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  1. 普遍的リスク対策 乙守栄一
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第98回 進化(深化)に共通するモノの見方

今の日本の置かれている状況はどうやって出来上がってきたのでしょうか?30年間給与が上がらない、生活レベルは世界から見るとジリ貧になってきている、国民の幸福度は低迷を続けている、そういう今の状況は過去からの積み重ねの帰結です。しかし、長い長い歴史という年月の積み重ねから観たとき、ほんの一瞬に過ぎません。

地政学から見たとき、日本はシーレーン国家と言われ、中国やロシアサイドからすれば、太平洋に大きく出るうえで、巨大防波堤島のように目の前にせり出す邪魔な土地でしかありません。島そのものを鎮めることはできず、結局はその横たわる巨大な防波堤島をどう範疇に治めるか、躍起になっているのが中国でありロシアです。それを遡ること38,000年前、日本は大陸と陸続きでした。数々の地殻変動を経て、今の世界地図の姿に陸地が形成されてきました。

人類の誕生は500万年前とも言われます。仮にその500万年前を人類の歴史のスタート時期とした場合、現在まで500万年という期間、歴史(積み重ね)があるわけです。ここを捉えたとき、日本列島が大陸と陸続きであった3万8000年前の頃はかなり現在寄りであることがわかります。

当然、今に残されている証跡は少ないものの、この500万年前、3万8000年前という基準から人類の経てきた歴史を鑑みると、世界史や日本史で学んだ世界とはまた異なる価値観が得られ、且つ今に通じるモノの観方が得られます。

なぜ、家畜飼育や農耕がユーラシア大陸で発生し、それが長い間続いてきたのか?その逆、南北アメリカ大陸やオーストラリアといった大陸では、家畜飼育や農耕といったその長大な歴史に参画出来てこなかったのか?

ここに一つの事例を上げるならば、ユーラシア大陸は東西に長く続く大陸であること、すなわち同じ緯度で似通った気候であることから、東西に移動することが比較的容易にできたことと、文化が陸続きで伝播しやすい環境にあったことが大きく理由として挙げられます。一方、南北アメリカ大陸は南北に長い大陸であり、南北は寒冷地、赤道付近は熱暑地である環境的要因であることから、家畜飼育や農耕文化が大陸を大きく移動することを大きく阻害した事実があります。オーストラリア大陸は当時から降雨の期待できない、かつ強烈な乾燥地域であることも併せて、動植物が生息するにはあまりに過酷な環境下であったことなども、家畜飼育や農耕が拡がらなかった大きな要因としてありました。

また、人類の生存競争においても、文字の発達や技術・道具の発達により、それを受け入れる度量がその土地の人たちにあったか、あるいは強制的に征服されてしまったかなど、一種の情報の受入れの可否が大きく作用したケースもあります。

一方、大海洋航路が開拓され、大陸が異なる民族の人が行き交うようになると、感染症なども大きな滅亡の歴史を産み出す要因として登場します。アメリカ新大陸にやってきた欧州の人が持ち込んだ感染菌が当時の新大陸在住の人に悉く感染し、大量の死者を出してしまった事実があります。このあたりは直近でもCovid-19パンデミックでも記憶に新しい事象としても肌感を感じられるのではないでしょうか。

「銃・病原菌・鉄(ジャレド・ダイアモンド著)」では、このような観点の大局的な歴史的観点を説いています。今にも通じる話として、今後どのように時代が置き換わっていくか?歴史は繰り返す、ヘーゲルの弁証法でこの大局的な歴史観を捉え直したとき、これから先、日本・世界はどう進化(深化)していくか、少なくとも今の日本の置かれた状況下、モノの見方に警鐘を鳴らさないといけないと自ずとわかる気がします。

海外からの度重なる威圧的な圧力、いとも簡単に世界中と繋がることができるインターネットの危うき利便性、AIやバーチャル環境が登場してきたことで、リアルと仮想の現実の区別が付かなくなってきている混とんとした世界観の創出、何が真で何が偽りなのかがわからなくなり、溢れかえる情報の混在、等々。これら多様な色が一挙に混ざり、どういう色が構成されるか?色は混ぜれば混ぜるほど濁りの度合いが増しているのがリアルな現在です。言い換えれば色合い(特徴)を失っているとでも云えるのかもしれません。ただ、リアルな色は濁りますが、光の色としては混ぜれば混ぜるほど、白くなっていきます。光を希望・夢として捉えるならば、その光をどう編み出していくか?見えない未来、それは光と共に導かれる、過去の濁る柵(しがらみ)ではない世界観、これこそ人が生きてきた道標として長大な歴史を通じて示されてきたのではないでしょうか。

皆様にとって光とは何でしょうか?ホットコーヒーを飲みながら、ふと想いを巡らすことで、ご自身にとって良い指針が得られる機会になるかもしれません。

株式会社シー・クレド
代表取締役 乙守 栄一

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