1.極端現象とは
気象庁HPの「大雨や猛暑日など(極端現象)の長期変化」と題するウェブぺージに拠ると、「極端現象とは、極端な高温/低温や強い雨など、特定の指標を越える現象のことを指します。具体的には、日最高気温が35℃以上の日(猛暑日)や1時間降水量が50mm以上の強い雨などです」。
(https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/index_extreme.html)
ところで、平成27年12月24日に開催された「『防災4.0』未来構想プロジェクト(第1回会合)」で配布された「気候変動に伴う極端現象の変化について」(住 明正国立環境研究所理事長作成)と題する資料(配布資料2)では、下表(出典:IPCC WG1 AR5報告書)のように記載されています。
極端現象の過去および将来の変化 | |||
現象及び傾向 | 20世紀後半に起きた可能性 | 人間活動の寄与の可能性 | 将来の傾向の可能性 |
寒い日と寒い夜の頻度減少 | 可能性が非常に高い | 可能性が非常に高い | ほぼ確実 |
暑い日と暑い夜の頻度増加 | 可能性が非常に高い | 可能性が非常に高い | ほぼ確実 |
熱波の頻度が増加 | いくつかの地域で可能性が高い | 可能性が高い | 可能性が非常に高い |
大雨の頻度が増加 | 増加地域が減少地域より多い可能性が高い | 確信度が中程度 | 中緯度と熱帯湿潤域で可能性が非常に高い |
干ばつの影響を受ける地域が増加 | いくつかの地域で可能性が高い | 確信度が低い | 可能性が高い |
強い熱帯低気圧の数が増加 | 確信度が低い | 確信度が低い | どちらかと言えば |
高潮の発生が増加 | 可能性が高い | 可能性が高い | 可能性が非常に高い |
(http://www.bousai.go.jp/kaigirep/kenkyu/miraikousou/pdf/shiryo2.pdf)
2.国連IPCCの地球温暖化に関する報告書
国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が8年ぶりに公表した地球温暖化に関する報告書について、NHK MEWS WEBの「地球温暖化の原因は人間の活動と初めて断定 国連IPCCが報告書」(2021年8月10日8時21分配信)と題するウェブページでは、以下のように報じられています。
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IPCCは、先月26日からオンラインで開かれた会合で、最新の研究成果に基づく地球温暖化の現状や予測についての報告書を8年ぶりにまとめ、日本時間の9日午後、公表しました。
2015年に採択された国際的な枠組み「パリ協定」では、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ1.5度に抑えるよう努力することなどが目標に掲げられていますが、今回の報告書では、去年までの10年間の世界の平均気温が、すでに1.09度、上昇したとしています。
そのうえで、2050年ごろに世界全体の温室効果ガスの排出量が実質的にゼロになるペースで削減できた場合でも、2040年までに気温の上昇が1.5度に達する可能性が50%を超えると予測しています。
そして温暖化が進むほど、世界各地で熱波や豪雨といった「極端現象」の頻度や強さが増すと指摘しました。
50年に一度の高い気温が観測される頻度は、産業革命前の19世紀後半と比べると、現在は4.8倍となっていて、平均気温が1.5度上昇した場合は8.6倍に、2度上昇した場合は13.9倍になると試算しています。
また10年に一度の大雨の頻度は、現在は1.3倍ですが、平均気温が1.5度上昇した場合は1.5倍に、2度上昇した場合は1.7倍になると予測されています。
■地球温暖化の原因 人間の活動によるものと断定
IPCCは、1990年に最初の報告書を公表してから、人間活動が及ぼす温暖化への影響についての表現を徐々に強め、8年前の第5次の報告書では「温暖化の主な要因は、人間の影響の可能性が極めて高い」としていました。
今回の報告書ではさらに踏み込んで「人間の影響が大気、海洋および陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と記し、初めて断定する表現となりました。
その理由については、産業革命以降に観測された急激な気温の上昇が、過去2000年以上の間で例がない水準であり、過去10万年で最も地球が温暖だったころの気温の推定値を超えていることや、人間の活動と自然の影響を両方とも考慮して試算した気温の推定値とおおむね一致していることなどが挙げられています。
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(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210809/k10013191801000.html)
3.企業活動と地球温暖化
東芝テック㈱HPの「なぜ、企業は地球温暖化対策に取り組まなければならないのか?」(2020.11.20掲示)と題するウェブページでは、以下のように記載されています。
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企業活動と地球温暖化の関係性 |
温室効果ガスはさまざまな企業活動によっても排出されており、地球温暖化に大きなインパクトを与えていると言われています。
例えば、製品の生産や加工過程、輸送や運搬などの事業活動においても温室効果ガスは排出されています。さらに日本では、温室効果ガスのうち二酸化炭素(CO2)の排出量の約8割は企業・公共部門から排出されていることが明らかになっています。
しかしながら、昨今、新型コロナウイルスの流行によって起こった経済活動の自粛とともに、世界的な温室効果ガスの排出量は低減。この事実からも、企業活動が温室効果ガスの排出に影響を与えていることがわかります。
こうした状況を受けて世界各国は、今後の経済再開について、経済対策として脱炭素社会への移行につながるものを重視するという方向性を示しています。
なぜならば、依然として地球温暖化は進行しており、対策を講じなければ将来的に地球の存続さえも危ぶまれる状況にあるからです。
企業の温暖化対策が重要視される理由 |
最近では、環境保護意識の高まりやSDGs(持続可能な開発目標)の浸透によって、業界や企業における温暖化対策に注目が集まるようになりました。また、その実績は投資家や顧客、取引先の反応を左右する評価指標にもなっています。
とくに日本は、二酸化炭素(CO2)排出量が世界上位に位置することから、立地企業は地球温暖化問題と向き合う社会的責任をより強く求められる傾向にあります。
しかし、企業が温暖化対策に取り組むことは、同時に高いメリットを得ることにもつながります。
省エネルギーによるコストの低減はその最もたる例です。さらに、温暖化への適応策と緩和策踏が新ビジネスにつながる可能性も秘めています。くわえて、地球温暖化などの対策に力を入れる企業を投資先に選ぶ「グリーン投資」の動きも世界的に広がりはじめています。
もちろん、地球の存続が温暖化対策の最も大きなメリットであることは間違いありませんが、新型コロナウイルスを経験した人類は、温暖化対策の新たな局面を迎えていると言えそうです。
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(https://www.toshibatec.co.jp/products/office/loopsspecial/blog/20201120-50.html)
4.国際的枠組み
(1)気候変動枠組条約
gooddoマガジンの「気候変動枠組条約内容とは?締結されるまでの背景や経緯を解説」(2020年1月30日掲載[2020年12月1日更新]))と題する記事では、「気候変動枠組条約とは?」という見出しの下に、以下のように記載されています。
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気候変動枠組条約 |
この気候変動枠組条約の最大の目的は温室効果ガスの削減です。大気中の温室効果ガスの安定化を目的に、地球温暖化がもたらす様々な悪影響を防止するため国際的な枠組みを定めるために採択されました。
全締約国の義務として、温室効果ガス削減計画の策定と実施、そして排出量の実績公表が課されています。
さらに日本などの先進国の追加義務としては、途上国への資金供与や技術移転の推進なども含まれます。これは共通だが差異ある責任(CBDRRC :Common But Differentiated Responsibilities)という考えに基づいており、先進国は途上国に比べて重い責任を負うべきとされています。
京都議定書 |
気候変動枠組条約を達成するため、2020年までは京都議定書を具体的な枠組みと定めてきました。これは当時の気候変動枠組条約締約国のみ署名と締結が可能であり、気候変動枠組条約を脱退すれば京都議定書も脱退すると定められています。
主には先進国のみ条約上の数値目標を伴う削減義務負うものとされ、2008~2012年の第一約束期間で日本は6%、EUは8%、ロシアやオーストラリアに数値目標を課すものでした。
しかし1997年に採択したものの2001年にはアメリカが離脱、2012年にはカナダが議定書から脱退したことや、第二約束期間における関連規定の採択途法定期継続性の問題、キャリーオーバーの規定などから、未発効となっています。
気候変動枠組条約の歴史的背景 |
気候変動に関する国際的な歩みは、この条約が定められた1992年から始まっています。条約に基づいて国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)が1995年から毎年開催されるようになり、温室効果ガスの削減に向けて議論が行われてきました。
そんな中で1997年に開催されたCOP3で締結されたのが京都議定書です。2020年までの温室効果ガス削減の目標を定める枠組みでした。
しかし先述した通りアメリカの離脱やカナダの脱退、そもそも枠組みとして気候変動問題に有効に対処できるのかという疑問が声として挙がるようになりました。・・・(中略)・・・
パリ協定とは |
このような状況の打開に向け構築されましたが、京都議定書に変わる新しい枠組であるパリ協定です。このパリ協定は歴史上初めて全ての国が温室効果ガス削減に取り組むことを約束した枠組みです。
そのポイントとしては世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追及しています。そのためできる限り早期に世界の温室効果ガスの排出量をピークアウトして、今世紀後半に人為的な温室効果ガスの排出と吸収源による除去の均衡を達成することが盛り込まれています。
法的拘束力を有し、先進国、途上国関わらず国別貢献を5年ごとに提出および更新し、先進国は総量削減目標を継続、途上国も時とともに全経済の削減と抑制目標を目指すとされています。
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(https://gooddo.jp/magazine/climate-change/6788/)
(2)今後の気候変動対策
久留米市環境審議会会長である藤田八暉久留米大学名誉教授が執筆した「第3回 地球温暖化対策の国際的取組」(久留米市役所HP〉市民環境講座[2021年06月28日09時30分更新)と題する記事では、「5.パリ協定を踏まえて加速する気候変動対策」という見出しの下に、以下のように記載されています。
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パリ協定の発効には55ヵ国以上が批准し、その排出量が世界の温室効果ガス排出量の55%に達する必要がありましたが、採択の翌年2016年10月5日にこの条件を満たし、同年11月4日に発効されました。・・・(中略)・・・
パリ協定の発効は、世界全体の温暖化対策が新たな段階に移ったことを意味します。温室効果ガス排出量が世界第1位と第2位である中国とアメリカの排出量を足すと全体の4割近くですが、他方で、我が国より排出量の少ない国の排出量を全て足し上げると全体の4割に達します。世界各国の排出量の割合では、開発途上国の排出量の占める割合が増加するなど京都議定書の締結時と比べて大きく変化しており、パリ協定が掲げる目標を実現するためには、主要排出国に限らず全ての国が削減に向けて努力する必要があります。パリ協定の実効性ある実施に向けて、全世界が協調して取り組みを進めていくことが求められています。
パリ協定の下、EUはもとより、世界全体で2050年までに脱炭素社会を実現するため走り出しています。アメリカも2021年1月に就任したバイデン大統領が、トランプ大統領時代に脱退したパリ協定から一転、復帰することを表明し、気候危機に対処すべく積極的な取り組みを進めています。国内外の有力企業も、気候変動をビジネスにとってのリスクと認識しつつ、さらなるビジネスチャンスとも捉え、さまざまな先導的な取り組みを進めています。
国連のアントニオ・グテレス事務総長は、2021年は気候変動との闘いにおいて運命を左右する一年になるだろうと警告しました。
2021年11月1日からイギリス・グラスゴーで開催されるCOP26では、各国が設けた2030年までの削減目標が議題となります。脱炭素社会への転換を目指す「パリ協定」の目標達成に向けた行動を加速させるため、締約国が一堂に会して議論します。イギリスのジョンソン首相は、COP26は言葉でなく行動、合意の場でなくてはならず、そのために絶え間ない努力が必要と訴えています。我が国では、菅首相が2020年10月に2050年までに脱炭素社会を実現すると宣言し、2021年4月に「2050年目標と整合的で、野心的な目標として、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指す。さらに、50%の高みに向けて挑戦を続けていく。」と言明しました。COP26に向けて、世界各国においてさらなる気候変動対策の強化に向けて取り組みが加速しています。
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(https://www.city.kurume.fukuoka.jp/1050kurashi/2030kankyougomi/3005portal/4010column/2021-0625-1132-198.html)
5.結語
極端現象は地球規模で気候変動対策を講じることが急務でありますが、国や地域の利害を調整すべき国連が機能していない現状を打破するために、1972年に設立された国連環境計画(United Nations Environment Programme=UNEP)という機関の権限強化を期待します。そしてUNEP主導で、脱炭素社会の実現だけでなく、荒廃した自然環境の復元のために、土地の緑地化や大気や海洋の汚染物質を除去することが望まれます。