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第33回 今こそ依存からの脱却、自立に向けて

普遍的リスクマネジメント

乙守 栄一氏

昨今、受け身の人が日本中を席巻している頃、ヒトの心は荒み、ストレスによる心身症、もしくはモンスター化が急速に進んでいます。何が問題なのでしょうか?

自立という言葉の反対に依存があります。依存と言うことは少なくとも自分ともう一人の相手がいます。この相手との関係が壊れるとどうでしょうか?相当な心的破壊が起こります。症状は破壊のされ方により異なります。性格により異なるとでも言いましょうか、状況により異なるとでも言いましょうか、そのダメージは相当な歪をもたらします。

この心的破壊はどうして発生するのでしょうか?それは相手に対して期待・想定していた動き・状況が乖離してしまったときに発生します。そのブレ度合いが大きければ大きいほど、症状が大きく出てしまいます。

たとえば、会社で部下と上司の関係があったとします。常駐の客先における、ある部下の症状は次のとおりです。

上司に自分が期待した動きをしてもらえない、部下はまだまだ未熟と周りに見られ、自分の力を認めてもらえない、上司は仕事の関係で毎日客先には顔を出せないため、クライアントからは部下に対して直接、本来上司が聞くべき苦情が日常のように浴びせられる、その反動で部下はどうなったでしょうか?この部下からは笑顔が消え、常に表情には怒りの形相が現れ、成す行動そのものがモンスター化してきました。その部下は症状として、上司に対してモラルハザードの行動を起こすようになってきました。上司以外に他のメンバーにも同様の行動を起こし、負のスパイラルになっています。

依存の度合いが大きければ大きいほど、このような負の現象は大きく影響しますが、ここで「自立」の心があるとどうでしょうか?

上記例えに準えた場合、まず現状の仕事の場、状況を俯瞰的に見て、客観的に捉えることが必要になるでしょう。

  • 上司に期待した動きをしてもらえない。
    → 上司に期待した動きをしてもらえる(気づきを与える)“動き”をする。
  • 部下はまだまだ未熟と周りに見られる。
    → 未熟と思われる評価は放置し、一心不乱やるべきことをこなす。
  • クライアントからは部下に対して直接、本来上司が聞くべき苦情が日常のように浴びせられる。
    → 届いた苦情を取りまとめ、上司に客観的(決して主観的ではなく)に伝える。自分なりの提案があればそれも加えることでより良い解決策に繋がる。

EQ(感情をコントロールする)やアンガーマネジメント(怒りをコントロールする)など、いくつかのハウツーは出ており、これらを活用するのも一つの手ではありますが、その前提になるのは「自立」の心です。

職場の風土を改善するのも、自立の心があって初めて機能するものです。最近では大手オフィス家具メーカーなど、仕事場となるフロアを大きくレイアウト変更し、それが社員の従業員の生産性、売上などの向上に大きく寄与していると言います。挙って言えるのは、書類が山積みのフロアから脱却し、一挙に整理されたシンプルなオフィスが生まれていることです。導線も意識し、何気なしに本音で語らう場を随所に盛り込むなど、たばこ部屋で会話が弾む空間を、たばこを吸わない人のためにも作り上げるということが実現しているそうです。

「自立」を産む工夫は「働き方改革」推進の一環もあり、随所で進んでいくものと思われますが、組織の中に従属する人であればあるほど、その風土は自分が変われば周りも大きく変わる、という周りの人たちの琴線に響き、必ず届きます。

相手を変えようとする行為、これは依存の心がもたらすものです。そうではなく、相手に気づきを与え、主体的に動いてもらうことこそ、真の自立に繋がります。決して自立という言葉から連想される「よそよそしい」ということではなく、真に自立しているからこそ相手の立場を思い遣り、必要な時には必要な手助けもできる体制が取れる、究極のコミュニケーションマネジメントの姿だと考えられませんでしょうか。

あるべき「自立」の姿、次世代のリーダーに求められる大きな要素になって行くことは間違いありません。真に利他の心があれば、それだけで必然的に自立の要素に繋がっていきます。自分の問題は自分の問題として真摯に反省点として捉えつつ、すべてが自分の抱える問題点ではないということであれば、それを相手に気づかせる工夫をすることで、少しでも自分の心の負担が軽くなると、結果として組織の平穏、得てして生産性向上にもつながっていくのではないでしょうか。

心の健康の源泉、これこそ「自立」です。

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