『フジサンケイ広報フォーラム』会報
No.330 2014年 8月号 広報の目Vol.17より転載
「それを言っちゃあおしまいよ」。原発事故の除染に伴う中間貯蔵施設建設をめぐる環境相の「最後は金目でしょ」発言や東京都議会での女性議員に対するセクハラやじなど、おごりなのか、気のゆるみか、政治家の失言・暴言が絶えない。
□公人なら発言に責任を持つのは当たり前だが、何も政治家に限った話ではない。つい口が滑り物議を醸した企業トップの例も多い。平静なら起こりえないこともパニック状態では気が動転してともすれば不規則発言につながる危うさがある。
□例えば、社長の「私は寝ていないんだ」発言が記者の琴線に触れた2000年6月の雪印食中毒事件。緊急会見を切り上げエレベータに乗り込む際、追加質問を求める記者に放った一言が指弾を浴び、その時の映像が幾度となく茶の間に流れた。
□会見が終わってからの“ぶら下がり取材”は付き物。トップが冷静さを失っては元も子もない。わざと怒らせて本音を引き出そうとする策にはまりかねない。発言内容もさることながら、会見後のトップ退出路の重要性も浮彫りになった。
□緊急時、メディア対応の原則は“逃げない、隠さない、ウソをつかない”。言い逃れやごまかしは許されない。トップが失言しないためにも、予め「言えること」「言うべきこと」「言ってはいけないこと」のトップとのすり合わせが肝要だ。
□トップに言わせてはならない“6つの禁句”にも気をつけたい。①「私は知らなかった」。無責任も甚だしい。②「法的に問題ない」。倫理観や道義的責任が問われるだけ。③「みんながやっている」。問題のすり替え。④「たいしたことではない」。同じミスや不祥事が繰り返されるのみ。⑤「実害はないはずだ」。企業姿勢が問われることに。⑥「我々も被害者だ」。事の重大性が分かっていない。
いずれにせよ、情報コーディネイターたる広報としては、トップが慌てたり失言したりしないよう会見・取材前の入念な準備は必須。加えて、トップに記者の性質や記者への接し方などを日頃から繰り返し伝える地道な努力が欠かせない。
執筆者:風間 眞一(かざま しんいち)
広報アドバイザー 1973年日本信販(現三菱UFJニコス)入社。
広報部長などを経て2009年退社。広報業務に18年携わる。07年
経済広報センター第23回企業広報功労・奨励賞受賞。
|