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第95回 適正な距離感構築によるヒューマンリスク対策

Facebookが流行りだした頃、SNS黎明期であったことも手伝い、これらを集客ツールとして利用する異業種交流会があちらこちらで開催されました。私も人脈という繋がりを拡げる1ツールとして積極的にSNSを活用し、あらゆるジャンルの人とも繋がる経験をしました。しかし、同時にその繋がる人の性質や思惑も様々で、自分自身に軸がないことに依り、この繋がった人たちに結果として振り回されるということも多々経験しました。来る者拒まず、去る者追わず、そういうある種ドライな関係性には打ってつけなのかもしれませんが、真の人間関係を築くうえで、ツール頼みの限界は正直、存在します。

このような仕組みはどうしても機械的な関係性構築に留まらざるを得なかったところ、AIの普及により今後の発展性には期待したいところですが、アナログな関係性構築にはやはりリアルなコミュニケーションは欠かすことはできません。

昔から、京都には独特の関係性構築があると言われています。応仁の乱をはじめ、京という中心を目指す武将たちの野望が渦巻く中、京は数々の焼き討ちに遭ってきました。そういう歴史が繰り返される中、永らく住み続ける京の人々にとって、自然と外の人に対する警戒心が強まったと言われます。ちょっとした言葉の投げかけで返ってくる反応を瞬時に察地し、気配りや配慮をできる人かどうかを見極める力量が備わっている、そういう人が京都(特に洛中)には多いと個人的にも感じます。イケズ文化という表現で代表されることもありますが、こういった昔年の背景があることが理解できると、京都ならではのDNAとして警戒心が本能として摺り込まれていると捉えると納得できます。

ただ、この京都の人の身の処し方には学ぶべき点が多いとも考えます。今でこそ世界でも圧倒的人気を誇る観光都市となった京都。世界中から観光客がやってくる一大都市となりました。京都市内の交通機関は市民が利用する利便性を損ねるほど混雑ぶりが激しくなると、やり過ぎだとメディアを通してきっちりそういう情報がニュースとして流れます。その根底には京都人としての受け入れがたい、市民全体としてのメッセージが込められた警戒心の顕れでしょう。そういう関係性の微妙な匙加減のやり取り、この原点は現代においても通じているものがあると考えます。京都という町全体から個人というレベルに至るまで、懐の内に入るまでにはそうそう容易くはない、「何様のつもり?」と一見高飛車にも見える態度の端々には、決定打を与えない(白黒をはっきりさせない)中で人間や組織としての関係性を維持するバランス感覚があることも申し添えておかないといけません。一例を挙げるならば、返事の仕方一つで、やんわり断る方法「考えときます」は人間関係に致命傷を与えない、長年にわたって関係性を維持する可能性があることを見越した相手への配慮が表現の形となったものです。

人間関係において、距離感は非常に大事であり、この距離感を誤った対応をしてしまうことでせっかくの機会を失ってしまうことにもなりかねない、そういう機微さへの嗅覚に優れた生粋のやり取りが京都という地に育まれている気がしてなりません。Noと云えない日本人、という話題が当時流行りましたが、殊、京都に至っては、「No.と云わない」という表現の方が当てはまっていると考えます。

距離感の構築として具体的には、自分というフィルター(ゲートウェイ)を通過して問題ないと判断できた人だけに限定するコミュニティ、そのような人間関係の構築ができる「目利き力」が必要と考えます。

こういった力量を養うのは決して小手先のテクニックだけで一朝一夕にできるものではありません。真に自分の性格を正確に知り、自身の長所短所も把握したうえで、自分自身と価値観の合うコミュニケーションを図る術を習得していくことが必要です。ちょっとした会話の仕方で攻撃的な言い方をしない工夫(ゴードンメソッドやアドラー心理学でいうところのIメッセージの利用)なども基本中の基本として有効です。会話の中で見える微妙なイントネーションや相手の表情などを自分基準で読み取る術も感覚で覚えることは前提としてあります。京都のように地域性による土壌があれば別ですが、これらの習得は実践での訓練しかありません。

ポストコロナでITへの依拠は一挙に進み、人とひとの心がアナログで触れ合う機会が一挙に減りました。来る者拒まずではなく、来る者を自分基準で選別すること、今だからこそ問われる貴重な力量と考えますが、皆さまは如何でしょうか。

株式会社シー・クレド
代表取締役 乙守 栄一

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