリスクが発生することになります。
ITスキルスタンダードはその性格上、各「職種」毎にレベル付けされていますが、レベル付けに対応しての一貫した教育訓練が提供されていないのが実情です。「専門分野」が各々独立して、それらを横串的につなぐような体系だった思考ができる人材は極めて少ないのも現実です。
立場の違いによるコミュニケーションリスクの回避策は、各「職種」にまたがった広範囲な知識と経験を有する人材がキーマンとして存在するかにかかっています。しかしながら、そのキーマンとなる人材に求められる知識範囲の広さは多岐に亘り、しかもIT業界自体歴史が浅いこともあって知識としても秩序だった体系等が存在していませんし、現在提供されているIT関連教育が個別分野の知識重視に限定されていることも問題としてあげられます。
※IT関連以外の方が、IT開発のミーティングに参加する場合に、同じIT関連のメンバーでもその「職種」の違いによるコミュニケーションギャップが生じている事が、ミーティングでのコミュニケーションを冷静に観察してみると気づく事も多いと思います。
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4.ハード開発者とソフト開発者での、ハード仕様書とソフト仕様書との意味の違い
一種のコミュニケーションリスクコントロールですが、ハード技術者とソフト技術者間の勘違いの例を御紹介します。
① ハード技術者
一般には電子回路設計や実装技術と言って筐体(きょうたい)設計を担当します。
●実装技術1:設計した電子回路を実際にボード上にパーツを配置して動作する回路に組み上げる技術を言います。
●実装技術2:筐体(きょうたい) → 入れ物、ケースへボードや電源と言ったパーツを組み込む技術を指して言います。
●ハード仕様書:文字通り電子回路の仕様書を指します。
●ソフト仕様書:通常はアプリケーションプログラムが参照する、直接ハードウエアを制御する部分を指します。
② ソフト技術者
ハードを制御する為のプログラム作成、ビジネスを支援する為のアプリケーション開発をする技術者等広範囲に使われる表現です。
●実装技術:ソフト技術者の言う実装とは、書物に書かれていたり、あるいは頭の中で考えたプログラム構造を実際にプログラミングする事です。物理的に物を製作して機器に組み込むわけではありません。
●ハード仕様書:直接ハードウエアを制御するプログラム部分の主にインターフェースを記載したドキュメントを指します。
⇒ハード技術者は、この部分を「ソフト仕様書」と考えます。
●ソフト仕様書:いわゆるアプリケーションソフトウエアを開発する為の設計ドキュメントの事を指します。
※これもコミュニケーションリスクの一種と言えますが、もし貴方がハード技術者、ソフト技術者の両方が参加するミーティングを主催する場合には注意することをお勧めします。
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■筆者より
今回経済産業省が公開した「ITスキルスタンダード」を例に取り上げましたが、実はIT以外の方がIT関連の「職種」の方々とのコミュニケーションリスクの可能性を理解するか、最小にするのに役に立つと考えています。少しでもお役に立てれば幸いです。
今回記事を作成するに当たり、下記Webサイトよりダウンロードさせていただいた、ファイルに記載された調査報告を参考にしました。
【経済産業省】http://www.meti.go.jp/report/data/g21226aj.html
ITスキル標準
-ITサービス・プロフェッショナル育成の基盤構築に向けて-
(ITスキル・スタンダード協議会報告書)
【注意】
ここで取り上げる情報は必ずしも政府外輪団体等の調査した正規のものばかりではなく、筆者個人の経験と感覚に基づいた情報も使用している事をお断りしておきます。
人材に関するリスクコントロールは対象が人間であり、最も難しい分野であることを認めつつも、新たにプロジェクトコントロールに係る様になった方々はもとより、自分の周りで行われているIT開発のメンバーの構成とスキルの関係を理解したいと考えている方々の参考になれれば幸いです。 |
★今後の予定
4.ビジネス系開発に求められる要素技術(ITスキル)
・言語ベースや、簡易言語での開発者
・クライアント・サーバーって、どんなシステム?
・最近のWeb系アプリケーションでのリスクコントロール
・ハッキング防止技術を持ったWeb系アプリ開発
→これからもっとも求められる種別のエンジニアを確保する方法!
5.OS、システム系開発に求められる要素技術(ITスキル)
・知られざる開発の実際!
・ハイリスクな開発の実態
・開発技術者に求められる要素技術
6.組み込み系開発に求められる要素技術(ITスキル)
・正しい認識はリスクコントロールの基本!
・現在と今後数年のマーケット規模を理解するべき
・今後の日本での開発規模拡大と人材不足リスクを意識していないのは日本人くらい
→インドからのアプローチと問題点
7.電子回路設計開発に求められる要素技術(ITスキル)
・ハードウエア開発技術者の持つ要素技術を理解するのもリスクコントロール
・製品の全開発工程でお仕事の手順
・製品種別により求められる要素技術
-アナログ回路設計技術者
-パルス回路設計技術者
-デジタル回路設計技術者
-低周波回路設計技術者
-高周波回路設計技術者
-電源回路設計技術者
以上毎月1回、残り4回でお送りします。 |