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  1. 普遍的リスク対策 乙守栄一
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第72回 煩悩から解放されるには

一日に人間は6万回とも7万回とも思考すると言われています。そのうち、8割はネガティブなことを思考しているそうです。仏教において修行を求める僧は、他の僧と日常生活を共にし、共にする僧すべてから教えを乞う対象としていると聞きます。幾ら修行をしても次から次に煩悩は浮かんでくると言います。煩悩への捉われから解放されるべく、無の境地を得るための日頃の訓練が座禅であり、日々の清掃や食事を作る生活活動そのものと言われています。何の変哲もない単純な作業こそ、無(空)になることのできる修行にもなるそうです。

普通に生活するうえで、世間とのかかわりが多いと価値観の異なる人とも否応がなく接することを余儀なくされます。サラリーマンや学校等、共同生活を一定時間担うような場合は顕著です。どうしても自分を抑え、自分でない他人の意見を知らぬ間に取り込んでしまい、それが当たり前のような生活に何かしら不自由なく過ごしてしまっている日常。しかし、個人の素の性格は正直なもので、それが自分の真意でないと、身体のあちこちに諸症状が出てきます。時として鬱状態など身体の不調、出社拒否、組織に合わないことによる退職・転職など、メンタル面、健康面から自分探しの旅を堂々巡りするなど、様々な状態が現れます。

ここに出てくる正体がエゴです。エゴは本来の自分の意思に蓋をする、または似非状態を作り出してしまいます。エゴは自分の意に反することを作り出し、他人を批判し、何にもまして自分自身の成長を妨げます。挙句の果てにはエゴは自分自身を孤独にしていきます。エゴは自分だけではなく、集団にも伝染します。その結果、組織にもエゴが存在してしまうのです。会社であればエゴの固まりの風土、ということになるでしょうか。では、このようにエゴが顔を出す日常の中、どう対処すればよいのでしょうか。

感謝の念を持つことです。日頃からあらゆることに気づきを得る。ちょっとしたことにも目を向けられるように、時間的なゆとりを作ることです。ゆとりを持つことができると他への感心に繋がり、自然と感謝の念が芽生えます。毎日、当たり前のように通勤・通学できていることの根っこには交通機関を安全に運転する人がいることへの支援を受けている、給与を頂けていることは会社へ所属できているからという恩恵の念、学習できることはその分野で師となる人がいることで成り立っています。

このベースとなるのは謙虚さです。謙虚さはエゴの治療薬とも言われます。自分にとってどうあるべきか、何が足りていないかを常に分析し、その結果、対策前進のためのポジティブさを維持していくことができます。

しかし、人は日常、ネガティブなことにもどうしても接せざるを得ません。その時はこのネガティブに感じたことと一定の距離を置く、つまりそっと傍にいて見ている状態をキープする、ということです。ネガティブに感じること、すなわちエゴになりますので、このエゴと距離を置くことの訓練が必要になります。

日頃、アンガーマネジメントという手法も持てはやされていますが、それも一つの手法でしょう。しかし、この本質を分かっていない中でテクニックばかりアンガーマネジメントを行なったところで長続きはしません。

煩悩からは煩悩しか人には伝播しません。感謝からは感謝の念が人に伝播していきます。ネガティブもポジティブも心の持ち様ただ一つです。呼吸に意識を向けるようにすると人は冷静になれると言います。それはなぜでしょうか?人は呼吸が一番直接的に付き合っている状態として最も長いからです。赤子から生まれてこの方、死ぬまで呼吸は生涯人に付きまといます。したがって、呼吸に意識を向けることが時間、場所を問わず、冷静に目を向けられる存在になるのです。

煩悩から解放されるために、人生としての深呼吸、皆さんも行なってみませんか。きっとこれまでと異なる世界が目の前に広がることでしょう。

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