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  1. 普遍的リスク対策 乙守栄一
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第79回 数々の派生リスクにより産み出された無気力とその対策

日本では安定志向、事なかれ主義、書けば書くほど活性化とは程遠い言葉がうごめく中、新型コロナによる行動制限。世間の風潮そのものが「無気力」そのものを醸成しているかのごとく、様々な弊害を起こしています。

なぜ、無気力が起きるのか?それを肌感覚で感じるには活気のあるところへ出向くことです。2007年当時、私は出張で上海へ出向きました。深夜、浦東空港から市内ホテルまでかっ飛ばすタクシーのスピードの勢いから、早朝、街中出勤で溢れるバイクや自転車の数の多さに関して、現地の人自身が持つ加速度が圧倒的に日本と桁違いに違ったという印象を持ちました。当時の上海の空は日中でも太陽が見えない、空が終日煤煙で覆われている状態で、それぐらい重工業も発展を遂げていたことから、国を挙げて人も雰囲気も活気に満ち溢れていました。この活気の差は何なのか?確かにバブル時にはこの活気は日本各地にも存在していました。

国内開催のオリンピックなどでの一時的な景気刺激はあるものの、バブル崩壊、リーマンショック、大規模災害、今回のコロナ渦とここまで続いてくると、日本という巨大組織は不活性状態になっています。そのような状態で、大は小を兼ねるという諺からも日本全体の状態はその中の小組織である企業や自治体、学校等、将又家族という単位でもそのまま伝播し、あらゆる組織で不活性化を産み出しています。しかし、組織としては無気力という言葉でもって活動は維持できません。売上の上がらない中、徹底して内部統制という名の元、不正を産み出さないように徹底マネジメントを行ないます。いわゆる管理社会の出現です。管理をして、社員がきっちり組織の言う事を聞く従順な人に仕立て上げてしまう教育、人材開発が出現してきます。

素直に言うことを聞く人財ばかりを重宝する、Noという人を徹底して排除する、大抵の組織はその甘んじた取り巻き連だけで構成されるため、自己都合の良い理念だけで組織運営をしてしまいます。さらにはその下請け企業にはその理念を強要し、従わなければ契約打ち切りという脅しとセットで下請け企業ごと丸め込んでしまうサプライチェーンを構成してしまいます。

組織で働く人たちは、強制的に組織の思い通りに仕事をさせられ、多少なりとも疑問に思うことを口にすることも憚られるます。そんな中、月々の給与だけ支払われ、日常には事足りる生活水準だけは保証され、何も不満はないという思考状態に陥り、それが結果として個人個人の無気力を産んでしまうことに繋がってしまっています。

無気力をマクロからミクロの視点にブレイクダウンするだけで、逆に電車に乗っている人たちの顔一つとってみても、世情が分かると言うことは容易に理解ができるというモノです。

この無気力の本質は何か?それは刺激がないことです。刺激がない中、悶々と長い一日を過ごさせられ、早く仕事が終わらないかと終業時刻を気にしながら仕事をし、終業5分前には片づけをし、チャイムと同時にタイムカードをセットして定時にさっさと引き上げる生活。このような人たちが日本の生産人口の大半を構成しているとなったと想像した時点で、どれだけ国力が減退させていることか、想像に難くないでしょう。

長引くデフレ(ここ最近はインフレが叫ばれていますが・・・)、失われた30年、巨大化する隣国中国に虎視眈々と狙い定められている脅威の状態にあることは露知らず、リスクの感性が完全に鈍化してしまった日本国民。過去の栄光を英雄のように語り継ぐ団塊世代の人は多いですが、過去の栄光はもう戻ってきません。たった今、そして未来をどう生きていくか、その対策としては、日々一人ひとりに刺激を戻すことしかありません。

刺激とは何か?やる気スイッチを入れ、何かしらのターゲットを据えることで、何らかの形で継続させることです。夢も目的もない生活から一早い脱却こそ、国力活性化のカギです。非日常空間を作り、感性を刺激することで何らかの目的が浮かび、それを定めながら、日々の生活を過ごすことしかありません。これらの刺激を持った人の総和・集合体こそが国力再建のスタートになります。本来ならば国レベルのトップダウンでそのような施策が打ち出されるべきですが、残念ながら政治や官庁そのものも縦割りの事なかれ主義が蔓延っていることから、多くは期待できません。失敗を懼れ、縮み込んでしまった日本国民。民間の一個人の集合体が影響力を刺激する活動こそ、下降線をたどる日本の不活性を鈍化、ないしは横ばいにするせめてもの方法です。2025年、万国博が大阪で開催されます。世界に訴えかけるイベント開催として日本再建の最後の砦のこの時期に向け、一人ひとりがどう主体的に行動するか、もう一刻の猶予もありません。

京都府立医科大学特任教授
(株)シー・クレド代表取締役 乙守栄一

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