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第35回 瞬間思考と熟考の使い分け

普遍的リスクマネジメント

乙守 栄一氏

ふとある時、電車の中から窓の外に目をやると、街の歯科医院の看板が目に入りました。その看板にはハートマークが書かれ、地図と共に駅から徒歩3分と書かれていました。何気なく感じた想いとしては、痛い治療もなく心のケアも大事にしますよ、という印象を受けました。歯科医院も都会には溢れるほど開業しており、実態としてどのように差別化して経営を維持しているのか?という疑問が芽生え、次に街に溢れる事業体は確か他にもたくさんある、ということに思考回路が向き、事業の淘汰と価格競争、レッドオーシャンというキーワードが次々に頭に浮かんできました。

上記のように、ふと目にしたことから次々に思い、考えが浮かんでくる状態、実はこの「瞬間思考」こそ、今注目を浴びています。心理的にも何も影響を受けていない状態では、非常にリラックスしており、何の脈絡もないところ<記憶の引き出し(潜在、顕在問わず)>から次々と、まるで「口から万国旗が数珠つなぎで次々に出てくる手品」のように出てくる、この思考感覚を大事にする必要があります。知恵の源泉は意外にこの辺りに隠れています。

一方、テキストでズラズラ書かれた文章なり論文をじっくり読まされる状況に出くわしたとします。一切イラストも写真も入っていない文面、見出しも特に用意されていない文章、皆さんどういう意識が働きますか?じっくり読まないといけない、とある程度覚悟をして内容を査読していかなければならない、という強烈な“Must”“Shoud”意識を働かさないといけない気になりませんか?かなり神経を使うこの行為は同時に、理論的に物事を解釈しようという思考回路が働いています。内容が自分の感がられる範囲を超えているものであればあるほど、思考回路に掛かる負荷は相当なもので、疲労感はかなりのものになります。時間を要する思考、これが「熟考」となります。

リスクマネジメント意識を醸成する取っ掛かりにおいても、この応用が効きます。

不安を感じない状態は「瞬間思考」の状態です。どちらかといえば日常の平穏な状態がここに該当します。しかしながら、何かしらヒヤリハットなどを味わうと、当然ながら「人が不安を感じる」状態となります。何故このような危険な目に合ったのか?「不安を感じない状態」から「不安を感じる」状態へと遷移します。不安に至ったタイミングで「熟考」することになります。じっくり考えることで、各種対策を決定していくことになります。評価分析し、根本原因を探り、対策を考えることこそ「熟考」のプロセスに他なりません。これらの対策を実行「Do」することで、低セキュリティの状態から高セキュリティの状態へ遷移することになります。この高セキュリティの状態が醸成されてくれれば、自ずと高セキュリティ、かつ人が不安を感じない状態を実現できます。しかしながら、現実的には時代の変遷は短期かつバリエーションが多いため、リスクは多岐にわたって襲ってきます。「半信半疑」状態を続けることこそが、今の時代を生きていくうえでは大切なことだと考えられます。

片や、不安を感じない状態の過ごし方にもポイントがあります。冒頭「瞬間思考」の状態は知恵の源泉と述べました。この瞬間思考の状態は熟考と異なり、非ロジカルな思考状態が特徴です。深く考えることが苦手な思考状態、その代わり即断することに長けた思考回路なのです。それが故に直感とも結びつけやすく、瞬時のクライシス(危機)発生への備えになくてはならない思考回路なのです。次々に何の脈絡もなく思い描かれる状況、これはイメージ(映像)となって描きやすいものとなっているケースが多いです。これをクライシスマネジメントに置き換えると、被害状況が映像として現れることにも通じます。レジリエンシャルなリスクマネジメントには、「瞬間思考」を大いに活用することで機能する、ということをここで申し上げたかったことなのです。

「瞬間思考」と「熟考」を使い分けたリスクマネジメント、今後色んな局面で展開していきたいと考えています。

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