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第14回 トップとのミーティング制度があると社員の身だしなみや行動がよくなる!~アンケート調査結果から

帝京大学の吉野ヒロ子さんと「外見リスクマネジメントと組織内広報の関係性」についてウェブアンケートを実施し、共同研究を行いました。その結果について、本コラム13回目は、外見にリスクを感じて避ける行動をした人は3割から5割。年収が高い人ほど忌避行動をする内容を解説しました。今回は、社長の身だしなみが社員に与える影響についてアンケート結果から深堀します。

石川:今回のアンケートでは組織内広報と外見リスク低減の関係性を見ようとした点は吉野さんならではのユニークな視点ですよね。どうして組織内広報との関係性に着目したのですか。

吉野:私自身も今回外見変革にチャレンジしましたが、それは自分のためというよりも、帝京大学という組織の看板を背負うことへの意識からでした。服選びや化粧は苦手なのですが、外部での講演やメディア出演にあたって、それなりの外見で出ることが大学の評判を高めて、学生のためになるかもしれないと感じたからです。

組織内広報は、経営理念を社員に浸透させて、連帯感や企業への愛着を高めること、そして社員が主体的に仕事に取り組むようになるのを目標とするものですから、組織内広報がうまくいっている社員は、企業の評判をよくするために外見を整える行動をするのではないかと思いついたのです。

石川:レピュテーションですね。そういえば広報学会で、私は外見リスクマネジメント研究会の前に、レピュテーション研究会の主査をしていました。社長のメディアトレーニングは会社の評判を高めるためです。社員の行動が関係あっても不思議ではありません。結果はどうだったのでしょうか。

吉野:組織内広報の手段としては、昔から、パンフレットのような形で社内報を配布する(社内報・紙媒体)、トップと役員以外の社員がミーティングを行う機会を設けるといったことが行われています。ネットが普及してからは、イントラネットで社内報を公開する(社内報・ネット)ことも増えて、最近では社内SNSも注目されています。運用の仕方にもよりますが、社内SNSは社員同士の雑談的なコミュニケーションの場を作るという意味もあります。いずれにしても、組織内での情報共有、コミュニケーションを活性化するよう、組織の側から働きかけるものですね。

まず、社員数が多い企業ほど組織内広報は整備されていることがわかりました。組織が小さいと、リソースの問題でなかなかできない事情もあるでしょうし、日常的な業務の中で社内の多くの人と直接やりとりすることも多いでしょうから、必要性があまり感じられないかもしれません。

中・大規模の組織だと、自然なやりとりに任せているだけでは社内の意識がバラバラになってしまう、そうなると経営にも支障が出るのではないかという危機感が出てくるのではないかと思います。

吉野:まず単純に、組織内広報制度のあるなしで経営理念の理解などに差があるのかを分析してみました。下の表で緑に塗ったところが統計的に有意な差(たまたまではない差)が出たところです。紙媒体の社内報のあるなしは影響がなかったのですが、ネットの社内報がある会社に勤めている人と、ない会社に勤めている人を比べると、ネットの社内報がある会社に勤めている人の方が、職場の周囲の人は経営理念を理解しているようだと感じているということになります。特に、「トップとのミーティング」制度があるかないかは強い影響力がありそうです。

専門的になるので図表は省略しますが、年齢や性別、学歴、個人年収といった基本属性、顧客との接触頻度、勤務先の規模、役職など影響しそうな要素を加味して重回帰分析という分析をしたら、組織内広報の認知頻度が高い人は、自発的に勤務先のためになる行動を取る頻度が高く、身だしなみ行動の頻度も高いという結果になりました。

同じように組織内広報の手段別に分析してみると、特にトップと役員以外のミーティング制度がある企業に勤めている人は、そうでない人よりも、自発的に勤務先のためになる行動をしたり、身だしなみを整えたりする頻度が高いという結果になりました。

トップとのミーティング制度は、経営理念の理解にも効果があるし、組織内の連帯感にも効果がありました。

石川:トップが身近だと社員の外見を整える意識が高まるということですね。外部でのメディア出演機会を多くすることに熱心な広報担当者は多いですが、内部でのリレーション制度との関係性が数字で明確になったのはとても有意義です。

吉野:アメリカの研究で、ある大学の職員に対して組織内広報に関するインタビュー調査をしたら、情報共有はネットが便利だけれど、自分が組織に大事にされていると感じるのは顔を合わせて行うコミュニケーション、特にトップとのミーティングだと多くの協力者が言っていたという報告があります。

直接顔を見たこともない経営陣から一方的にあれこれ言われても、これほんとに現場のことわかって言っているのかなと思いながら、仕方ないのでとりあえずやるという流れになりがちだと思うんですね。トップが貴重な時間を割いて現場の人と交流を持って、現在の課題や未来のビジョンを共有するということは、そのこと自体がちゃんと現場を見てますよ、社員のみなさんを大事に思っているんですよという強いメッセージになるのではないかと思います。

人間は好意を寄せられると、好意を返そうとする傾向がありますから、自分が会社に大事にされていると思えば会社に愛着を感じるでしょうし、その結果、会社によいことを自発的にしようとする人が増える可能性があります。そういう組織作りができれば、外見リスクだけでなく、さまざまなリスクの低減にもつながるのではないでしょうか。

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