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第55回 釣りの極意から気づく心情について

新型コロナ対応において、自粛が求められていますが、ようやく日本では最初の一つ目の峠を越えたところに到達してきたことかと思われます。しかし、これまで通りの生活を送るにはまだまだ制限が付きまといます。フィジカルディスタンス、三密を避ける、テレワークの推進等、これまでのアナログの接点構築が非常に作り難い状況になってきています。いろいろな局面においてデジタル活用は一層加速していくことは間違いありませんが、人間関係の構築の在り方はアナログであってもデジタルであっても本質は変わりません。

個人的な話になりますが、私はこれまで海釣りを40年以上続けてきています。その釣り技の最高峰ともいうべきターゲットの魚に「チヌ(黒鯛)」があります。淡水では「フナ」、海ではこの「チヌ」というぐらいに技術的にも最高レベルの技が求められます。

警戒心の強い「チヌ」はちょっとした物音にも敏感で、すぐに散ってしまいます。釣り針に掛けたときの強烈な締め込みは、無理が効きません。

そういった警戒心を解くために、細い釣り糸でのやり取りが求められます。当然、チヌとの竿さばきやリールでのやり取りは無理もできません。無理をすると糸が切られてしまいます。この切れるか切れないか、絶妙なやり取りが求められ、最後に水面まで上げ、たも網で掬っていざ御用。ここで50センチを超える「年なし」と言われる年齢不詳の「チヌ」を上げることが目下、チヌ士の憧れの的となっています。

ビジネスにおいても、同じような局面が当てはまります。いきなり、仕事モードであれこれ攻めて行ったところで、警戒という以前に相手にされず、撃沈します。やはり、相手が何を求めているのか?何に困っているのか?これらのことを知るためはまず、信頼関係の構築が肝心です。この信頼関係構築において、自分のことを訴えてばかりでは釣りでいうところの糸が切れてしまいます。自分の我を押し通さず、相手の真意がどこにあるのか掴み、自分の意図するところと擦り合わせていく、まさにチヌ釣りの極意に通じるところがあります。

釣りの極意とは、餌選び(オキアミ、サナギ、コーン、あけみ貝等)とだんご餌(撒き餌)の配合、針の大きさ、潮の流れ、水深から読み取る潮の読み、竿穂先の選定、ライン(糸)の選定等、多くの要素を伴います。それぞれの要素を併せながら、後は竿穂先に現れる魚信(あたり)から魚との対話を行なう形となります。

撒き餌の選定が誤ると、エサ取りと呼ばれる本命外の魚が寄ってきてエサだけ取られるなど、却って手間ばかり取られてしまいます。ただ、これらのエサ取りを寄せて、チヌの持つ餌捕食のスイッチを入れるための工夫をする一つの手段と考えれば、エサ取りの魚も歓迎の一つのプロセスと考えられなくもありません。

釣りを行なわれない方には中々ピンと来られないことかもしれません。しかし、これら釣りの極意において要求される事項一つひとつが、人間関係構築のプロセスにも大きく通じるところがあります。ただ、表現によっては人と魚を一緒にして考えるなど、失礼では?と捉われてしまうことになるかもしれないため、ここで細かい当てはめは行ないません。しかしながら、魚との駆け引きなどはビジネスの局面における商談プロセスに大きく通じることが実感できます。たまに自分自身が今、どういう心境なのか、原点を思い返すために釣りを行ないます。自分の今の心情を見つめなおすことが出来ます。釣果は確かに天候など諸条件に左右されることはありますが、今の心情がそのまま連動して釣果に現れることが多いからです。心が乱れていると、釣れないことによる焦りが出てしまいます。

趣味は趣を味わうと書きます。心に想う向きを味わうという意味にもなります。人の心情は機微で繊細です。その時々の心情をチェックするためにも、趣味は有効です。皆様にとって心の趣を味わうことのできる“趣味”は何でしょうか?今の心情をセルフチェックするためにも、皆様の持つ趣味をこのような観点で活用されてみては如何でしょうか。きっと新たな気づきを得られることと思われます。

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