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広報の目
          
風間眞一広報リスクマネジメント
広報アドバイザー 風間 眞一  

第17回 「危機発生、難しい広報と秘書の兼務

 昨年も企業不祥事が相次いだ。それも各業界を代表するようなビッグネームが目白押し。コンプライアンス経営の徹底が叫ばれて久しいが、単なるお題目に過ぎなかったのかと勘ぐりたくもなる。 中には経営トップの暴走を許し、未曽有の危機に陥った例も。社外取締役や監査役制度の拡充など経営層をチェックする仕組みが強化されたにも関わらず、一体どこで歯車が狂ってしまったのか。


 そんな中、企業広報の関係者との出会いで近頃いささか気になることがある。もらった名刺の肩書が「秘書部長兼広報部長」といったようなケースを時折見かけるからだ。平時では問題なくとも緊急時に両立するの?と首を傾げてしまう。

 もとより、日頃社長がメディアを通じて積極的に発信するのは大切。トップインタビューのセッティングも社長の多忙なスケジュールを縫って調整するのは秘書役兼ねる広報部長ならお手の物だ。 だが、企業も晴れの日ばかりでない。どんなに気を付けていても、事件・事故、不祥事に巻き込まれることはある。こんな時、危機管理広報の善し悪しが企業の命運を左右するのは間違いないところ。

 組織やブランドを守るためにはいかに迅速に責任ある対応を示すかが鍵を握る。 当然広報部長はマスコミ取材の矢面に立ち、“会社を守る”。一方、社長の補佐役たる秘書部長は職制上“社長を守る”側に。これが兼務では社長の意向次第で苦しい立場に追い込まれかねない。 とりわけ、謝罪会見となると途端に出席を渋る社長も。誰しも出たくはないが、トップが先頭に立ちスポークスマンとなるのは事態の早期収拾にとって不可欠。


 広報部長としてはメディアから要求される前に開きたいところだが、秘書部長としては社長が消極的だと中々強く言えない。社長の顔色を窺っている暇はないはずだが、会見開催を巡って時に“股裂き状態”となってしまう局面ともなる。 事が起きてからでは遅い。緊急時に社内の混乱を助長しかねないような組織・体制は作らないに越したことはない。  



執筆者:風間 眞一(かざま しんいち)
 広報アドバイザー 1973年日本信販(現三菱UFJニコス)入社。 広報部長などを経て2009年退社。広報業務に18年携わる。07年 経済広報センター第23回企業広報功労・奨励賞受賞。