RMCA-リスクマネジメントの専門家による寄稿、セミナーや研修・講座などの情報

  1. 産業法務の視点から 平川博
  2. 113 view

第85回 変貌する報道機関

1.はじめに
インターネットが普及して、誰でも不特定多数の人に向けて情報を発信することができるようになるにつれて、報道機関の存在感が薄れて来ています。これも時代の趨勢で、いずれは淘汰するであろうと推測する向きもあるでしょう。それとは逆に、日本新聞協会の「新聞倫理綱領」で謳われているように、「おびただしい量の情報が飛びかう社会では、なにが真実か、どれを選ぶべきか、的確で迅速な判断が強く求められている。新聞の責務は、正確で公正な記事と責任ある論評によってこうした要望にこたえ、公共的、文化的使命を果たすことである」と考える人もいるでしょう。
ところで、報道機関=マスコミと思っている読者がいらっしゃると思いますが、マスコミには娯楽と報道の両面があり、娯楽と報道は目的が異なるので、本稿では報道に焦点を絞って考察することにします。

2.新聞の変貌
(1)発行部数の減少
①一般紙
日本新聞協会の「新聞の発行部数と世帯数の推移」(各年10月、新聞協会経営業務部調べ)によると、一般紙の発行部数が2000年は47,401,669部であったのに対して、2020年は32,454,796部でした。この20年間で約30%も減少しました。
このような状況について、経済ジャーナリストの磯山友幸氏が執筆した「新聞部数が1年で222万部減…ついに『本当の危機』がやってきた」(現代ビジネス[2019.1.24配信])と題する論説では、以下のように記載されています。

**********************************************************************************************************

このままでいくと、本当に紙の新聞が消滅することになりかねない状況なのだ。
若い人たちはほとんど新聞を読まない。新聞社に企業の広報ネタを売り込むPR会社の女性社員でも、新聞を1紙もとっていない人がほとんどだ、という笑い話があるほどだ。
学校が教材として古新聞を持ってくるように言うと、わざわざコンビニで買って来るという笑えない話もある。一家に必ず一紙は購読紙があるというのが当たり前だった時代は、もうとっくに過去のものだ。

**********************************************************************************************************

(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59530)

②全国紙
ガベージニュースの「新聞の販売部数などの推移をグラフ化してみる(2019年前期まで)(最新)」(2020/02/21 10:50更新)と題する記事では、国内主要5紙(読売新聞・朝日新聞・毎日新聞・日本経済新聞=日経新聞・産経新聞)の発行部数について、以下のように記載されています。

**********************************************************************************************************

最初に示すのはデータが取得できる2005年前期以降の5紙における朝刊の発行部数。産経新聞は一部データが欠けているが、可能な限り補完している。

**********************************************************************************************************

(http://www.garbagenews.net/archives/2194431.html)

③地方紙
DIAMOND onlineの「地方紙『販売部数減少率』ランキング、西日本新聞と北海道新聞の苦境に迫る」(2020.9.24 5:00配信)と題する記事では、以下のように報じられています。

**********************************************************************************************************

少子高齢化に活字離れ、地方経済の疲弊……。吹き荒れる強い逆風の中、地方紙は右肩下がりの部数減少にあえいでいる。ダイヤモンド編集部では、日本ABC協会にデータを提出している地方紙41紙の2015~20年の販売部数の減少率をランキングした。…(中略)…
ランキングを俯瞰すると、過半数に相当する21紙で減少率10%以上という惨憺たる結果となった。41紙の合計では5年間で182万部超が消失した計算となっている。
そして、ぶっちぎりのワースト1位となったのは、17年に創刊140周年を迎え、かつて沖縄県を含む九州地方全県と山口県で新聞を発行していた五大ブロック紙の一角、西日本新聞(福岡県)だ。

**********************************************************************************************************

(https://diamond.jp/articles/-/248908)

(2)電子版
「メディアポ」というマスコミ情報サイトの「【新聞の電子版を比較!】機能や購読料金まとめ」と題するウェブページでは、「ネットニュースが増えても、情報の正確さや独自取材の質では新聞の電子版が信頼できる、と感じる人は多いのではないでしょうか。全国紙5紙はすべて、紙媒体と電子版の両方でニュースを提供しています」という冒頭の文章に続いて、「新聞(全国紙)の電子版・機能比較」という見出しの下に、以下のように記載されています。

**********************************************************************************************************

■「日経電子版」は紙媒体の約3倍もの豊富な記事数
日経電子版の大きな特徴は、毎日約900本と、紙媒体の約3倍もの記事が読める点です。独自記事では、ニュース速報やマーケット情報など、紙媒体では追い切れないリアルタイムの情報を提供。…(中略)…
Web版ならではの動画コンテンツも配信していますので、ニュースの臨場感もしっかり伝わるコンテンツ構成です。紙媒体のニュースで掲載しきれなかった詳しいデータや分かりやすいイラストを用いた解説もあり、その日のニュースをより深く知ることもできます。…(中略)…

■「読売プレミアム」は紙媒体とセットでのみ利用可能
読売プレミアムは、他の4紙と違い、紙媒体とセットでのみ利用可能な点が大きな特徴です。新聞と電子版のセット料金では、全国5紙の中で最安の料金となっています。…(中略)…
紙媒体では見られない独自コンテンツも豊富です。「エンタメ報知」や「セレクト婦人公論」、小説などエンターテインメント方面の情報も楽しめます。また、「読売プレミアム」購読の特典として、人気チケットの先行抽選販売やイベント・プレゼントなどの企画も盛りだくさんな点も特徴的です。

■「朝日新聞デジタル」は幅広い年代に対応
朝日新聞は、「朝日新聞デジタル就活割コース」という就活生用のコースを用意している点が大きな特徴です。紙面の内容も、子どもや育児中のママ向けコンテンツ、「天声人語」など人気の連載も数多く掲載し、幅広い世代が興味を持って読み続けられるような工夫があります。
同時アクセス数も4まで可能。紙の新聞を家族で読むような感覚で、電子版も家族で楽しめるようになっている点も魅力です。…(中略)…

■「デジタル毎日」は他に読める刊行物が魅力
「デジタル毎日」は、豊富なニュースを素早く、分かりやすく伝えるという電子版としての機能をしっかり備えている電子版です。…(中略)…
「デジタル毎日」の大きな魅力は、「ウォール・ストリート・ジャーナル」や「週刊エコノミスト」「サンデー毎日」などの雑誌デジタル版が無料で読み放題という点。毎日新聞のニュースと合わせて楽しめます。
同時アクセス数は全国5紙の中では最大の5で、1契約で家族全員が楽しめるよう配慮されています。過去記事の検索も過去5年分まで検索可能で、基本機能も充実している印象です。…(中略)…

■「産経電子版」はリーズナブルかつシンプルな機能
「産経電子版」の大きな特徴は、他の電子版に比べて「紙面を楽しむ」点にこだわり、シンプルな機能とリーズナブルな購読料金を設定していることです。
紙面のバックナンバー閲覧は、他紙が過去30日以下なのに対して90日間まで可能。

**********************************************************************************************************

(https://www.homemate-research.com/bc185/tvlog/166/)

このように、全国5紙だけでなく、地方紙や業界誌も、電子版が紙媒体より情報伝達の速さや情報量の多さという点で遥かに優れていることに着眼して、読者の新聞離れを引き留めようと腐心していることが窺われます。

(3)新聞ニュースサイト
殆ど全部と言って良いと思われますが、新聞の名称を検索すると、それぞれのニュースサイトがヒットします。これはインターネットの利用者であれば誰でも無料でアクセスすることができるサイトで、新聞の紙媒体と電子版を繋ぐポータルサイトでもあります。
ところで、同じ内容のニュースでも、新聞によって料金プランが異なっているため、無料の場合もあれば、全部又は一部が有料となる場合もあります。これは無料の記事を多くしてアクセス件数を増やす方が良いのか、それとも有料の記事を多くして電子版の定期購読に誘導する方が良いのか、という営業戦略の違いを反映しているように見受けられます。

3.ラジオの変貌
(1)リスナー数の推移
テレビが普及して1970年代に1世帯1台と言われるようになった頃から、ラジオのリスナー数は激減しています。NHK放送文化研究所の吉田理恵・中野佐知子両研究員が執筆した「生活時間調査からみたメディア利用の変遷と現在~ 2005年国民生活時間調査より~」【『放送研究と調査』2006年6月号、64頁以下】と題する報告書によれば、1日の内にラジオを聴く人の割合は14%(因みにテレビを観る人は90%)で、聴いている時間の長さは2時間30分となっています。

(https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2006_07/060706.pdf)

それから15年後にNHK放送文化研究所世論調査部の中山準之助氏ら4氏が執筆した「テレビ・ラジオ視聴の現況~2019年11月全国個人視聴率調査から~」【『放送研究と調査』2010年3月号、90頁以下】と題する報告書によれば、1週間の内にラジオを聴く人の割合は、2009年には42.8でしたが、2019年には31.7%となっています。

(https://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/pdf/20200301_11.pdf)

このように、ラジオのリスナー数は減少傾向にありますが、「ながら族」の名残で、運転や家事をしながらラジオを聴いている人がいます。
それどころか、昨年来、コロナ禍対策として講じられている外出自粛やテレワークにより、在宅時間が増えるにつれて、ラジオリスナーも増加しています。

(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000186.000043465.html参照)

(2)従属化
NHKラジオの受信料は、昭和43年4月から廃止され、誰もが、いつでも無料でラジオ放送を聴くことができます。これはテレビが主で、ラジオを従とする取り扱いを如実に物語っていて、NHKに限らず、ラジオ局に勤めている人が、テレビ局は羽振りが良くて羨ましく思うのは、よくある話です。
ところで、ラジオの受信機としてラジカセやコンポのような複合機が普及していることから、リスナー側の意識もラジオをおまけのように軽んじていることが窺われます。

(3)災害時の切り札
災害で停電が起きた時、最も頼りになるのはラジオであることを実感した人が多いでしょうが、「radiko news(ラジコニュース)」というサイトの「ラジオはなぜ災害時に強いのか? テレビとは違う“ラジオならではの特性”とは」と題するウェブページでは、「ラジオはなぜ災害に強いのか〜テレビとの違い〜」という見出しの下に、以下のように記載されています。

**********************************************************************************************************

■メディアとしてのラジオの特性
音声のみの放送であるラジオは、テレビよりも番組の編成が容易であり、災害の状況に応じて臨機応変に対応することができます。
また、テレビはザッピング(視聴者がテレビのチャンネルを頻繁に切り替える行為)されることが多く、災害時は同じ情報を繰り返し伝える傾向がありますが、ラジオでは行政が発表する公的な災害情報に加えて、番組の個性や放送エリアにあわせて様々な情報が提供されています。

■端末としてのラジオの特性
家庭用電源が必要なテレビに対して、電池・手回し・ソーラーにより停電時でも充電でき、持ち運びができる「携帯性」の高さがラジオの特徴です。また、ラジオは購入しやすい価格の商品が多く、ライトやサイレンなど災害時に役立つ機能が付いている商品も増えています。
万が一、避難所で生活を送る際も、ラジオを持っていれば必要な情報を手軽に取得することができるため、防災グッズのひとつとして備えておくことに適しています。

**********************************************************************************************************

(https://news.radiko.jp/article/edit/39689/)

(4)ネットラジオ
「フリーソフト100」というサイトの「無料インターネットラジオ」(2020年09月15日更新)と題するウェブページでは、「インターネットラジオとは」という見出しの下に、以下のように記載されています。

**********************************************************************************************************

ネットラジオとも呼び、インターネットで楽しむことができるラジオです。
AMやFMなどのラジオ放送局などが提供していたり、個人でネットラジオ局を開設して放送している番組もあります。
ネットラジオには音楽番組を扱ったり、トーク中心だったりラジオ番組によって内容は異なります。
配信形態も録音したものを放送する「オンデマンド配信」だったり、リアルタイムに番組を放送する「ライブ配信」だったり、ネットラジオ放送局によって様々なカラーが出ています。

**********************************************************************************************************

(https://freesoft-100.com/web/netradio.html)

(5)スマホで聴けるラジオ
アイティメディアHPの「『ラジオが聞けるスマホ』おすすめ3選 防災グッズとしても注目【2020年最新版】」(2020年07月14日公開)と題するウェブページでは、「ラジオが聞けるスマホ選び:普段ならアプリで聞くのが便利ですが……」という見出しの下に、以下のように記載されています。

**********************************************************************************************************

スマホでラジオを聞く場合、普段ならネット経由で番組を配信しているアプリを使うのが便利です。民放なら「radiko(ラジコ)」、NHKなら「らじる☆らじる」があると、国内の主なラジオ放送はほとんどカバーできます。…(中略)…
しかし大きな災害が発生すると、携帯電話の基地局やWi-Fi環境を提供する設備や回線が被災してネットにつながらなくなる場合があります。ネット接続できないとアプリやWebサービスでラジオを聞くことはできません。もちろん、メールやSNS、通話もできなくなります。…(中略)…

■ラジオが聞けるスマホ選び:対応機種は少なめ iPhoneは非対応
ラジオが受信できるスマホの機種はあまり多くありません。ネットが使える普段ならラジオアプリで聞くほうが利便性が高く、わざわざ受信機能を持たせたスマホは少数です。例えばユーザーが多いiPhoneはシリーズ全般で対応していません。そのため選択肢はAndroidのみとなります。Androidの中でもハイスペックな機種ではなく、ミドルクラスの機種が比較的対応している傾向です。…(中略)…

■ラジオが聞けるスマホ選び:対応はFM放送のみ 利用にはイヤフォンマイクを忘れずに
現在販売されているラジオ受信ができる機種に共通するのは、FM放送のみ対応という点です。またワイドFMに対応した機種がほとんどですので、その場合はAM局の番組も聞くことができます。
スマホでラジオを聞く場合に1つ注意したいのが、イヤフォンマイクの利用が必須なこと。これはイヤフォンのケーブルをラジオアンテナにするためで、無いとほぼ聞こえません。

**********************************************************************************************************

(https://www.itmedia.co.jp/fav/articles/2007/14/news129.html#)

4.テレビの変貌
(1)視聴率の推移
「現代ビジネス」の「日本人の『テレビ離れ』はいつはじまったのか?データが明かす真実」(2018.3.6配信:『週刊現代』2018年2月10日号)と題する記事では、以下のように記載されています。

**********************************************************************************************************

テレビ業界には、「総世帯視聴率」(HUT)という用語がある。これは視聴率調査の対象となっているすべての世帯のなかで、テレビをつけていた世帯の割合を示す。…(中略)…
調査を開始した’63年のゴールデン帯(19時~22時)のHUTは75.4%。すでにテレビを見る習慣ができていた。…(中略)…同年初めて日米間のテレビ衛星中継実験が成功し、11月23日にはケネディ米大統領の暗殺事件の衝撃的な映像にみな釘付けとなった。…(中略)…
’70年代末まで、HUTは全日帯、ゴールデン帯とも上昇もしくは横ばいで推移していく。…(中略)…
’79年に着脱できるリモコン付きテレビが登場。’80年代にこれが普及するにしたがって、視聴率争いは激化した。…(中略)…
’65年から’85年までの20年間で全日帯のHUTは約8%も上昇している。…(中略)…一方、’80年代から、ゴールデン帯のHUTが下がっていく。これはバブル景気が影響している。それまで夜はテレビを見ていた層が外出するようになり、在宅率が下がったことが要因である。…(中略)…
’93年には、日本中が沸いた皇太子と雅子妃の結婚の儀が行われ、関連番組が注目を集めたこともあり、ゴールデン帯と全日帯のHUTは回復。…(中略)…
だが、これがピークであり、ゴールデン帯はもちろん全日帯もついにこの年以降、ゆるやかに下落することになる。原因の一つは女性の社会進出、共働き家庭の増加。核家族化も進み、昼間にテレビを見る世帯が少なくなったのだ。そしてもう一つの理由は、娯楽の多様化が’90年代半ばから進んできたことだ。まずレンタルビデオが一般化し、自宅でビデオソフトを楽しむ層が増えたこと。…(中略)…
さらに’95年には「ウィンドウズ95」が日本で発売され、インターネットの時代が本格的に始まる。’00年ごろからはネットの使用料金が定額制となり、動画コンテンツも増えて、娯楽としての役割を担うようになっていく。…(中略)…
そして、追い打ちをかけたのが、スマホの登場である。’08年には「iPhone」が日本で発売。総務省の調査によれば、’13年にはスマホを持つ世帯の割合は6割を超えている。人々はPC、タブレット、スマホで、お気に入りの動画を好きなときに楽しむようになった。
HUTのグラフを見れば、ゴールデン帯にテレビをつけている世帯は、’93年からの15年間で10%も下落している。…(中略)…
夜は自宅に帰ってテレビをつけ、家族で食卓を囲む。翌日は職場や学校でテレビの話をする。そんな習慣は家族の形や娯楽が多様化したいまはほとんど残っていない。
現在、夜にテレビをつける世帯はまだ6割いる。だが、その数が今後も下がり続けることは明らかだろう――。

**********************************************************************************************************

(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/54340)

(2)デジタル化
①理由
2011(平成23年)にテレビのアナログ放送が終了して、強制的にデジタル放送に切り換えられました。その目的について、総務省HPの「なぜ放送をデジタル化するの?」と題するウェブページでは、以下のように記載されています。

**********************************************************************************************************

■多様なサービスを実現
現代の生活のなかで最も身近な「テレビ」もテレビのデジタル化によって、今までにない多様なサービスを実現します。
地上デジタルテレビ放送では、デジタルハイビジョンの高画質・高音質番組に加えて、双方向サービス、高齢者や障害のある方にやさしいサービス、暮らしに役立つ地域情報などが提供されています。また、携帯電話、移動体向けのワンセグサービスも開始されています。…(中略)…

■世界の潮流
地上デジタルテレビ放送は1998年にイギリスで最初に開始されました。現在は欧米ではアメリカ、ドイツ、イタリアなど、アジアでは韓国、中国、ベトナムなど、世界の40以上の国と地域で放送されており、デジタル放送は世界の潮流となっています。

■情報の基盤
地上デジタルテレビ放送対応テレビをネットに接続し、より多くの情報を得ることができます。テレビをデジタル化することで、誰もが情報通信技術の恩恵を受けられるような社会にすることは国の重要な未来戦略であり遅らせることのできない施策です。

**********************************************************************************************************

(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/dtv/kihonjoho/kihonjoho2.html)

ここで留意すべきことは、アナログよりも高画質・高音質になっただけでなく、テレビが多機能化したということです。この点について、「ビデオリサーチダイジェスト」というサイトの「デジタルメディア教室(4)~デジタル放送時代の視聴率~」(2017年05月22日掲示)と題するウェブページでは、「デジタル放送時代の変化とは?」という見出しの下に、以下のように記載されています。

**********************************************************************************************************

放送のデジタル化について語られる時、そのキーワードには「多チャンネル化」「高画質化・高音質化」「高機能化」の3つがあがってきます。これに…(中略)…通信や家電などの変化を加味すると、デジタル放送時代のテレビの特徴は大きく変わっていくことが予見できます。それは、これまでのテレビが「不特定多数に」「同じ情報を」「一度に」「一方向で」送り放っていたのに対し、デジタル放送時代のテレビでは従来の特徴に加えて「特定個人に」「異なった情報を」「各々が知りたい時に」「双方向で」やりとりできるようにもなることだと考えられます。

**********************************************************************************************************

(https://www.videor.co.jp/digestplus/media/2017/05/7707.html)

②視聴率の新指標
ジャーナリストの今井良氏が解説する「『若者はテレビを見ない』は本当か?新しい視聴率の指標でわかること」(現代ビジネス[2018.10.20配信])と題する記事では、「テレビ視聴率の新指標」という見出しの下に、以下のように記載されています。

**********************************************************************************************************

日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京の民放キー局5局は今年【引用者註:2018年】4月から新しい視聴率の取引指標を導入している。その新しい視聴率の計測指標が「P+C7(ピープラスシーセブン)」である。Pとは「番組」を指し、Cは「CM」、そして7は「7日間以内視聴」を指している。東京民放キー局5局は次の2点が大きな柱としている。

1 「取引指標を従来の世帯視聴率から個人全体視聴率に一斉移行する」
番組の「世帯視聴率」に代えて「個人全体視聴率」(略称はALL)を採用する。現行の関東地区900の調査サンプル世帯における受像機セットイン数の代わりに、同じ世帯の4歳以上の約2300人全員の視聴状況を基に視聴率を算出する。

2 「タイムシフト視聴率をスポットCMセールスに反映する」
番組のリアルタイム個人全体視聴率(ALL)に、放送後7日間以内のタイムシフトCM枠平均視聴率を加算し、スポットCMの在庫量を決める。
そもそも日本では、1961年に機械式視聴率調査が始まって50年以上、視聴率と言えば「世帯視聴率」だった。そして番組と番組の間に放送される15秒~30秒のCM、いわゆる「スポットCM」の取引指標も、この世帯視聴率が用いられてきた。さらに世帯視聴率は番組制作者を一喜一憂させる「成績表」の役割も果たしてきたのだ。
東京キー局5社が手を携えて、その長い伝統を打ち破ったのには理由があった。テレビを視る人が「高齢化している」傾向を各種調査でつかんでいたからだ。P+C7の導入で世帯視聴率による計測では得ることができなかったデータを手に入れることができるようになる。

**********************************************************************************************************

(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57788)

③セグメント方式
㈱コムテックHPの「地デジとは」と題するウェブページでは、地デジのセグメント方式について、以下のように記載されています。

**********************************************************************************************************

地上デジタル放送(地デジ)は、今までのアナログ放送と違いデジタル信号で電波を送ります。今までのアナログ放送とは違いゴーストやノイズの少ない高画質で高音質なデジタル映像と音声を視聴できます。

■12セグとワンセグの違い
地上デジタル放送6MHzの帯域を13セグメントに分けて送信する方式です。
地上デジタル放送は13セグメントのうち12セグメントを使用し、残りの1セグメントだけを使って送信するのがワンセグ放送です。

■12セグのいいところ
地デジ(12セグ)放送は、1秒間に30フレームの映像を受信できるからキレイで迫力ある映像を楽しむことができます。…(中略)…また解像度はワンセグ放送の320×240に対し12セグ放送は1920×1080(ハイビジョン)とキメの細かい綺麗な映像を映します。【画像省略】

■ワンセグのいいところ
ワンセグは地デジ(12セグ)放送に比べて、弱い電波でも受信できるため、広いエリアで受信できます。このため、地デジ(12セグ)放送が視聴しにくいエリアでも、ワンセグなら視聴が可能でより安定した受信を行います。ニュース番組など緊急時の情報をしっかりと受信できます。

**********************************************************************************************************

(https://www.e-comtec.co.jp/tuner/digital.html)

(3)インターネットと連携
①NHK
NHKの「よくある質問集」というサイトでは、「Q.NHKのインターネットサービスの考え方について」という質問に対する回答という形式で、以下のように記載されています。

**********************************************************************************************************

〇NHKのインターネット活用業務は、放送を補完してその効用、効果を高め、国民共通の財産である放送番組等を広く国民に還元するなど、放送法15条に掲げられたNHKの目的を達成するために実施しています。…(中略)…

◆受信料を財源として提供するコンテンツについて
NHKは、放送法(20条2項2号、3号)に基づき、以下2種類のコンテンツを提供しています。
(1)NHKの放送番組そのもの、または番組の理解の増進に資する情報(2号受信料財源業務)
(2)NHKが放送番組等を他の事業者に無償で提供するサービス(3号受信料財源業務)
このうち(1)のサービスは、NHKのウェブサイトまたはNHKが提供するアプリケーション、または他の事業者のウェブサイトまたはアプリケーションを通じて行います。

◆有料で行うサービスについて
(1)NHKオンデマンド(2号有料業務)
NHKが放送した番組等を、日本国内限定でPCや、スマートフォン、タブレット等に有料でネット配信する動画サービスです。

(2)ビデオ・オン・デマンド(VOD)事業者への番組提供(3号有料業務)
NHKが放送した番組等を、ビデオ・オン・デマンド(VOD)事業を行っている対象事業者から求めがあった場合、有料で提供します。

**********************************************************************************************************

(https://www.nhk.or.jp/faq-corner/5internet_service/01/05-01-01.html)

②民放
ACC(ALL Japan Confederation of Creativity)HPの「『TVerの研究』~民放の抱える課題と『TVer』のサービスに関して~」と題するウェブページでは、以下のように記載されています。

**********************************************************************************************************

ACC技術委員会では、2016年6月下旬に、『TVer』についての研究会を行いました。…(中略)…
『TVer』は在京民放5社による、「キャッチアップサービス」である。キャッチアップサービスとは、放送局が放送済みの番組を、一定期間公式に動画配信するサービス、と定義されている。『TVer』は2015年10月スタート。スタート時は各局10番組ずつ程度の提供であったが、2016年4月には90番組くらい【引用者註:2021年4月では約300番組】のボリュームに成長している。…(中略)…

■まとめ:『TVer』の目的
・タイムシフト視聴、PCやスマートデバイスによるユーザーのTVコンテンツへのアプローチの形が変わりつつあることへの対応。
・ネット上でTVコンテンツの視聴をしてもらうことにより、本来のリアルTVコンテンツへの回帰をうながす。
・インターネット環境の上で、TV放送・TVCM同様の安心安全なコンテンツを提供する場所を作る。
・違法動画アップロードの撲滅

**********************************************************************************************************

(http://www.acc-cm.or.jp/activity/committee/tver/)

(4)ワイドショー化
①娯楽化傾向
減少している地デジのリアルタイム視聴者の関心を惹こうとして、一方ではワイドショーが増加し、他方ではニュース番組がワイドショー化しています。このような現象について、今から丁度20年前の2001年度に富山大学人文学部の社会学分野を卒業した大西美里氏が執筆した「ニュースメディアの変容―その娯楽化傾向をめぐる一考察―」と題する卒業論文では、「おわりに」という見出しの下に、以下のように記載されています。

**********************************************************************************************************

まず、内容面に関しては、政治・経済・外交といった堅い内容よりも、視聴者の興味を惹きつける身近な、生活、地域ニュースといった内容の比率が大きくなること、つまり、ソフトニュースの割合が高くなることが確認された。これは、97年においても同様に確認された点であったが、特にハードニュースが減少しソフトニュースが増加していること、人間に焦点を当てたニュースの増加、国外ニュースの増加が若干見られた。また、国外ニュースにおいても人間に焦点をおいたものが増加しているのではないかと推測される。これは人々によりドラマ性のあるニュースを提供しているといえるだろう。NHKにおいては、民放ほど「ソフト」化は進んでいなかった。しかし、NHKにおいても、その傾向は若干であるが確認され娯楽化の波に反しているわけではない。
次に、形式面に関しても97年同様に、娯楽化の傾向が引き続き見られ、リードニュースが減少し、ビデオ構成が増加するという伝達形式の複雑化や、映像、音響、テロップの多用などさらにこの傾向は強まっていることが窺える。そしてそれは、NHKより民放に、夕方の番組よりも夜の番組に、より顕著に表れていることが確認されている。NHKと民放の違いにおいては、BGMの使用が一般的であるがNHKではほとんど使用されないこと、民放では理解可能な日本語をわざわざ文字化し、視聴者の注意を方向づけるテロップを使用するなどが大きな特徴である。夕方と夜の番組の違いにおいては、映像・音響に関して夕方よりも夜の方が多く使用されていたことがあげられる。

**********************************************************************************************************

(http://www.hmt.u-toyama.ac.jp/socio/lab/sotsuron/01/onishi.htm)

②ワイドショーばやり
「Japan In-depth」というウェブメディアの安倍宏行編集長が執筆した「ワイドショーがテレビを殺す」(2018/1/4投稿)と題する記事では、「勢いづくワイドショー」という見出しの下に、以下のように記載されています。

**********************************************************************************************************

ワイドショーが止まらない。朝もはよから夕方のニュースの時間までほとんどワイドショーだ。朝早めに出勤するサラリーマンは見ていないだろうが、家にいる主婦やご年配の方々は延々とワイドショーから流れてくる情報に浸っている。
情報番組などとテレビ局は言っているが、…(中略)…女性週刊誌のテレビ版みたいなものだ。それが10数年ほど前から、「脱ワイドショー」と銘打って、政治やら経済やら国際などのジャンルのニュースも扱うようになった。
それはそれで、心意気や良し、だったのだが、最近どうもおかしなことになっている。政治・経済・国際ニュースを扱うにしても公平性を欠いたり、表面をなぞったりしているだけの場合が多過ぎるのだ。
そして、コメンテーターの面々。前からと言ってはそれまでだが、人選が話題性ありきで何故その人がその話題で座っているのかちっともわからないことがまま、ある。…(中略)…総理大臣の任命責任はがんがん問うのにダブルスタンダード極まりない。それをおかしいとも思わない視聴者もどうなのか?

**********************************************************************************************************

(https://japan-indepth.jp/?p=37877)

(5)ニュース専門チャンネル
地デジのニュース番組が減少しても、テレビでニュース番組を観たいと思っている視聴者のために、四六時中ニュースだけ放送するニュース専門チャンネルが登場しています。
「メディアポ」というサイトの「様々なテレビ局」というカテ中、「ケーブルテレビとは」と題するウェブページでは、「24時間放送体制となったテレビ局のニュース番組」という見出しの下に、以下のように記載されています。

**********************************************************************************************************

24時間ニュースは、アメリカのニュース専門放送局「CNN」が1980年にスタートさせたのが始まりです。日本ではそれから約20年遅れるかたちで、ニュースを24時間、専門的に放送するチャンネルがスターとしました。時期を同じくして世界各地でも24時間ニュース・チャンネルが続々と放送を始め、現在では先進国のほとんどがニュース専門放送局を抱えています。日本では、「日テレNEWS24(日本テレビ)」「TBSニュースバード(TBSテレビ)」「日経CNBC(日本経済新聞社、CNBC-ASIA)」「テレ朝チャンネル2(テレビ朝日)」「CNNj」「BBCワールド」などが放送されており、いずれも各局の報道局のネットワークを活かして、さまざまな視点でニュースを報道しています。
こうした24時間の報道体制が整ったことで、日本のテレビ局各局は報道の即時性を高めるとともに、インターネット・ニュースなどにも負けない報道力を身につけました。さらに新聞社とも連携しながら、より正確な情報の提供を確立したのです。

**********************************************************************************************************

(https://www.homemate-research-tv-station.com/useful/12322_facil_025/)

5.結語
報道機関としての新聞社や放送局は、取材能力が優れていて、信頼できる情報を読者や視聴者に提供することが本来の役割ですが、通信技術の発展と共に、存在感が薄れて来ています。しかし誰でも発信し、誰でも無料で受診できるネット上の情報は玉石混交で、ガセネタの山の中から真実を発見することは容易でありません。それだけに世の中の政治や経済や出来事を、より速く、より正確に知りたいという国民の知る権利という観点から、産官学が連携して、公共放送であるNHKだけでなく、民放(及び系列の新聞社)も国民の期待に応えられるような報道体制を構築することが望まれます。

産業法務の視点から 平川博の最近記事

  1. 最終回 人類滅亡直前の危機

  2. 第85回 変貌する報道機関

  3. 第84回 とんでもない自動車運転

  4. 第83回 運転免許不要の車

  5. 第82回 耐え難い睡魔との闘い

最近の記事

2024年3月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031
PAGE TOP