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平川 博  

第8回 「プロ意識の欠如

1.自動車運転代行業者の飲酒運転事故

(1)「自動車運転代行業適正化法」制定の経緯
 自動車で通勤や営業をしている人は、急に飲み会や酒宴に誘われて、断れずに参加し、帰宅のために自動車運転代行業を利用する機会があるでしょう。この業務の適正な運営を確保し、もって交通の安全及び利用者の保護を図ることを目的として、平成13年に「自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律」(略称「自動車運転代行業適正化法」)が制定されています。同法が制定された経緯について、国土交通省の「自動車運転代行業の概要」と題するウェブページでは、「1.自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律の制定」という見出しの下に、以下のように記載されています。 **********************************************************************
(1)自動車運転代行業は、飲酒した客に代わって客の自動車を運転し、客とその自動車を自宅まで送り届けるサービスであり、昭和50年ころから、主に公共交通機関が十分に発達しておらず、自家用自動車が移動手段として不可欠である地方都市を中心に発達してきた事業であり、飲酒運転等の防止に一定の役割を果たしていました。
(2)しかしながら、自動車運転代行業においては、法律による規制がなかったこともあり、業者が運転者に対し、最高速度違反の運転を下命・容認するなど、その業態として業者が責任を問われるべき実態があるほか、交通死亡事故の発生率も高い水準で推移していました。また、主に夜間の繁華街における酔客を対象に行われる業態であることから、業者による白タク行為、料金の不正収受、損害賠償保険の未加入、暴力団関係業者による被害等の問題も指摘されていました。
(3)こうした問題が指摘されていることを受けて、平成12年5月に成立した道路運送法及びタクシー業務適正化臨時措置法の一部を改正する法律の附帯決議において、自動車運転代行業に対する法規制の必要性が盛り込まれました。
(4)こうした状況を踏まえ、自動車運転代行業の適正な運営を確保し、交通の安全及び利用者の保護を図ることを目的として、「自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律案」を、警察庁と共同で平成13年の通常国会に提出し、衆参両院の内閣委員会における法案審議を経て、平成13年6月13日に可決・成立し、6月20日に公布され、平成14年6月1日から施行されました。(別紙【引用者註:省略】)
(5)この法律が施行されたことをもって、自動車運転代行業を営もうとする者は、所定の事由に該当しないことについて都道府県公安委員会の認定を受けなければ営業できないこととなりました。 ********************************************************************* (http://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk3_000006.html)

(2)飲酒運転事故事例
①日本国内 毎日新聞(2013年12月7日21:15配信)では、「代行運転:仕事中に事故 酒気帯び運転が発覚」という見出しの下に、以下のように報じられています。

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 代行運転業務で使用する軽乗用車を酒を飲んで運転したとして、大分県警宇佐署は、同県宇佐市安心院町新原、運転代行会社アルバイト従業員、賀来和利容疑者(66)を道交法違反(酒気帯び運転)容疑で現行犯逮捕した。
 逮捕は6日で、容疑は同日午後8時10分ごろ、同市石田の市道で、酒気帯び状態で代行運転業務の軽乗用車を運転したとしている。同署によると、呼気1リットル当たり0.25ミリグラムのアルコールが検出されており、容疑を認めているという。 調べでは、賀来容疑者は交差点で20代女性が運転する軽乗用車と衝突事故を起こし、その場で飲酒運転が発覚した。賀来容疑者は当時は就業中だったが、客は乗せていなかった。賀来容疑者の車に乗っていた同僚の70代男性からはアルコールは検知されなかった。 **********************************************************************

 正にプロ意識の欠如としか言いようがありませんが、自動車運転代行業は、酒気を帯びた状態にある者(酔客)に代わって自動車を運転する役務を提供する営業であり、この事件を起こした運転手は、酒気帯び状態で軽乗用車を運転していたのですから、自らが「酔客」となって利用者になれば良かった筈です。
 しかも、同乗していた同僚の70代男性からはアルコールは検知されなかったとのことですが、それならば、なぜ同乗していた同僚が酒気帯び運転を制止し、自ら運転しなかったのか不可解に思われます。 ②韓国内 韓国でも同様の事故が起きており、中央日報(日本語版2011年02月21日16時27分配信)では、「事故が起きて発覚『代行運転手が飲酒運転』」という見出しの下に、以下のように報じられています。

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 16日、会社員L(34)は退勤後、ソウル奨忠(チャンチュン)体育館近くで友人と一緒に酒を飲んだ。午後9時ごろ、Lは帰宅のために運転代行のH(33)を呼んだ。10分後、Hが到着し、家へ向かう間、Lは自分の「ソナタ」の後ろ座席に座って休んでいた。
 午後9時25分ごろ、鍾路区(チョンログ)鍾路5街を過ぎたところで、横の車線の乗用車が突然割り込んできて接触事故が発生した。出動した警察は被害者調査のためHと話をしたところ、Hが酒を飲んでいたことを確認した。 警察はHを警察署に連行して飲酒測定をしたところ、血中アルコール濃度は0.106%と、免許取消に相当する数値だった。
 警察の調査でHは「午後5時ごろ友人と一緒に焼酎2本を飲んだ後、Lの電話を受け、営業のために家を出た」と話した。…(中略)…Lは「飲酒運転をしないためにわざわざ運転代行を呼んだが、代行運転手が酒を飲んでいたとは知らなかった」と話した。 **********************************************************************

  この事故を起こした代行運転手は、Lからかかって来た電話を受けた時点で、飲酒を理由に断るべきであったのに、引き受けて事故を起こしたのは、「飲酒運転をしないためにわざわざ運転代行を呼んだ」Lの気持を踏みにじるもので、言語道断です。

2.相次ぐ士業の不祥事

(1)最近の事例
①弁護士
 本年5月26日に横浜の弁護士が依頼人から預かった約1450万円を着服したとして、また翌月9日には大阪の弁護士が依頼先の建設会社からの預かり金約2億5000万円を着服したとして、いずれも業務上横領罪の容疑で逮捕されました。 このように容疑者(法律用語としては被疑者)を弁護することを本業としている弁護士が、弁護を依頼する側に回るようでは、信用失墜も甚だしいと思われます。
➁公認会計士
 金融庁の平成27年5月8日付け報道発表によれば、東京都の公認会計士が税理士業務に係る名義貸し(自己の名義を他人に使用させること)の事実が公認会計士法に違反すると認められたことから、業務停止1月の懲戒処分を受けました。(http://www.fsa.go.jp/news/26/sonota/20150508-1.html参照)
③税理士
 国税庁の「税理士に対する懲戒処分等」と題するウェブページによれば、茨城県日立市の税理士が、税理士法第46条の規定に基づき、平成27年1月23日から税理士業務の禁止の処分を受けたことが平成27年1月30日に発行された官報に掲載されました。 (https://www.nta.go.jp/sonota/zeirishi/zeirishiseido/shobun/list.htm参照) しかも同税理士は、2010年8月28日に発行された地元紙で、酒気帯び運転の疑いで現行犯逮捕されたことが報じられています。
④司法書士
 昨年10月、元岡山県司法書士会副会長が、岡山県内に住む男性の現金約620万円を着服したとして、業務上横領容疑などで逮捕されました。翌月、同じ男性の口座から引き出した現金を自分の銀行口座に送金するなどして着服した疑いで、再逮捕されました。
⑤行政書士
 東京都の行政書士が、平成24年3月から昨年12月にかけて、司法書士の資格がないのに中国人7人の依頼で会社登記を申請したとして、司法書士法違反の疑いで、本年2月16日に逮捕されました。この事件の背景には、行政書士は登記申請書を作成する権限が無いのに、依頼者本人が登記申請を行う場合は、行政書士が登記申請書を作成することができると勘違いしている業際問題があるようです。
⑥弁理士
 経済産業省の「弁理士法に基づく懲戒処分を行いました」と題するウェブページによれば、東京都の弁理士が、 「登録料未納による出願却下や成功報酬を受領しながら案件を放置するなどの行為は、依頼者に対して重大な不利益をもたらすなど悪質であり、弁理士の信用及び品位を著しく害したといわざるを得ません。加えて、横領の違法性は看過できません。 また、弁理士の基本的な義務である連絡手段を確保せずに、一方的に連絡を絶った行為は、弁理士としての職務を完全に放棄した、看過しがたい重大な義務違反です」 ということを理由として、本年2月4日に「弁理士法第32条第3号の規定に基づく懲戒処分として、最も重い業務の禁止処分」を受け、弁理士資格を喪失することとなりました。(http://www.meti.go.jp/press/2014/02/20150210004/20150210004.html)
⑦社会保険労務士
 厚生労働省の「社会保険労務士懲戒処分公告」と題するウェブページによれば、大阪府の社会保険労務士が、 「(1)被処分者は、株式会社A及び株式会社Bに係る労働保険概算・確定保険料申告手続を行うに当たって、不正に労働保険料の賦課又は徴収を免れることを目的として、事業主等に対して事実に反した賃金台帳の作成を指示した上、この賃金総額に基づき、故意に、当該事業場に係る事実に反した『労働保険概算・確定保険料申告書』を作成し、大阪労働局歳入徴収官(大阪労働局長)に提出したものである。 (2)被処分者は、株式会社A及び株式会社Bに係る定時決定のための手続を行うに当たって、不正に健康保険料及び厚生年金保険料等の賦課又は徴収を免れることを目的として、事業主等の相談に応じ、故意に、従業員に係る『健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届』を事実に反した報酬月額に基づき作成し、日本年金機構大阪事務センターに提出したものである」 ということを理由として、本年2月9日に失格処分を受けました。 (http://www.shakaihokenroumushi.jp/general-person/known-profit/pdf/index09/s_150209.pdf)
⑧土地家屋調査士
 日本土地家屋調査士連合会の「懲戒処分情報の公開」と題するウェブページによれば、大阪府の土地家屋調査士が、「道路区域・市有地境界明示申請に添付する対側地の所有者名義の承諾書を、自ら故意に偽造」したことを理由に、本年3月27日に、6か月間の業務停止処分を受けました。

(2)士業の名折れ
 上記事例はいずれも、国家資格の中で特に法令遵守を実践・推進することが求められる弁護士や司法書士、公認会計士等の有資格者が行った違法行為であり、せめて「反面教師」として役立てて、同類・同種の事件が起きないことを期待したいものです。
 ところで、産業分類上、法務に関する事務や助言、相談、その他の法律的サービス、財務及び会計に関する監査、調査、相談のサービス、税務に関する書類の作成、相談のサービス及び他に分類されない自由業的、専門的なサービスを提供する事業所は、「大分類L-学術研究、専門・技術サービス業」「中分類72-専門サービス業(他に分類されないもの)」に振り分けられています。
 この専門サービス業に属する弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、行政書士、弁理士、社会保険労務士、及び土地家屋調査士の8士業は、法律により、資格者団体に入会しなければ当該資格者の業務を行うことができない強制入会制が採られています。これは資格試験に合格して業務遂行能力があるとしても、厳格な法的規律に服することを担保するための制度です。
 それにも拘わらず、上記のように職業倫理に反する行為が相次いで起きているのは遺憾千万であり、士業の名折れとして追放したい位です。

3.プロらしからぬ行為

(1)トラック運送業界
 「物流ウィークリー」という物流・運送・ロジスティクス業界専門紙の「『負の連鎖』解消を プロらしからぬ行為が発端」と題する2012年7月12日付記事では、以下のように記載されています。

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 重大事故が発生し、調査段階であぶり出された違法行為によって深刻な行政処分が待ち受ける一方、それが発端となって一段と厳罰化された新しいルールが、ただでさえ守れていない現行規制にのしかかるという「負の連鎖」状態にあるのが、トラック運送事業の実態かもしれない。  
 企業規模とは無関係に覆い被せられた網の目は小さくなるばかりで、小規模・零細事業者が大半の業界に漂う閉塞感は強まるばかり。ただ、行政処分を受けた運送会社やドライバーに話を聞くと、基本的なルールを無視したプロらしからぬ行為が発端になっているケースも意外に少なくない。…(中略)…
 「事故を起こしたわけではなかったが、結果として100日に近い車両停止の処分を受けるハメになった」と運送会社の経営者。国道を走行中、追跡してきた白バイに検挙されたドライバーの不心得な行為は、「運転中の携帯電話の使用だった」という。経営者の話では、「ドライバーは『どこから出てきたのか、ミラーで気付いたときにはパトライトを回している白バイが見えた』としており、その時点では、なぜ停止を求められたのかもわからなかったらしい」と話す。
 しかし、事態は予想外の方向へ展開。「そんな権利があるのかと思うが、ドライバーからは『デジタコのデータを抜き取られた』と聞いた。遠く離れた地域の車両ナンバーだったことで過労運転を疑われたと思っている」と話すが、しばらくして監査が入った結果、同社は長期の車両停止処分を受けることになってしまった。
 こうした経緯で現実に行政処分にまで至るケースは珍しいが、高速SAや道の駅などで休憩中のドライバーに話を聞くと「よく聞く話」「本拠地へ戻らずに『出稼ぎ』をしている他県ナンバーのトラックに多いらしい」「シートベルトも同じで、白バイに止められたトラックのドライバーが酒気帯びで検挙されたという話もある」との声。
 ほかにも「歩行者妨害で捕まったドライバーが、フロントガラスや助手席の足元にある安全確認窓にウロコ状の目隠しシールを張っていたことで整備不良とされ、勤務する運送会社に監査が入ったと聞いた」と、基本ルールを無視した軽率な行為が厳しい行政処分の呼び水になっている状況も。
 一方、中央線のない町道をノロノロと走行していた高齢者が運転する軽自動車を追い越そうとした大型トラックが、抜き去る際に軽自動車のミラーに接触。「軽く当たっただけで傷もなかったが、向こうは警察を呼ぶとの一点張りだったらしい」と、当時の状況を知るドライバー仲間。事故自体は大きなトラブルにならなかったが、「ちょっと免許に問題があって...」と、運輸当局の監査が入って極めて重大な行政処分を受けている。
 全国を駆け回るドライバーの情報には「高速道路では、エリアによって違いがあるものの『車間距離の不保持』や『速度リミッターが付いていない4トン車のスピード取り締まり』を強化している気がする」というのもある。慣れからくる基本ルールの見落としでは済まされないのがプロであり、ちょっとした意識の徹底で「負の連鎖」は食い止められるはずだ。
********************************************************************** (http://www.weekly-net.co.jp/logistics/post-7502.php)

(2)ガス爆発事故
 本年5月29日に福岡市の天神中央公園で開催された「A級グルメ大食覧会」の会場で、ガス会社の作業員2人がボンベの交換中にガスが漏れて引火し、この2人と近くにいた出店の従業員ら7人が軽傷を受けました。ボンベ交換に必要な資格はありませんが、ガス会社の作業員はプロとして従事するのですから、使用者は作業員が未熟であれば研修や実習を通じて社員教育を受けさせ、ベテランであっても安全確認のための作業手順を遵守するように監督することが必要です。ましてイベント会場のように、不特定多数の人が集まる場所では、通常よりも高度の安全配慮義務を尽くすことが望まれます。
(3)感電死亡事故
 四国電気本協会のホームページに掲載されている「電気事故に学ぼう」シリーズ17「活線作業中に発生したベテラン作業員の低圧関電死亡事故」と題するウェブページでは、以下のように記載されています。

**********************************************************************
∎事故発生前の概要
 当該事業場は、受電電力2,000kW超、発電電力1,000kW超、受電電圧6.6kVの染色工場である。
 当該工場では、染色機(3相、220V)の制御用インバータが不調であるため、新しい制御用インバータに取り替えを計画していた。
 電気主任技術者(選任)は制御用インバータの取り替え工事を出入りの電気工事業者に依頼することとし、工事依頼時に電気工事請負作業員(被災者、40代、作業経験年数22年)に対し、「当該電気工作物に係る動力盤NFB(No Fuse Breaker)を開放し、停電にて当該工事を実施」するよう口頭指示をしていた。…(中略)…
∎事故に至った経緯
 事故当日(7月)10時30分頃より、被災者は1名にて制御用インバータ(図-1【引用者註:省略】)の取り替え工事に着手した。
 ここで、工事依頼時に電気主任技術者から停電での作業を指示されていたにもかかわらず、当該動力盤NFBを開放せず活線状態で作業を開始し…(中略)…12時30分頃、離れた場所で仕事中の工事従業員が異常音に気付き、振り返ると被災者が脚立上で倒れそうになっており、助けに行こうとしたが間に合わず、約3mの脚立上から落下した。…(中略)…すぐに救急車で病院へ搬送されたが、残念ながら14時過ぎに死亡した。死亡原因は感電であり、低圧(220V)の感電であるため、感電部位の特定はできなかった。…(中略)…
∎類似事故を起こさせないために
 被災者は工事経験22年のベテランであるにもかかわらず、低圧ではあるが活線状態で作業をするのに、充電部分に防具の装着が採られなかった。これは作業の慣れ等により、特に低圧充電部に対する安全意識の低下があったものと推測される。日々の作業の慣れによる安全意識の低下は非常に怖いものであり、必ず事故を誘発する。…(中略)…
 従って、電気事故発生を防止するために、作業者自身はもちろんその監視にあたる者も作業時における安全意識のさらなる高揚を図り、安全管理に充分留意し、「作業内容は安全か?」「作業手順は正しいか?」「防具・保護具の装着は充分か?」を常に問いかけながら電気工事業務に携わっていただきたい。 ********************************************************************** (http://www.sdh.or.jp/article/196/p04.html)

4.サラリーマン化現象

 嘗て医師や教師は「聖職者」と呼ばれていましたが、今や「職業に貴賤なし」という意識が社会全般に浸透していることが大きく影響して、勤務医や教職員のサラリーマン化という現象が起きています。特に児童や生徒の模範となるべき教員が淫行の容疑で逮捕される事件が相次いで報道されており、「反面教師」や「性職者」という不名誉な仇名が付けられています。また患者の生命を救うべき病院でも、医療過誤により死亡する事件が続発しています。
 サラリーマン化現象は、公務員にも浸透しており、犯罪を取り締まるべき警察官が殺人や飲酒運転を犯したり、消防団員が放火魔であったりすることも珍しくありません。
 医師や教師、公務員が、非番の時は「ただの人間」としてリラックスしたいという気分になるのは致し方ないとしても(決して許されることではありませんが)、職務中に魔が差して不祥事を起こすのは言語道断です。

5.結語

 どんな仕事でも、職業として行う以上は、安全性と品質を確保し、顧客の期待に応えなければなりません。それがプロ意識であり、欠いていればプロとして失格です。
 プロ意識の欠如は、様々な事件や事故の要因となり、企業にとって著しいイメージダウンとなります。従って、企業リスクのマネジメントという観点から、従業員に「プロ意識の自覚」を促すことが肝要です。
 更に「プロ意識の欠如」が蔓延すると、社会全体にプロに対する信頼感が失われることになり、産業リスクとなります。一例を挙げれば、平成19年のことですが、不二家の消費・賞味期限切れ商品出荷と消費期限の日付改ざんを発端として、ミートホープの牛肉偽装、石屋製菓の「白い恋人」賞味期限改ざん、赤福の製造日改ざん、比内鶏の原料偽装、船場吉兆の期限改ざんや使い回し等が、次々と判明しました。
 言うまでもなく、食品は消費者の生命や健康に直結するものですから、他の商品よりも安全性が重視されて然るべきところ、不祥事を起こした各企業の経営者や従業員には、そのような意識はなく、消費者の安全よりも経済的利益を優先させたことが窺われます。それが1社だけでなく、何社も同様のことをしていたことは、食品業界のモラルの低さを物語っています。
 このように、企業不祥事が業界全般に蔓延して産業リスクとならないよう、産官学が連携して、不祥事の連鎖を断ち切ることを提言します。



【筆者:平川 博プロフィール】

昭和52年 中央大学法学部卒業
平成15年~19年 医薬品企業法務研究会の知財部会長
平成16年~19年 ヒューマンサイエンス振興財団の研修委員
平成17年~19年 製薬協の知財部会委員
平成19年 日本チバガイギー㈱退職、社労士開業
平成19年~23年 千葉県年金記録確認第三者委員会専門調査員として総務省で勤務
平成19年~現在 ヒューマンサイエンス振興財団の個人会員
平成22年~現在 行政書士登録、社労士と兼業で産業法務相談室開設
平成25年~現在 日本賠償科学会の会員 平成26年~現在 
NPO法人童謡文化を広める会の会員
平成26年~現在 一般社団法人産業法務研究会(産法研)の専務理事
平成26年~現在 特定非営利活動法人日本リスクマネジャー&コンサルタント協会の会員

【一般社団法人産業法務研究会(産法研)の概要】
1.設立の目的
①産業法務という概念の普及
②産業界が一丸となって法令遵守に取り組むこと
③産官学の連携 を推進することにより、産業社会の発展に寄与すること
2.主たる事務所 東京都豊島区池袋三丁目1番11号
【建物の名称】セレクトガーデン池袋.
【最寄りの駅】要町(地下鉄有楽町線)出口5番(祥雲寺方面)から徒歩1分
3.事業
(1)産業法務の研究を目的とする会合(以下「研究会」という)の開催
(2)産業法務関連の出版・頒布事業
①書籍(電子書籍を含む)の出版
②定期刊行物の発行
③ビデオ・DVD・映画の製作・頒布
(3)産業法務関連のセミナー開催
(4)産業法務関連の講演会開催
(5)日本産業法学会の設立
(6)産業法務関連の行事(シンポジウムやフェスティバル等)の催行