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  1. 普遍的リスク対策 乙守栄一
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第44回 理念を大事にすることで救われるもの

普遍的リスクマネジメント

乙守 栄一氏

一言で理念というと何を思い浮かべるでしょうか。堅苦しいモノで、何か高尚なことが書かれている文面、とのイメージが付きまとうかもしれません。特に企業の経営理念などはこのような高尚なことが書かれている典型的なものかもしれません。この高尚なことが実はその想い、考えが非常に凝縮されたモノとなっています。長年続く企業にあたって、創業者が当時事業を興すにあたり、根底の考え、発想、意図、目的など、研ぎ澄まされた内容がここには散りばめられています。

理念とは決して変えてはならない(ブレてはならない)根本の考え、とも言います。企業が理念をコロコロ変えているようでは世間からみて、信用のならない企業とレッテルを張られてしまいますし、事業の永続はできないでしょう。人に当てはめてみれば信頼できないヒト、と捉えられても仕方ありません。然し、現実に経営理念のない企業は大小問わず2社に1社も存在すると言われています。

理念が文面として示すことができていない企業が数多存在しているというこの事実、その裏にはどういう影響があるでしょうか?そこに働く従業員は、芯のない経営者の元、振り回され、理解に苦しむ仕事の割り振りを行なわれてしまいかねません。各種ハラスメントの応酬、精神状態や健康状態に危険が及ぶ職場環境、長時間労働等、いわゆるブラック企業の源泉がここに巣食っているといっても過言ではありません。当然そこで勤務する従業員は職務中のストレスから解放されず、通勤途上や家庭にて二次的にストレスを吐き散らすことに繋がり、新たなストレスの温床となっていっている実態があります。このように負の連鎖が世の中を覆うことで、起きてほしくない数々の犯罪、自殺、不正等、負のスパイラルがアリ地獄のように今の日本を覆っています。

理念を述べるということはある種、覚悟が必要です。その覚悟でもって為すべきことを為す、これに同調する人が集まり、やがて組織が構成され、企業であればビジネスが成り立っていくものです。金儲けのためだけで手段を択ばない仕事はビジネスではありません。理念のない企業(人)は知恵(損得勘定)のみを働かしているのであって、智惠(善悪判断)は存在していないのです。

先日も某大学にて就活セミナーにて1回生向けにワークショップ型講演を行ないました。一回生から就職に向けた意識を醸成するカリキュラムにも非常に感心させられるところではありましたが、経営理念とは何ぞや?という中で、“自分自身の根底の考えと合う企業を選ぶこと”と伝えました。そうでなければ必ず後悔することに繋がる、と。経営理念を立てている企業を選ぶこと、かつ、その理念を大事にしている企業を選ぶこと、この2つを意識するだけでもかなりその企業を研究することに繋がると伝え、同じ場所に参加されていた保護者の方からも大いなる賛同を受けました。

テクニックだけで受かろうとする理念のない受験的な就活は就社であり、就職ではありません。企業サイドも昨今の人手不足もあり、十分な素養も検証せず、安易に合格させてしまう人手確保の実態があることも否めません。

自分が人生の主人公になるか、他者のなりふり見てご機嫌伺い的な脇役人生を送るのか、個人も企業も理念一つです。これまで生きてきた人生の積み重ねの中で、自分に合う合わない直感は既に人それぞれ養われているはずです。直感はヤマ勘とは異なります。直感とは自分の中にある潜在的な記憶の元、論理づけられていない記憶(記録)群から生まれる感性です。第三者への説明指標としてどうしてもデータに紐づく結論立て(予測根拠)が求められがちですが、説明を求める側がこのような姿勢でいると、話し手の可能性(アイディア、イノベーションのタネ)を潰してしまうことに繋がりかねません。不確実な世の中だからこそ、求められる理念と直感の紐づけ、これができることで自分にしかない論理が組み上げられていきます。これこそ、オリジナリティというものでしょう。

自分にしかない強み、何ですか?この問いに応えられる人がどの程度いるでしょう。このオリジナリティを見つけられる人生を歩めるかどうか、理念一つに掛かっています。

困った時に判断の手助けとなる理念、数多くのリスクに覆われながら生きる人生、今一度理念というものを振り返られてみては如何でしょうか。必ずや悩みごとの救い(一助)となってくれることと考えます。

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