序文
鉄道は汽車から電車に代わっており、住宅もオール電化が普及し、自動車の動力もガソリンから電気へ移行しかけています。このように、現代社会は電気に依存する度合いが著しく高まっており、電気の供給が止まると、忽ち混乱が起きます。落雷や台風、豪雪、地震等の自然災害とか、発電所や変電所等の電力設備の故障や火災とか、様々な原因で停電が起きています。最近は病院やホテル、学校、地下街等で、非常用の自家発電装置を備えるようになっていますが、所詮は一時しのぎに過ぎません。
自然災害による停電は不可抗力として甘受せざるを得ないとしても、電力設備の老朽化による故障や火災による停電は、適切な保守・点検を行うことにより極力回避することが可能な筈であり、それを怠る電力会社の責任は重大です。社会生活の基盤(インフラ)として電力の重要性が益々高まっているだけに、老朽化対策に真剣に取り組んで頂きたいものです。
1.発電設備
(1)水力発電
①水力発電所の老朽化
新エネルギー財団の新エネルギー産業会議が平成22年3月に作成した「低炭素社会に向けた水力発電のあり方に関する報告書」の「3.現状情勢を踏まえた上の水力発電の重要性」では、「3.5 電力の安定供給と経済性維持における既設水力発電所の重要性」という見出しの下に、以下のように記載されています。
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わが国における一般水力開発は、第二次世界大戦後の急速に増大する電力需要に対応するため、昭和30年代に大規模貯水池式発電所を中心に年間70万kWの規模で開発されたが、昭和40年代に入り大規模貯水池式の適地が少なくなってきたこと、低廉且つ豊富な石油を利用する火力発電所の建設が主流になってきたこと等に伴い、次第に停滞していった。しかし、この時期に開発された水力発電は日本の経済発展を支え、役割を変化させながら現在に至っているが、この既設水力発電所の約 5 割にあたる約 900 の発電所が運転開始後60年以上を経過しており、2030年には約1,500の発電所が該当することになることから、老朽化への対処が必要である。
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(http://www.nef.or.jp/introduction/teigen/pdf/te_h21_06.pdf[原書7頁])
②ダムの老朽化
八千代エンジニヤリング㈱の「ダム総合管理・運営の提案」と題するパンフレットでは、「ダム・施設管理に係わる現状と課題」として、以下の4項目が挙げられています。
①既設ダム・既存施設(ハード・ソフト)の老朽化
②将来的な維持・管理負担の増大
③安定した維持・管理費用の確保、効率的な運用
④ダム及び施設を熟知した経験豊富な技術者の減少
(https://www.yachiyo-eng.co.jp/aboutus/pdflist/g403-03_v2010.pdf:千代エンジニヤリング㈱〉会社案内〉パンフレット一覧(河川・水工グループ技術パンフレット)
またダムは、上流から流れて来る土砂が堆積して貯水機能が低下する上に、放流によって大量の土砂が下流に流されて堆積するために環境破壊を起こす問題点を抱えています。
(2)火力発電
①火力発電所のトラブル
昨年1年間にマスコミで報じられ、又はホームページで公開された火力発電所のトラブルを整理して一覧表にすると、以下のようになります。 |