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  1. コラム 干潮楼主人
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第1回シューカツ(就活)がシューカツ(終活)に変容してしまうリスク~ES(現行)不要論と「へんてこ研究会」(社内)のススメ

コラム

干潮楼主人氏

コラム執筆の機会をいただき、感謝しております。

本稿の初期の目的は、「日本企業に勤める能力が標準程度の文系大学出の日本人若手社員の定着率とモチベーションが高まらず、現状で底知れぬ危機に瀕しているのは、いかなる背景と理由が考えられるのか」という問いかけに対して、筆者なりの視点からお答え「してみる」ことです。

このような歴史的、かつ構造的な問題提起は、なまじっかの分析家では真の「解答」にアプローチすることは、容易ではありません。最初に申しておきますが、解答の矛先を「ゆとり世代」前後の若者のメンタリティー「総体」に向けることは、無益です。逆に、「とんでもなく忙しく(と思わないと、やっていられない)、プレーイングマネジャーであることが常態化した管理職クラス」の意識と行動の「改善」に求めることもまた、同等に無価値でありましょう。

なにやら、出口の見えない「アベノミクス」の幕引き戦略や、日ロ間の「南クリル管区」をめぐる交渉、および北朝鮮エージェント機関による拉致問題などの懸案事項クラスの政治課題のような「めんどくさい」雰囲気がただよって、ふつうのひとは「箸もつけたくない」状況もうかがい知れます。

本稿は、ながねん、「真面目にサシで本気で助けや啓示を求めてきた」学生に「それなりに」答えてきた執筆者なりの「間合い」「口調」「いなし方」「仕向け方」をそのまま字面にほぼ忠実に再現し、読者のみなさまを「ケムにまきながら」ご一緒に「考えてもらう」ひとときにしたいと考えております。なにやら手応えや示唆を得たような気がした方は、ユーチューバーのコンテンツの「チャンネル登録」視聴者のように、継続的におつきあいください。(以後、「執筆者」という自称は、「当方」を用います)

字数が「無駄にながいの」は、本稿を特長づけるものとしてご勘弁ねがいます。

◇のっけから、“最終”提案を~もちろん暫定版です~◇

次号以降、各ご提案(s0.1から始まる)の解説や掘り下げはつづけてまいりますが、あくまで現段階の試作品です。最終形がどうなるかは、当方も予測がつきませんので、気軽に読み継いでください。

(おもに採用分野)
【問題提起】
現行の就職活動の起点になるESを重用した採用活動は、とどのつまりは、「不完全な自己満足とかなりの勘違いのバーター」にもとづく企業と学生の合意を機械的に生み出しているだけではないだろうか?

・ながねん、採用の重要ツールであるES(入社志望書および初期のエントリーのWeb活用のファイル)の内容および運用を基本的に疑ってみる(s0.1)
~人気どころでは万単位超え、そうでなくとも千単位の応募(Web形式もふくむ)は、およそ無価値であると見切る。いっそのこと、ロト形式か乱数処理での「抽選」にして、一定段階までは絞り込んだほうがまだましなのではないか。大手情報サービス会社のサイトに「のっかった」だけの初動に価値はあまり見だせない。
採用予定数ではなくて、過去5年の「入社3年以内の平均在籍者数」の2~3倍の応募者(場合によっては、先着順もやや乱暴だが、ありえる)に向けて、「かならず、じかにセンパイ社員が真面目に会ってじっくりと話をお聞きします」と、各大学就職センタほか各方面に繰り返しアナウンスする。センパイ社員とは、人事担当ではなく、ましてや数年上の若手でもなく、父親世代にあたる年配者が「ひとり一回」につき、相対する体験をしてもらう。

・「トラックバイアス」(*)のかかった「たいして大成は望めない“そこそこの人材予備軍”を獲り合う愚行」をあらかじめ避ける(s0.2)
~ESの設問をぐだぐだ多くせずに、転職市場並みに、シンプルな職務経歴書ていどの「事実にもとづく記述のみ」に限定し、無駄な修飾、誇張は排する。希望的な観測以外の何物でもない「入社後にやりたいこと」などの回答は、記述させないことを明確化する。
年配者との第一回面談では、「そこに書いてある“イイこと”をした経験はあとでお聴きするとして、これまでじかに会って、リスペクトできる、刺激をもらったと認められる年配者の話を思い起こし、ここでじっくりしてください」と水を向ける。
(ただし、両親祖父母、親族の話題は避ける。「親を尊敬する」と表明することは、他人の前で身内の自慢をするに等しい幼稚な行為であると叱る意味合いから、です)

・合否の決め手~「秘密」と題する作文を書いてもらう(s0.3)
~浪人経験、部活動や地域のスポーツクラブ活動での挫折やスピンアウト、「いじめ被害に発するひきこもり」ほか、アルバイト先の職場環境が我慢ならずに「ばっくれた」体験など、ネガティブな話をどうにかしてもらい、余計な感想やアドバイス・説教はなしにして、「では、その体験がのちのあなたを“成長させた”という筋立てではなく、そこから脱した、あるいは逃れたことのどの点に価値を認めるかを結びにした作文を800字くらいで書いてください」とすすめる。これを評価する際、文章の「見栄え」=表記の折り目正しさ=や、並よりは少しましな程度の表現力は考慮に入れず、「こころがあたたまった」かを視点の中心において、その年配者に採点させる。(作文記述は外部との連絡手段を断つ場でおこなう)

採用分野の以後の提案は、次号から順次、ご紹介いたします。
(おもに社内でのオフライン分野=直接の業務のタテ関係から離れる立場)

【問題提起】
入社段階、まっさらの「新人」の時期から「真の入社動機」を語らずに組織に入ってしまった者のかなりの層は、「環境とのミスマッチ」に苦しみ、苛まれる。ひと握りの「恵まれた」層が、せいぜい「セカンドベストかその次位」の企業にもぐり込むことはできるが、
少なくとも3~4割の「(人事担当や経営からは)無難にみえた」層は、「ネクストベストの選択(ココが現状では仕方なかろう)」でしか、入社先を決められない。
(数字だけをいうと、シュウーカツの平均スコアは、1勝百数十敗になる=単純化して100戦1勝99敗=最初から「負けグセ」と「ダメ出し」のおびただしい洗礼を不条理に浴びせかけられる構造)

入社動機は「ビジネス社会に飛び込む以上、この環境で世渡りできるだけの基本は、“ほどほどのインカムを得ながら”この会社で身につけたい。もっと、ホンネを言えば、いきなりシュウーカツに敗れて、ワーキングプアに落ち込んでは、人生の展望がないので、そうした転落への道だけは避けたい」に、かなりの割合は決まっています。パート・アルバイトをふくめた非正規社員と、大卒の正社員(候補)の最大の差異は、「その企業の社風、風土、ひらたく言えば、ギョウーカイとカイシャのしきたりにサラシの状態から染め上げ、なじませる」つまり「社風を理屈を並べる前に、たたき込む」周囲の環境の「圧力の差」にほかならない。このことを企業がはっきりと学生側に就活当初から入社しばらくは伝えない。ここで、「組織=ウエの示すことにひたすら従順になること」を強制して、「愚にもつかない、抽象ワードの羅列」と業務マニュアルを力ずくで暗記させて、「ヨーイドン」式の選別を始める会社は、SNS社会でもあることから、ほぼ確実に「ブラック企業」の烙印を捺されてしまう。

・鉄道会社の運転士の世界に現存する「師弟関係」の応用から「メンター」の仕組みをあくまで現代的にクサクなく、イタクなく、組織に埋め込む(s0.4)
~これは、初期の運転士指導のときに結んだ「師弟」のきずなが、その後ながいあいだ続く独特の仕組みの実践です。採用時に「これならば、ムスコ・ムスメにしてもいい」と賛同して内定出しに同意した年配者の面談者は、そのまま採用された若手社員の「メンター」になってもらう。というと、大手総合スーパーにあった「シスター制度」や、老舗航空会社のCAなどに見られる(「宝塚」的ともたとえられる)タテ関係が想起され、時代逆行的で無価値であるので、メンターには「得意分野の研究会」の主宰を申しつける。

・社内にあふれる、「ヘンなおじさん」が威張る「へんてこ研究会」の創設(s0.5)
メンターに選定された年配者は、なるべく「できる社員」ではないことが望ましい。だが、ながねん、その会社に生息してきた生命力と「環境適応能力」が、~ご本人は別として~あるのだから、「こんなんなら、オレでもやれるし、若手にも話はできる」ということが、必須条件であり、いわゆる「価値基準や世代感覚、あるいは社風にもとづく経営マインドの伝承」などではなく、「いっぱしのオトナには欠かせない」エレメント(要素)のみをオモテに押し出したもので、部外者には「鼻をつまみたくなる」ものでも、かまわない。

EX.
○良書を読み継ぐ「バイブルの会」(当方ならば、いちばんに手を挙げたい)
言わずと知れた「活字中毒者」の集まり

○アルコール研究会「あぶさんの会」
飲みたいひとは、一定数は世代に関係なくいる

○「釣りばかの会」
解説不要。井伏鱒二先生の「川釣り」(薄い岩波文庫)を繰り返し読むことをすすめたい

○「トラックバイアス研究会」
うまきち。これも相当なエリート企業にまで、ひろく生息する

○「共済ではなく、キョウサイのマスオ友の会」
これならば、メンターになったひとも自信をもって主宰できる(未婚者歓迎)

○「バンド“ばか”の会」
イメージキャラクターは「近藤春菜と角野卓造」

○「宮脇俊三を悼む会」
これも一定数は望める「のり鉄」の集まり

○「銭ゲバの会」
運用ばなしは、世の中の共通テーマ

○「筋肉友の会」
女性キャリア層に繁殖。関連分野が「ホットヨガにのめり込むつどい」(若手向き)

ほか、伝統の「囲碁・将棋」や、「テニス」「サッカー・フットサル」(おもに海外試合の観戦とプレーに分ける)という当たり前のくくりよりも、「赤羽・日暮里、五反田・蒲田で飲んだくれ、食い倒れる会」「トラきち」「レッズばか」「寄席めぐり」など、どんどん分野を限定・細分化したほうが、会が長持ちするのかもしれません。

○飲み・食い、スポーツやギャンブルは敬遠したい層も近年は厚いので、天文、盆栽、美術(とくに寺社関係)、考古学、世界遺産、少数民族や神話の研究などが、「くいつき」はいいのかもしれない。

以上の流れになりますが、これが、かつてはどこのカイシャにも存在した、昭和的なお気楽リーマン稼業のモデルチェンジ、あるいは「家族的な経営スタイル」の復興を意図するものではないことを次回からは、つぶさに語りたいと考えます。
(第2回につづく~「意義は疑わしいが価値はある」取り組みのすすめ~)

*トラックバイアス 競馬用語。競走馬が通るコースによって生じる、レース開催初期とその後の馬場の位置取りの有利不利の発生具合のこと。馬の実力いかんにかかわらず、レース結果に影響を与える。

◇執筆者 干潮楼主人(かんちょうろう・しゅじん)
おいおい「還暦」を迎える元全国紙社会部記者。「誰もが知っている現役衆議院議員」の元公設秘書。埼玉県の高崎線沿線に30代から暮らす。1男2女の父。配偶者と白猫おのおの1。海外放浪後、日経流通新聞(現日経MJ)で長期間「人材開発面」を執筆(フリー転身後)。この間、首都圏、関西圏を中心に大学就職部、大手企業の人事部をそれぞれ数百か所まわってインタビュー式のコラムを連載。本業は編集プロダクション経営。近年は出版不況に適応するために、大学生の就職指導(おもに、メディアに務めるための文章指導ほかコーチング)と危機管理コンサルティング業務にも力を入れる。全国紙、主要地方紙、NHKと民放のディレクタ・記者職に百数十人を就職させる。ハンドルネームはむろん、森鴎外の「観潮楼主人」から。仕事場のマンションからは遠く秩父連峰しか望めず、東京湾の潮は見通せない。

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