RMCA-リスクマネジメントの専門家による寄稿、セミナーや研修・講座などの情報

  1. 普遍的リスク対策 乙守栄一
  2. 1052 view

第46回ポリティカルコレクトネス(ポリコレ)にみる脅威

普遍的リスクマネジメント

乙守 栄一氏

ポリティカルコレクトネス(ポリコレ)という言葉を聞かれたことはあるでしょうか?性別や人種、民族、宗教の観点から差別・偏見を防ぐために、政治的・社会的に公正・中立な言葉や表現を使用することを指します。例えば、女性で未婚・既婚が区別されることを防ぐために「Miss(未婚)」「Mrs.(既婚)」から「Ms.」と表現するようなケースです。

悪評高く、行き過ぎたケースにまで「ポリコレ」が担ぎ出されることも多いのですが、問題はこのポリコレが持つ特性です。このポリコレはその集団的結びつきが強ければ強いほど、大きな破壊が起きるまで消えない、という特性を持っています。

先日、終戦記念日(8月15日)前後にて、NHKにて二・二六事件に関して報道されていました。日本の太平洋戦争突入のキッカケとなった、当時の内閣襲撃に蜂起した陸軍の一部将校が天皇親政を求めたことへの昭和天皇の想い(想像ベースですが)が語られていました。昭和天皇が蜂起した陸軍の動きを気に掛けられ、自身のお言葉によって止めようにも暴走状態にあり止められなかったという自責の念が背景として存在するのでは、と放送内では語られていました。二・二六事件以降、太平洋戦争突入に至るわけですが、そこで怖いのが当時の世論が一挙に太平洋戦争の正当化に傾きだしたことです。カタカナ用語の利用禁止、お国のために奉仕をする等、極端な政治的統制の掛けられた時がこの時でした。ここから8,9年後の昭和20年に終戦を迎える、まさにこれこそ「ポリコレ」による結末「破壊」です。

「ポリコレ」の何が怖いか?思考が停止し、他を排除し、第三者から見れば誤った方向に進んでことが明らかに解っている場合でも自主ブレーキが掛けられないという点です。したがって、行きつくところまで行ってしまって、一度破壊されて初めて思考がゼロクリアされます。ヒトは痛い目をみるまでわからない、この表現と一致します。

今の日本においても、大小問わず、このポリコレの嵐ではないでしょうか。会社の経営者の思考一つみても、高度経済成長志向路線から未だに抜けきれず、売上・利益至上主義ポリシーを掲げ、社員もそれに強制的に遵わされ、自社だけ儲かって何が悪い?と強引・傲慢なビジネスをしたあげく、とある事故がキッカケとなって経営が傾き、結果として倒産に至ってしまう。まさしく、会社組織、学校、家族等、あらゆるところに内在する要素です。

ポリコレは極端な原理主義的な思考になった風土を産み出す元になる、特異な性質を持っています。まさにワンマン経営者の場合、この経営者の考えが極端な方向に依っていると正にこのポリコレが負の側面に大きく振れてしまうことになります。

ヒトは組織に属していないと不安になる要素を持っています。その組織が生活に関わる側面が大きいほど、従わざる得ない状況に陥りやすくなります。この組織が負の側面の強いポリコレに侵されていた場合、強制的にそこに所属するヒトもその負の要素に染まってしまうことになります。染まらなければ生きていけない、生物学的にも生存欲求が本能として備わっているため、仕方のない側面が出てきます。染まったヒトが増えていけばいくほど、勢力が拡大し、やがて「破壊」という結末を見る、という集団心理の観点を掛け合わせて見ても納得がいきます。

経営陣に自分に都合の良い人だけを身近に揃え、反対意見を言う人を遠ざけると会社は滅ぶと言います。まさしくこの事象はポリコレと結びつきます。

ポリコレには予防的要素はないのでしょうか?和を以て貴しとなす、という言葉があるとおり、数が少ないうちはまだ対処できるでしょう。それぞれの分野において権限を分散しておき、絶対権力ではない状態、組織を作り上げることなども一つの予防策になるのかもしれません。

自分自身が変われない、組織が変われない、動きを止められない、アナログ上のこういった大きな破壊が起きる前の「自動停止装置」の開発を、何かしらITを駆使してできないものか、半ば真剣に考えたくなってきました。

普遍的リスク対策 乙守栄一の最近記事

  1. 第102回 マウントを取ることの実態とそのリスク対策

  2. 第101回 バイアス理解による行動リスク対策

  3. 第100回 継続は力なり

  4. 第99回 不確実な時代を生き通すためのリスク対策

  5. 第98回 進化(深化)に共通するモノの見方

最近の記事

2024年5月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
PAGE TOP