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  1. 普遍的リスク対策 乙守栄一
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第38回目線による現代を生きるヒント

普遍的リスクマネジメント

乙守 栄一氏

目線というとどのようなことを思い浮かべられるでしょうか。一つのことに集中することが得意な“虫”の目線、その後、ある程度経験値が上がると“鳥”の目線が必要となります。大抵はここまでの想定は付くのですが、今のこの不確定要素の激しい時代を生き抜くためには“魚”の目線が必要になると言われています。いわゆる変化を読み、都度適切に対処していくということです。

趣味が釣りである私は、魚と竿、糸、針を通して間接的に会話します。今日は食い気がある状態なのか、食いが渋いのか、どういうエサが好みなのか、大きめのエサが良いのか等々、言い方を変えれば魚へのご機嫌伺いです。

時として、天候や気象条件により大きく魚も動きを変えます。台風により養殖網が破壊され、逃げ出したマダイが元居た養殖場の傍から離れず、何の警戒感もなく入れ食いになるケース、黒潮が大きく蛇行し、澄み潮という透明度の高く、プランクトンが少ない状態のため、魚が殆どいなくなっているケース、急激な寒波と大潮が重なることで、干満の差が大きく、海底まで一挙に水温が下がり魚の活性が弱まるケースなど、釣り一つとっても、ワンパターンが通用する世界ではありません。

魚も生命を維持するために命を懸けてエサを捕食するため、警戒感の強い魚は中々釣果も上がらないものです。

このような“魚”の目線、人にも当てはめると、どのようになるでしょうか。まずは国家間の政治レベルを見てみましょう。日本のこれまでの外交は、米国庇護のもと、欧米協調路線が基本線でした。しかし、アメリカは世界の警察を維持するほどの体力もなくなり、自国第一主義を掲げ、世界のガバナンスが取れなくなってきています。日本も他人事ではありません。日米和平の根底もいつ、なし崩しとなるかもしれません。米国一国に頼る時代ではなくなってきています。中国然り、ロシア然り、ある意味、一部分の内容でも協調路線を日本として、これらの国々と手を結ぶということは、アメリカに対しては重石になるはずです。日本の国家としての意思をはっきり世界に示し、世界の潮流を見極めた外交政策が必要となってくるわけです。

次にこれを企業どうしの活動に落とし込んでみましょう。三菱UFJ銀行と三井住友銀行の場合、これまで融資先の獲得を目指し、凌ぎを削る競合先どうしでした。しかし、維持コストのかかるATM統廃合の契機を受け、手数料をお互い無料にする二社共同利用型ATMの仕組みを導入する画期的なニュースを発表しました。また、阪急阪神ホールディングスはお互い阪神間を結ぶ電鉄どうしで、顧客のパイを奪い合う競合先でした。しかし、並行して走り、スピードで勝るJRと対抗すべく、共同戦線を張ることでお互いの電鉄の価値を新たな次元に引き上げました。

さらに会社対ヒトのレベルに落とし込んでみましょう。

会社とそこに働く従業員に置き換えると、従業員は会社から任された仕事をこなします。任された仕事内容に従業員はさほど興味が沸きません。しかし、安定した給与が保証されているため、“今は”仕事内容には我慢しています。

もう一段階落とし込み、人対ヒトの付き合いに置き換えてみましょう。AさんはBさんと趣味が共通で、よくゴルフに一緒に出かけていました。片や、共通の知人のCさんから、最近Aさんが“儲かる”ビジネスにはまり、人に進めているという情報が入りました。この情報を耳にしたとき、あなたがBさんであった場合、Aさんとのこれからの付き合いにどう変化が生じるでしょうか?

マクロからミクロの視点に落とし込んでいきましたが、外交レベルのやり取りは、ビジネスや個人レベルのやり取りにも十分当てはまります。潮流をみた、タイムリーな判断にマクロもミクロもありません。これが魚の目線です。しかし、個人レベルだと直接相手が見えるため、ここに感情が入り込んでしまって、魚の目線を忘れてしまうことが多々あります。その結果、チャンスやリスク対策といったタイミングを逃して、後悔の念を生じることが多いことも往々にして存在します。

国が文化なら、企業では社風、個人では性格に該当します。これらの意味合いを理解するとき、バリューとリスクの両方のバランスのとれた視点が人対ヒトの場合にも必要となってくることに少しでも気づいていただけるのではないでしょうか。

現代に当てはまる個人レベルでの普遍的リスク対策が、マクロな視点から学ぶことのできる“魚”の目線として大いに活用できることを実感いただけるとき、以前にも増して、何かしら前向きに生きることのできる目標が出来ているのかもしれません。

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