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第67回 ニヒリズムの産み出すリスク

ニヒリズムとは虚無主義と云われます。世の中のことに何も意味、価値を見出さず、何を行なっても仕方がないという絶望の雰囲気が今のコロナ渦、漂っています。ニーチェに代表されるこのニヒリズム、何がリスクか、それは人々を無気力化させてしまうということです。どうせ何をやっても夢も希望もないし、新しいことに挑戦もせず、日々安楽に過ごすことができればそれでよいという思考回路を産み出します。今の日本はそれが非常に顕著に出ています。自粛自粛、不急不要の外出は控えなさい、三密は極力避け、アルコール提供はダメ、透明なアクリル板の設置、マスクは相変わらず必須、飲食の場でマスクなし、小声で話していることを咎められ、店員にクレームを入れようものなら店長が飛んできて何でマスクしないんですか、理解できませんといわれる始末。

民度が高い民族と日本は云われ続け、日本人はその評判の上に胡坐をかいてきました。民度が高いとは何でしょう?このような世間が思う方向に右へ倣えをし、それに対して朴訥に意味も分からずに一連の行動を順守することを民度が高いというのでしょうか。このままでは民度が高くして、世界に置いていかれ、知らぬ間に後進国に成り下がることは目に見えています。

コロナ渦によってニヒリズムが生まれたということではありません。バブル崩壊から以降、夢と希望を奪い去った世の流れは管理することこそ絶対主義だという風潮に変わっていきました。管理すればするほど評価されると。マネジメントができればそれだけで人心をコントロールできるという勘違い、マネジメント・コントロールという管理の双方の意味合いを含んでしまって、これらが日本全体を覆い尽くす事態になってしまっています。

一方で、効率化や便利さを産み出すツールとしてITが一挙に加速し、いつの間にかITがツールではなく、目的化してきてしまっている勘違いの状態も生み出されています。AI、デジタル化、IoT、ビッグデータ、言葉だけが独り歩きし、造語がどんどん産み出されていっています。本質そのものが何なのかがこういった造語の裏に雲隠れしてしまう状態に、人々の思考状態が退化してしまっていることが現在の日本に他なりません。

現状を見たとき、コロナ渦においてそのことが顕著に現れました。コミュニケーションが奪われ、自粛による経済崩壊、仕事の場も失われ、一気に不景気に雪崩れ込んでいくこの事態、起こるべくして起きています。一言、ネガティブな捉え方をしたこのニヒリズムが蔓延っているといっても言い過ぎではないでしょう。

野球でもサッカーでもよくゲームにおいて“流れ”があると解説者は云います。世間にも流れがあります。この流れを如何にポジティブに持って行くか。大は小を兼ねる理論を使用するならば、国の施策(舵取り)がこの流れをポジティブに持って行く役割であり、本来なら国の担うべきポジションのはずです。しかし、政治家は票取り合戦が気になり、メディアはスポンサー収入や視聴率を気にするあまり、本来の公共施策に寄与する役割を担っていません。本来の役割を担うべきポジションがその役割を果たしていない、果たそうともしていない、そのこと自体にも気付いていないある意味末期症状的な流れが今の日本を覆い尽くしています。会社でも社長が舵取りを担わなければうまくいかないのと同じように、国の舵取りも同じです。トップが舵取りを十分に果たすべき役割と認識し、それを具体的な行動という形に落とすことができてはじめて、世間の流れのベクトルが変わっていくものです。

企業、法人、それぞれ経営理念というモノがあります。この経営理念を謳う企業、法人がこういったニヒリズムの人たちによって下支えされていると創造しただけで寒気がしませんか?組織が形骸化した経営理念に成り下がってしまっているということになりますので、当然まともな経営状態にはなっていないことは自明の理です。

ニヒリズムに陥っている人のことをニヒリストと言うそうです。ニヒリストに皆さんの関係する人々が陥っていないか、今一度点検をする必要があるのではないでしょうか。ニヒリストに陥らないためのリスク対策(ニヒリスク対策←造語です)、これを機会に皆さんの関係する組織からでも対策を行なってみませんか。小さな潮流はやがて大きな潮流を産むボトムアップ方式しか今の日本を救えないのではないかと考える次第です。

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