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  1. 産業法務の視点から 平川博
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第63回 ジビエのすすめ

産業法務の視点から

平川 博氏

1. はじめに

ジビエという用語は、語源はフランス語(gibier)で、食材として捕獲された野生の鳥獣またはその肉を指します。この用語について、日本ジビエ振興協議会HPの「ジビエとは」と題するウェブページでは、以下のように記載されています。


ジビエとは狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉を意味する言葉(フランス語)で、ヨーロッパでは貴族の伝統料理として古くから発展してきた食文化です。
その昔フランスなどでは、ジビエを使った料理は自分の領地で狩猟ができるような、上流階級の貴族の口にしか入らないほど貴重なものでした。
そのためフランス料理界では古くから高級食材として重宝され、高貴で特別な料理として愛され続けてきました。
そこでは、動物の尊い生命を奪う代わりに肉から内臓、骨、血液に至るまで、全ての部位を余すことなく料理に使い、生命に感謝を捧げようという精神が流れています。


(http://www.gibier.or.jp/gibier/)

2. 農作物被害

(1) 現状
農林水産省の令和元年10月16日付「全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(平成30年度)」と題するプレスリリースでは、以下のように記載されています。


農林水産省は、平成30年度の野生鳥獣による農作物被害状況について、都道府県からの報告を基にして、全国の被害状況を取りまとめました。(都道府県は、市町村からの報告を基に把握を行っています。)
■ 被害状況の概要
1.鳥獣による平成30年度の農作物被害については、被害金額が約158億円で前年度に比べ約6億円減少(対前年4%減)、被害面積は約5万2千haで前年度に比べ約1千ha減少(対前年3%減)、被害量が約49万6千tで前年に比べ約2万1千t増加(対前年4%増)しています。
2.主要な獣種別の被害金額については、シカが約54億円で前年度に比べ約1億円減少(対前年2%減)、イノシシが約47億円で前年度に比べ約1億円減少(対前年3%減)、サルが約8億円で前年度に比べ約1億円減少(対前年12%減)しています。


(http://www.maff.go.jp/j/press/nousin/tyozyu/191016.html)
(2) 対策
産経ニュース速報の「【知ってる!?】ジビエの有効活用(1)農作物被害防止など“一石三鳥”」(2018.12.24 07:57配信)と題する記事では、以下のように記載されています。


「ジビエ」は、狩猟によって得られたシカやイノシシといった野生鳥獣の天然の食肉を意味するフランス語で、欧州ではジビエ料理が食文化として発展してきた。日本でも古くから各地で食されている。国内では、野生鳥獣が農作物などを食い荒らす被害が深刻化しており、その対策として捕獲された野生鳥獣をジビエとして有効活用することが課題となっている。
農水省としてもジビエの普及拡大に取り組んでおり、その一環として今月【引用者註:2018年12月】10日から来年2月10日まで、外食業界団体である日本フードサービス協会が飲食店などでジビエ料理を提供する「全国ジビエフェア」を開催。同協会は「ジビエは高タンパク低カロリーな食材で、有効活用すれば被害防止に加え、地方の活性化にもつながる」と、“一石三鳥”のメリットを強調する。(協力・日本フードサービス協会)


(https://www.sankei.com/life/news/181224/lif1812240009-n1.html)

3. 栄養

(1) イノシシ
「ジビエト」(ジビエのポータルサイト)の「ジビエを食べると嬉しいこと」と題するウェブページでは、以下のように記載されています。


ジビエ料理は、身体にうれしい栄養素を含んだ食材でもあります。野山を駆け巡ったお肉は、脂肪が少なく健康や体型を気にする方にもおすすめ!代表的なジビエとして、イノシシ肉とシカ肉の栄養価を見てみましょう。

たんぱく質 ビタミンB2 ビタミンB6 ビタミンB12 脂質
イノシシ肉 18.8g 0.29mg 0.35mg 1.7mg 19.8g 2.5mg
豚肉 17.1g 0.23mg 0.28mg 0.5mg 19.2g 0.6m

出典:文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
イノシシ肉は豚肉とさほど変わらないカロリー・脂質ですが、鉄分はなんと4倍、ビタミンB12が3倍。コラーゲンも多く美容に最適です。美味しいだけではなく健康のためにも積極的に選んでいただきたい食材なのです。


(https://gibierto.jp/content/happy/)
(2) 鹿
わかやまジビエ振興協議会HPの「『木の国』が育む“わかやまジビエ”」というカテ中、「ジビエの栄養価」と題するウェブページでは、鹿肉について、以下のように記載されています。


<高タンパク・低カロリー ジビエは理想的な食資源>
ヨーロッパでは現在もご馳走として振舞われ、栄養価が高いと言われるジビエ。
山をかけまわる運動量から筋肉の発達が著しく、高タンパクで低脂肪な肉質に特徴のある鹿肉。筋肉の発達に伴い、鉄分量が増加していることも魅力の1つです。
一般的に動物の肉に含まれる脂肪は摂りすぎると生活習慣病の原因になりますが、ジビエ、特に鹿肉は脂肪が少なく、その心配も減ると考えられます。
また筋肉や臓器を作るのに必要なタンパク質に加え、脂肪をエネルギーとして燃焼するために必要なビタミンB2、細胞を活性化する亜鉛、神経器官に働きかけるビタミンB12といったさまざまな栄養素が詰まっています。…(中略)…
鹿には鉄分やビタミンが豊富なだけでなく、肉としては珍しくオメガ3脂肪酸(α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA))やオメガ6脂肪酸(リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸)も含まれることから、最近はダイエット食やアスリート食としても注目を集めています。


(https://wakayama-gibier.jp/gibier/nutritive-value/)
(3) 鴨
「オリーブオイルをひとまわし」というサイトの「高級食材・鴨肉は、実は栄養素もリッチだった!?」(監修者:管理栄養士 黒沼祐美)と題する記事(2018年11月 6日掲示)では、「2. 鴨肉の注目栄養素」という見出しの下に、以下のように記載されています。


<ビタミンB2>
鴨肉はビタミンの含有量が他の食肉に比べて多い。なかでもB2は顕著だ。ちなみにビタミンB2は、エネルギー代謝に関与する栄養素で、皮膚や粘膜、爪、髪などの健康を保つ効果がある。
<不飽和脂肪酸>
脂肪は組成によって飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられる。普段良く食される牛肉、豚肉、鶏肉の脂肪の割合は、飽和脂肪酸が圧倒的に多い。対して、鴨肉は不飽和脂肪酸が比較的多く含まれている。この不飽和脂肪酸は、魚の油にも含まれる成分で、血液や血管の状態を健康に保つ効果があるとされており、体に積極的に取り入れたいもの。現状、日本人は脂肪酸の摂取量という意味では満たしているが、食事において不飽和脂肪酸の割合が少ないと思われる人は、脂肪酸バランスのよい鴨肉を牛肉、豚肉、鶏肉と置き換えるといい。


(https://www.olive-hitomawashi.com/column/2018/11/post-2769.html)

4.行政依存

(1) 不採算ビジネス
SankeiBizの「『全部売っても赤字。だから行政がやっている』ジビエ、食文化定着への道半ば」(2018.2.9 13:17配信)と題する記事では、以下のように報じられています。


増加したイノシシやシカによる農作物の食害対策として注目される野生鳥獣肉(ジビエ)料理。精肉の市販に必要な専用の食肉処理施設の稼働率が低かったり、赤字続きだったりするケースが各地で相次いでいる。猟師が持ち込む鳥獣の質が安定しないことなどが理由。食文化として定着するまでの道は険しい。
「害獣を活用できればと思ったが、こんなはずではなかった」。富山県高岡市で処理施設を運営する食肉販売会社「にくまる」の米山晴隆社長は、ため息をついた。
平成27年に静岡県の補助金100万円を利用するなどし、計約500万円で施設を開いたが、処理実績は2年余りでイノシシ8頭のみ。狩猟期に入った昨年11月15日以降も閑散としたままだった。…(中略)…
苦戦は民間だけでない。伊豆市が約5800万円をかけ、23年に開設した処理施設「イズシカ問屋」。28年度は計約千頭のイノシシとシカを処理し、精肉約1800万円を売り上げたが約1千万円の赤字だった。
市は「全部売っても赤字。だから行政がやっている」と話す。農作物の食害を防ぐには捕獲意欲の維持が不可欠。猟師からの買値は下げにくく、売値を上げれば、消費拡大に水を差す。開設後数年で民営化する目標は達成できないままだ。
厚生労働省によると、ジビエ処理施設は29年5月現在で全国に630カ所あり、1年間で78カ所増えた。ただ多くは処理数が年50頭以下だ。日本ジビエ振興協会(長野県)の藤木徳彦理事長は「大半の施設で採算が取れていない」と分析する。


(https://www.sankeibiz.jp/econome/news/180209/ecc1802091317004-n1.htm)
(2) 国の後押し
SankeiBizの「ジビエ安定供給、国が本腰 農作物の被害減狙い、消費拡大には壁も」(2019.2.27 06:15配信)と題する記事では、以下のように報じられています。


人口減少を背景に中山間地の鳥獣被害が深刻化する中、イノシシやシカなどの野生鳥獣を食品として売り出す「ジビエ事業」に国が本腰を入れ始めた。全国でモデル地区を選定し、ジビエの安定供給を後押しする。だが、消費拡大には割高に受け止められている価格や、認知度不足といった課題も立ちはだかる。
農林水産省のジビエ利用の「モデル地区」に選ばれた宮崎県延岡地区にあるジビエ販売、マツダコーポレーション(同県延岡市)は処理加工施設を完成させ、2018年11月に記念式典を開いた。同社の松田秀人社長(69)は「頭に描いていた通りの施設ができた」と自信を見せた。
総事業費の半分近くを国の補助金で賄った施設は解体から食肉処理、調理まで可能。別棟には薫製室もあり、19年度はイノシシとシカ計1000頭の加工処理を目指す。
農水省は18年3月、高い衛生基準でジビエを加工処理する全国17地区をモデル地区に選定。ジビエをビジネスとして軌道に乗せ、鳥獣による農作物への被害を減らすのが狙いだ。同省によると、16年度に全国で捕獲されたシカとイノシシは計約120万頭で、被害額は100億円を超える。
対策として国は補助金支給などで後押しし、処理加工施設の数は全国で増加している。ただ、捕獲量に占めるジビエの割合は1割に満たない。


(https://www.sankeibiz.jp/macro/news/190227/mca1902270500001-n1.htm)

5.結語

ジビエは一般の食肉よりも栄養価が高く、しかも鳥獣による農林被害対策にもなりますが、食べ慣れていないことから敬遠する人が多いので、ジビエの普及のために産官学が連携して、味覚だけでなく、視覚や嗅覚の面でも食欲をそそられる料理のレシピを開発することが望まれます。

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