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  1. ビジネスマン/地政学入門 相馬清隆
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第3回目日本を取り巻く地政学リスク

『ビジネスマンの為の地政学入門』
~地政学の視点でニュースを見る~

今年もはや8月、2017年日本を取り巻く“地政学リスク”は確実に増大している。だが、今年前半はいわゆる“もり・かけ”問題と言われる森友学園、加計学園の“学園もの”で国会質疑が延々と繰り返された。その結果安倍内閣の世論調査による支持率は東京都議選後の7月大きく下げ、各社30%台へと急降下、支持と不支持が各社逆転し8月に内閣改造を行った。

国内ではそんな“不毛”な議論が繰り返され、貴重な国会質疑の時間を浪費している間も日本を取り巻く国際環境は待ってくれない。隣国、北朝鮮では今年に入り日本の国会が“もり・かけ”問題でお祭り騒ぎをしている間に、これだけのミサイル実験を国連の制裁決議があるにも関わらず敢行している。

・2017年2月12日ムスダン発射
・2017年3月6日4発のミサイル発射、
・2017年4月5日ミサイル発射
・2017年4月16日ミサイル発射失敗
・2017年4月29日ミサイル発射失敗
・2017年5月14日弾道ミサイル発射
・2017年5月21日弾道ミサイル発射
・2017年5月29日弾道ミサイル発射
・2017年6月8日弾道ミサイル発射
・2017年7月4日弾道ミサイル発射
・2017年7月28日弾道ミサイル発射

もはや、年中行事である。この繰り返されるミサイル発射実験は北朝鮮のミサイル能力が確実に上がっていることを意味する。それは普通に考えて日本の安全保障にとっては大問題であるはずだが。。。しかしながらミサイルが北朝鮮から発射される度に、日本の報道では「アメリカの出方は・・」「トランプ大統領が・・」「韓国が、中国が・・」といった具合である。

これは平和ボケと言われて久しい日本ではあるがもはや他人事、もしくはどこか遠くの国の出来事で自分たちには関係のない出来事だと思ってしまっているのではないか。もしかしたら多くの日本人は“ゲーム”か何かと勘違いしているのかもしれない。国家の危機や安全保障、自国防衛に対する感覚が我々日本人は戦後“麻痺”してしまっているのだろうとしか思えない。

また、今年に入っての中国漁船の尖閣諸島沖の領海侵犯はもはや数えきれない、こちらも“日課”と言ってもいい状態になっている。すでに新聞、テレビではその事実さえも伝えない。8月16日には『中国が尖閣諸島で漁業解禁』とのニュースが入ってきたが、まさにやりたい放題である。
これは逆さ地図と言われ、通常の我々が見る北を上にした地図とは違う地図である。中国政府は地政学的見地から日本を見るときはこういった地図を使うとも言われている。この地図を見ると中国が太平洋へ進出する際に日本列島がいかに邪魔しているかがわかるだろう。具体的に北の北海道方面と南の沖縄方面しか太平洋へ出る道はない。中国にとって尖閣諸島はまさに太平洋への入り口であり、海洋利権獲得のため絶対に欲しい島なのである。

ご存知の読者も多いことと思うが、この北朝鮮や中国の尖閣諸島への侵入以外にも実は日本が抱える地政学上の問題やリスクは多数ある。1952年から韓国に実効支配されている島根県の竹島問題、もちろんロシアとの北方領土問題、こちらはロシアのプーチン大統領と安倍首相が会談を重ねているがなかなか前には進みそうにない。日本以外の国にとって国土・国境問題は最重要課題なのである。そう簡単に解決はしない。

日本と日本人は昔から海に囲まれた島国に住んでいるためいわゆる“国境”意識が低いとも言われる。自然の海が国境になって守ってくれているからでありこれは昔、元寇の頃から変わらぬ日本人の意識でもある。

地続きの中国やヨーロッパ諸国は常に国境を意識して国防意識を高めてきた。少しでも国境防衛を緩めれば国土を侵される状況で安全保障を考えてきたのである。それを怠ればすなわち国家滅亡を意味するのであるからまさに命がけである。

現代は、ミサイルに代表される遠隔兵器、航空機などの戦略兵器の発達により昔のように日本列島を海が守ってくれる時代ではない。日本を取り巻く近隣諸国がすべて親日国ではない以上、常に地政学リスクは存在するという“現実”を認識することが今のすべての日本人に必要だろう。まだまだどう対処すべきかという議論までは到底及ばないのが日本人の地政学リスクに関する意識レベルだと言わざるを得ない。

今月の地政学用語
⑤【マージナルシー】・・大陸沿岸の縁海
⑥【シーレーン】・・有事に際して確保すべき海上航路

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