第11回 「記者との交流、目指したい“雲樹の友”」
No.334 2014年12月号 広報の目Vol.21より転載
年の瀬は何かと気ぜわしい。広報担当にとってもパブリシティ案件などの処理に加え、年末年始はメディア関係者とのコネクションの強化を図る上でまたとないチャンス。時間を効率的に使いたい。
無論、記者との付き合いはこの時期に限らない。常に意志疎通を円滑にして良好な関係づくりに尽力するのは当たり前。とはいえ、忘年会/新年会シーズンは記者との距離感を縮めるのに好機なのだ。
お世話になった記者はもとより、ふだん疎遠な記者とよりを戻すきっかけに所謂“酒の席”は効果的。下戸なら昼の席で構わない。雑談でもいい、会社や自分のことを知ってもらうのが肝要だ。裃を脱いでの交流が次へのステップになる。
言うまでもなく、広報は社会との架け橋。メディアを活用し様々な情報の受発信を担う。一方、記者は広報を通じて企業の文化・風土、かおり、体質に触れる。活字だけでは分からない、活字のすき間を埋める作業に広報は欠かせない。広報が“会社を映す鏡”と言われる所以だ。
手心を加えることはないが記者も人の子、記事を書く段階で広報の顔が浮かぶか否かで微妙に違うという。特に不祥事では広報の位置づけが曖昧だと企業の真意が伝わらなかったりする。“いざ”という時に墓穴を掘らないためにも広報は日頃記者との接点を築く努力が不可欠。
情報を介して記者と向き合う広報、一目置かれる存在を目指すならニュース素材に留まらず幅広い話題や識見にも富んでいたい。年末となれば、一年を振り返っての時事問題、業界や自社の総括など自分なりの見解を纏めておくのも大切だ。
それはそうと、先日、大手通信社の役員に伺った『雲樹(うんじゅ)の友』の話。樹木は動けないし、雲は風まかせ。時に両者は交わるがやがて雲は風に流されて行ってしまう。だが風向き次第で再び出会うことも。離ればなれの友が相互に思うさまを杜甫が李白に詠んだそうだ。
最初は打算で始まる広報と記者の関係。 “雲樹”のごとく、互いが自然体で付き合える域にいつか達したいものだ。
執筆者:風間 眞一(かざま しんいち)
広報アドバイザー 1973年日本信販(現三菱UFJニコス)入社。
広報部長などを経て2009年退社。広報業務に18年携わる。07年
経済広報センター第23回企業広報功労・奨励賞受賞。
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