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広報の目
          
風間眞一広報リスクマネジメント
広報アドバイザー 風間 眞一  

第16回 「他人事ではない、組織に潜む危機の要因

 外部への内部通報で明るみになった東芝の不正会計問題。8月末に延期していた2015年3月期の決算発表が再延期され、9月7日漸く発表に。名門企業による会計不祥事、信頼回復は前途多難だ。 会計処理の実態を調べた第三者委員会は「経営トップらを含めた組織的な関与があり、意図的に『見かけ上の利益の嵩上げ』をする目的の下で行われた」と指摘。

 わが国を代表する企業の利益操作に海外投資家の目も厳しく、日本企業全体のガバナンスが問われかねない状況に。 東芝の関係者によると、歴代3社長は主要部門の幹部らに「何で予算を達成できないんだ」「利益を早く上げろ」など直接圧力をかける行為を繰り返していたという。

 過大な目標達成の強要は「チャレンジ」と呼ばれ常態化。この「当期利益至上主義」が違法行為を誘い、東芝“最大の危機”に繋がったのは間違いない。 もっとも、こうした精神論は他社でも十分ありうる。“何がなんでも目標必達”“この数字を達成すれば昇進できる”など無理が祟って事故を誘発しかねない。『行き過ぎた実績第一主義』は東芝に限らず組織に潜むクライシスの要因だ。


 東芝社内にはびこっていたとされる『上司の意向に逆らえない企業風土』も見過ごせない。誤りがあっても“それはおかしい”と言える職場かどうか、日頃からの環境づくりが肝要になる。合わせて、忘れてならないのが『成功体験や先例・慣行への過信』。“今回も大丈夫”はもはや通用しないと考えた方が良い。 『注意力散漫、危機意識の欠如』にも気を付けたい。“たいしたことにはならない”が危機を招く要因にも。さらに、『組織内のうそや欺瞞、隠蔽体質』。“どうせ分からないだろう”はいつか必ずバレる。『前兆への組織的感性の欠如、感度の鈍さ』も運命の分かれ道。“ちょっと変だな”と思うか否かが明暗を分ける。


 ともあれ、東芝の例は他山の石。危機管理広報を担う広報担当としては、これを機に自らの企業・組織に置き換え社内を再チェックするに越したことはない。

 



執筆者:風間 眞一(かざま しんいち)
 広報アドバイザー 1973年日本信販(現三菱UFJニコス)入社。 広報部長などを経て2009年退社。広報業務に18年携わる。07年 経済広報センター第23回企業広報功労・奨励賞受賞。