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  1. 産業法務の視点から 平川博
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第45回 台風シーズンに備えて

産業法務の視点から

平川 博氏

1. 台風シーズン

台風は春から秋にかけて、頻繁に発生しますが、1951年から2017年まで67年間の気象庁の統計資料によれば、発生も上陸も8月が最多で、9月もほぼ同数です。

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
発生 29 16 26 26 69 118 261 367 332 252 156 79
上陸 0 0 0 1 2 11 32 69 63 17 1 0

(https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/typhoon/index.html参照)

また、「Weathernews」というサイトの「イキナリ感が怖い『秋台風』とは? 気をつけたい3つの特徴」 と題するウェブページでは、「9月は台風の大災害が発生やすい時期」(2017/10/23 17:15ウェザーニュース)という見出しの下に、以下のように記載されています。

昭和以降、記録的な災害をもたらした台風は13個ありますが、そのうち11個が9月に接近・上陸した台風。9月に台風による大災害が多い理由は、「秋台風」の特徴にあります。
※気象庁「台風による災害の例」参照。日本に大きな被害を与えた台風の例として、昭和に死者・行方不明者数が1,000人を超えたものと、平成になってから死者・行方不明者数が40人を超えたものをリストアップ。

特徴1:本州を直撃しやすいコース

台風は太平洋高気圧の縁に沿って北上します。秋になって太平洋高気圧の勢力が弱まると、台風の通り道となる太平洋高気圧の縁がちょうど本州付近となり、台風が本州を直撃しやすくなります。

特徴2:速いスピード

台風は太平洋高気圧の縁に沿って北上した後、偏西風に乗って東寄りに進みます。偏西風に乗ると台風は一気にスピードアップ。秋は偏西風が本州付近まで南下しているため、偏西風に乗りやすく、夏の台風に比べ、本州付近を進むスピードが速くなります。スピードが速いと、台風の右側では台風そのものの風に加え、移動の速さも加わり、風がさらに強まります。
一方、夏は台風を流す風になかなか乗れず、長い間迷走することがあります。

特徴3:秋雨前線とのダブルパンチ

9月は秋雨前線が本州付近にあります。この影響で、台風接近前から暖かく湿った空気で秋雨前線が刺激され、大雨になることがあります。秋雨前線と台風で大雨が続き、大災害が発生しやすくなります。

(https://weathernews.jp/s/topics/201708/300225/)

2.今年の台風予想

ウェザーニュースの「今年の台風発生数は27個前後 長寿台風が増える傾向に」(2018/06/28 11:00発表)と題する記事では、以下のように記載されています。

今年の台風の発生は、7月から増え始め、9月をピークに本州付近への接近上陸の危険性が高まるとみています。また、秋頃は長寿台風となる傾向。不規則な進路をとることが多く、進路や雨風の影響に注意が必要です。…(中略)…

台風の発生位置

今シーズンは、6月以降、フィリピンの東海上で対流活動が活発になり、多数の積乱雲が発生しやすくなります。これらの雲が集まり、台風となります。そのため、台風の発生位置は、平年と同様にフィリピンの東海上となるケースが多くなる予想です。…(中略)…
シーズン前半は、フィリピンの東海上で対流活動が活発なため、その北側に当たる日本付近では下降気流が発生し、太平洋高気圧の勢力を強めます。今シーズンは、太平洋高気圧の北への張り出しが平年に比べると強まる予想です。…(中略)…

月別の台風進路

台風は高気圧の縁を時計回りに進むため、台風が発生した場合、平年よりもやや外回りの進路となり、7月~8月は沖縄から中国大陸へ向かう進路か、東シナ海を北上する進路が多くなりそうです。9月以降、偏西風が南下してくると、台風は本州付近へ向かう進路が多くなる予想です。関東に接近する可能性が高まるのもこのタイミングです。

(https://weathernews.jp/s/topics/201805/300055/)

この予報によれば、今年は例年よりも9月に台風が接近・上陸することが多くなりそうです。

3.台風による災害

気象庁HPの「台風による災害の例」と題するウェブページには、「台風によって引き起こされる災害には、風害、水害、高潮害、波浪害などがあります。もちろん、これらは単独で発生するだけではなく、複合して発生し大きな被害となることがあります」と記載されています。
(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/6-1.html)

①風害
同ページでは、「風害・高潮害・波浪害-平成16年台風第18号」という見出しの下に、以下のように記載されています。
この台風により、全国的に20m/s以上の非常に強い風が吹き、北海道では半数を超える気象官署で最大瞬間風速の極値を更新しました。この台風による被害は、西日本、北海道を中心に死者・行方不明者46人、負傷者1,399人、住家の損壊64,993棟、住家の浸水21,086棟に達しました。…(中略)…
死者の多くは強風によるもので、台風の接近中に屋根に上っていて飛ばされて転落したり、飛んできた瓦が当たったりするなど屋外での作業中に被害に遭う方が続出しました。もっと早く台風に対する備えを完了し、強風時には屋外へ出ないでいれば被害に遭わなかったのにと悔やまれます。【下線は引用者による】

(前同)

②水害
気象庁が平成27年9月14日に作成した「台風第18号等による大雨について」と題する文書(速報)では、「1.概要」という見出しの下に、以下のように記載されています。
台風第18号及び台風から変わった低気圧に向かって南から湿った空気が流れ込んだ影響で、西日本から北日本にかけての広い範囲で大雨となり、特に関東地方と東北地方では記録的な大雨となった。
9月7日から9月11日までに観測された総降水量は、栃木県日光市今市で 647.5 ミリ、宮城県丸森町筆甫で 536.0 ミリを観測するなど、関東地方で 600 ミリ、東北地方で 500ミリを超え、9月の月降水量平年値の2倍を超える大雨となったところがあった。特に、9月10日から11日にかけて、栃木県日光市今市や茨城県古河市古河、宮城県仙台市泉区泉ケ岳など関東地方や東北地方では、統計期間が10年以上の観測地点のうち16地点で、最大24時間降水量が観測史上1位の値を更新するなど、栃木県や茨城県、宮城県では記録的な大雨となった。

この台風及び南からの湿った気流の影響で、土砂災害、浸水、河川のはん濫等が発生し、死者7名、行方不明者15名となったほか、住家被害が生じた。その他、停電、断水、電話の不通等ライフラインに被害が発生したほか、鉄道の運休等の交通障害が発生した(平成27年9月14日消防庁とりまとめによる)。
(http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/bosai/report/2015/20150907/jyun_sokuji20150907-11.pdf)

この台風により死者は全国で20名も出ましたが、平成29年10月18日(水)10時00分に消防庁応急対策室が作成した「平成27年台風第18号による大雨等に係る被害状況等について(第40報)」と題する文書(速報)では、「死者の状況」という見出しの下に、以下のように記載されています。

【宮城県】
・栗原市において、軽自動車が流され、乗っていた40歳代女性が救出されたが、搬送先の病院で死亡を確認(9月11日)
・栗原市において、60歳代男性が行方不明となり、検索活動を実施していたところ、熊川で発見され死亡を確認(9月12日)

【茨城県】
・常総市において、50歳代男性が水田の中で倒れているのを通行人が発見、現場にて死亡を確認(9月13日)
・常総市において、水が引いた浸水地域から70歳代男性が発見され、現場にて死亡を確認(9月13日)
・境町において、40歳代男性が9月10日に自転車で自宅を出たまま行方不明となり、検索活動を実施していたところ、発見され現場にて死亡を確認(9月16日)
・常総市において、上記のほか災害弔慰金の支給等に関する法律に基づき、災害が原因で死亡したと認められた死者(災害関連死)12名

【栃木県】
・鹿沼市において、住宅に土砂が流入し、巻き込まれ行方不明となっていた60歳代女性が発見され、搬送先の病院にて死亡を確認(9月10日)
・日光市において、20歳代男性が作業中に排水溝に転落し、心肺停止状態になり、救出後収容先の病院で死亡を確認(9月11日)
・栃木市において、60歳代男性が水没した車から発見され、現場にて死亡を確認(9月13日)
(http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/bosai/report/2015/20150907/jyun_sokuji20150907-11.pdf)

4.消防機関の救助活動

同文書によれば、特に被害が大きかった茨城県では、死者が15名出ましたが、緊急消防援助隊の航空部隊による救助者数は272名、陸上部隊による救助者数は514名であり、また地元消防本部等の捜索救助活動による救助者数は956名に上ります。このように、国と地元の消防機関の活動により、1,500名以上の被災者が救助されたお陰で、死者は10分の1以下に抑えることができたのです。

ところで、これほど多くの人が救助されたことに対して、消防機関に感謝すべきであると同時に、被災者は逃げ遅れないように早く安全な場所へ移動すべきであったということを反省すべきでしょう。台風に限らず、空振りに終わっても良いから、早めに避難することが望まれます。

5.避難所生活の現状

避難所は学校の体育館や公民館の集会室等、大広間が指定されることが多く、一般的に以下のような問題点が指摘されています。

・プライバシーが守れない
・食事がまずくて、少ない。
・空調設備が無いか、あっても余り効果的でない。
・トイレが使いにくい(水洗トイレは断水のために使えないことが多い)。
・風呂に入れず、シャワーも無いことが多い。
・衣料品(特に下着)が不足している。
・医療や介護が手薄である。

このような悪いイメージが定着していることが、危険が差し迫っていても、避難所に足がなかなか向かない大きな要因になっているように思われます。
ところで、東日本大震災発生2年後の平成25年8月に、内閣府(防災担当)が「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」と題する文書を作成していますが、5年経っても殆ど改善されていません。

6.結語

台風の災害は、大雨や洪水、暴風、高潮など、種類が多く、すべての災害を完全に防止することは不可能であるとしても、産官学が連携して、堤防や防波堤を築いたり、低地や傾斜地での住宅立地を規制したり、その他様々な対策を講じることにより、被害を軽減することはできる筈です。
また、災害の発生が予知される場合は、空振りに終わることがあっても、決して手遅れになることがないよう、早めに避難の指示や命令を発するべきでしょう。
更に、災害発生時だけでなく、平時から避難所が快適な生活空間として利用できる体制を築くことが望まれます。

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