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広報の目
          
風間眞一広報リスクマネジメント
広報アドバイザー 風間 眞一  

第5回 緊急時の広報対応が事態収拾の鍵を握る

『フジサンケイ広報フォーラム』会報 No.322 2013年12月号 広報の目Vol.9 より転載

 企業不祥事が止まらない。今秋もメガバンクの暴力団組員融資や大手ホテルグループを発端に全国へ飛び火したメニュー偽装など、会見で頭を下げるトップや関係者の姿を見るのも日常茶飯の光景だ。
 
 無論、だれしもこんな場に出たくはない。コンプライアンスの徹底など不祥事を起こさないための体制強化に尽力する企業が多いのもうなずける。だが、どんなに気をつけていても危機に陥ることはある。大事なのは起きた後の対応だ。

  「人は起こしたことで非難されるのではなく、起こしたことにどう対応したかで非難される。」―危機管理の要諦として語られる教訓である。特に緊急時での広報対応が重要だ。事態収拾の鍵を握る。

 多くの場合、顧客や取引先などステークホルダーは企業の不祥事を新聞やテレビ等を通じて知る。メディア対応を間違えると予想外にネガティブな報道が流れ、企業イメージを大きく損なうことになりかねない。とりわけ危機発生時の初動で 失敗したら挽回するのは極めて難しい。

 6年前に相次いだ食品偽装のケースを 見ても、対応の拙さから不祥事による直接的なダメージを遥かに超える痛手を被り、廃業に追い込まれた事例は記憶に新しい。広報対応の巧拙が会社の命運を決しかねないのだ。“いざ”という時に遅れを取らないためにも、広報担当としては平時からシミュレーションを欠かせない。

 緊急時の広報対応で大切と思われるのは3点。第一に、“素早い対応”。事が起こったら、一刻も早く立ち上がり誠意を持って説明責任を果たす。第二は、“透明性”。マイナス情報は小出しにせず、二転三転しない統一感ある公表が肝要だ。第三に、“消費者目線”。世間がどこで納得するか、落とし処に消費者の目線は不可欠。不祥事発覚時の対応次第で、企業イメージが地に堕ちることもあれば、逆に信用回復に繋がる場合もあるのだ。 「会社の常識は世間の非常識」と言われる。企業が緊急時に判断を誤らないよう、広報は常に軸足の片方を社外に置き世間の視点で直言できる力を養いたい。

 



執筆者:風間 眞一(かざま しんいち)
 広報アドバイザー 1973年日本信販(現三菱UFJニコス)入社。 広報部長などを経て2009年退社。広報業務に18年携わる。07年 経済広報センター第23回企業広報功労・奨励賞受賞。