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第93回 赦(ゆる)すことによる心の解放

現在、ウクライナとロシアによる戦争が継続しています。背景は色々あると思われますが、一進一退の攻防が1年半にもわたり続いている状況です。市民をも巻き込む中、被害を受けた人たちにとっては敵国への恨みがずっと続いています。

ソビエト連邦崩壊後、当時の東ヨーロッパが悉く西側に傾倒していきます。ソビエト連邦に所属していた各共和国がそれぞれ独立していきました。今回のウクライナ紛争はソ連の後を受け継いだ東側の盟主ロシアが、軍事的脅威となる西側NATOのオフェンスラインが東側に押し寄せてきたことへの歪みに対して、大きく揺り戻しが来たことへの対抗措置とも解釈できます。

世界中の文明の利器が融合し合った現代でさえも、心の葛藤が及ぼす数々の衝突や戦争が、歴史を準えた通り繰り返されてきています。歴史は繰り返すとヘーゲルの弁証法にもある通り、良い悪いは別にした進化を遂げて衝突、戦争は繰り返されてきています。今やリアルな世界だけではなく、サイバー空間にも被害が及び、それを実感できないが故に対策も遅れ、実際に被害が起きると甚大な業務停止を伴ってしまうことも日常茶飯事となってきました。

やられたらやり返す、戦場では情も何もかもがかき消され、生死をさまよう修羅の世界になってしまいます。怨みだけが増幅し続け、最終的には目も当てられない仕打ちに至ってしまいます。憎悪、怨念といった情が歴然と民族レベルに根ざしてしまうことが子々孫々続いてきていることもまた事実です。

このように心そのものが傷ついて被害を受けてしまうと、怨みというものがどうしても消えない日常の一コマとして表面に出てきてしまいます。差別問題も然り、国が定める教育カリキュラムにまで範囲は及びます。

この怨恨に対して一つの区切りを付ける行為は“ゆるす”という言葉で定義されます。しかし、この“ゆるす”という言葉は実際にどういうニュアンスがあるのでしょうか。

よく我々が目にする漢字は「許す」の方だと思われます。我々にとって不都合なことがないとして、希望や要求を聞き入れるということが主な意味となります。しかし、この許すという行為自体に異なる心の葛藤が生まれるのも事実です。怨恨を引きずる、拭えない、深ければ深いほどそれはずっと心の奥深くに根が生え、ちょっとやそっとでは抜けない負の拘りとでも言い換えられるかもしれません。

この負の心の葛藤からの解放をどうすればよいでしょうか?それが、このもう一つの「赦す」という漢字に本質の意味が含まれています。あるキリスト教を広める人にとって、「赦す」とは「判断する意識」が「心の内なる声」として聞いた「神の声」による判断基準、と定義しています。真の意味は、相手の過去の過ちを芯から納得して無罪放免にする、というのではなく、一旦怒りの心を自分の外に置き、それをただ単に眺めるということです。自分ごととして捉えないということです。感情のコントロール、感情を手放すEQなどの手法に近いのかもしれません。

また、「恩赦」という制度を耳にされたことがあるかと思います。新元号設立時など祝い事に乗じて実施されることがありますが、各々侵した罪により審判が下され、服役する人たちの刑期を軽減する措置です。罪を犯された被害者自身は怨みが消えない場合でも、服役する人たちに対して国が代替して赦すという「措置」、それが「恩赦」です。ここでいう「国」という立場に自分自身を準えると、自分という存在が日頃抱える被害事象を間接的、客観的な「何か」を怨みとの間に挟み込むことで生まれる、それが「赦す」ということになります。

「赦す」という心境で日頃の気持ちの整理を行なうことによって、日頃ネガティブモードになってしまいがちなところをポジティブに持っていく、一つのきっかけになるのではないでしょうか。

株式会社シー・クレド
代表取締役 乙守 栄一

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