第12回 「ネーミングが大事、活かしたい広報の感性」
No.336 2015年2月号 広報の目Vol.23より転載
3月14日、北陸新幹線が長野―金沢間で延伸開業する。東京から金沢までが最速2時間28分で結ばれ、これまでと比較して約1時間20分も短縮される。
ビジネス客や観光客の増加を当て込んだホテルの新設・改装が進むなど地元の期待も膨らむ。政府が最重要テーマに掲げる“地方創生”とも相まって北陸活性化の切り札になるのは間違いない。
そんな中、諸手をあげて喜べないのが新潟県。速達型列車「かがやき」が県内の上越妙高駅と糸魚川駅を通過してしまうからだ。各駅停車型の「はくたか」は停まっても旅行客が増えない懸念がある。
無論、県や沿線市は早くからJRに速達型の「各県1駅停車」を要請。巨額の建設負担金も拠出した。だが、JRは航空機との競合を見据え、金沢、富山と首都圏の所要時間短縮を優先したいのが偽らざるところ。新幹線を誘客拡大につなげたい地元の願いは空しくも砕かれた。
ところで、新潟県にはもう一本上越新幹線が走っている。今回の新駅にも“上越”が登場するが何とも紛らわしい。上越新幹線は群馬・新潟両県の旧国名「上州・越後」に由来、隣接市名を重ねた上越妙高駅は「上越後(かみえちご)」の意。土地勘がないと、なかなか分かりにくい。
ネーミングと言えば近年、地方空港の愛称が面白い。郷土の英雄や漫画の主人公、伝統芸能などを織り交ぜたものが目立つ。高知龍馬空港に米子鬼太郎空港、徳島阿波おどり空港…。いずれも空港の利用客増や地域おこしに結びつけたいとする熱き思いがひしひしと伝わって来る。
鉄道でも、岡山県美作市に智頭急行の“宮本武蔵駅”がある。上越妙高駅にも戦国武将に因み“越後上杉謙信駅”の愛称があってもいいのではないか。郷土の誇り、集客的にも話題性十分と思えるが。
いずれにせよ、企業の事業展開でネーミングは大事。商品・サービスの中身の良さはもちろんだが、対外発信で目を引く名前があると効果的。メディアを通じて社会と接点を持つ広報、ネーミングにも広報の感性が活かされて欲しいものだ。
執筆者:風間 眞一(かざま しんいち)
広報アドバイザー 1973年日本信販(現三菱UFJニコス)入社。
広報部長などを経て2009年退社。広報業務に18年携わる。07年
経済広報センター第23回企業広報功労・奨励賞受賞。
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