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  1. 産業法務の視点から 平川博
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第47回 空き家問題

産業法務の視点から

平川 博氏

1.空き家の発生・増加

調布市役所HPの「空き家問題と調布市の取り組み」と題するウェブページでは、「空き家問題とは」という見出しの下に、以下のように記載されています。

高齢化、人口減少、住宅の老朽化、社会ニーズや産業構造の変化など、空き家が発生し、増加する要因は、日本における様々な社会現象が背景にあると言われています。
「平成25年住宅・土地統計調査結果」(総務省統計局)によると、全国の総住宅数6,063万戸のうち空き家は820万戸、空き家率は13.5パーセントと過去最高に達しました。7、8軒のうち1軒が空き家ということになります。そのうち、管理が定期的に十分なされていないとされる戸建ての空き家が毎年10万戸程度増加しているとみられています。
http://www.city.chofu.tokyo.jp/www/contents/1505374438938/index.html

2.空き家の類型

「JBR生活救急車」というサイトの「急増している空き家の実態を徹底解説」と題するウェブページでは、「空き家とその類型」という見出しの下に、以下のように記載されています。

日本全国の空き家数は年々増加を続けており、2008年の空き家数は757万戸、空き家率は13.1%に達しました。この数値は、5年に1回調査が行われる総務省の「住宅・土地統計調査」によるものですが、この調査の空き家に含まれるのは、①売却用住宅の空き家、②賃貸用住宅の空き家、③二次的住宅(別荘)など、④その他の空き家の4類型です。①、②は分譲中や借家人募集中の住宅で(新築、中古を問わない)、調査した時点では買い手や借り手がついておらず、空き家になっているというものです。③は普段生活する住宅とは別の住宅で、別荘や残業で遅くなった時に寝泊りする住宅などがこれに当たります。④はこれ以外のもので、居住者の転勤や入院などで長期間不在となったり、居住空き家になっているもの、建て替えなどのため取り壊す予定になっている住宅などがこれに含まれます。
https://sq.jbr.co.jp/library/345

3.問題の所在

「お金つくーる」というサイトの「不動産」というカテ中、「【空き家問題の対策】4つの原因と問題点を知り持ち家を活用する方法」(2018.07.04)掲示)と題するウェブページでは、「なぜ空き家が問題になってしまうのか?」という見出しの下に、以下のように記載されています。

長期間に渡り誰も管理していない空き家には以下の4つの問題があります。
■建物の老朽化
人が住んでいないことにより、換気や通水がされず建物の老朽化が進行しやすくなります。瓦の落下や外壁の剥落など目に見える劣化はもちろん、雨漏りや白アリ被害などによる構造体の脆弱化など倒壊につながる目に見えない劣化も放置されてしまいます。
■防災上の問題
老朽化が急速に進むことにより、地震、台風、大雪などの自然災害で倒壊する可能性が高くなります。倒壊により直接的な人的被害が出る場合や、救急車両の通行を妨げるなど副次的被害も拡大します。
■防犯上の問題
放置され「誰も来ることがない家」となると、不心得者や犯罪者の不法侵入によりアジトなどに利用される場合があります。不法占有者による火事だけでなく、放火の対象になる可能性もあります。
■景観や衛生の悪化
朽ちかけている建物はもとより、手入れされていない庭の雑草や建物に絡みついたツタ、壁の落書きなど周囲の景観を破壊します。害虫の大量発生や野良猫、ネズミなどの住処になったり、ゴミの不法投棄場所になったりします。
どの問題点にも共通して言えるのが、自分以外の他人、特に近隣の住民に多大な迷惑をかけてしまうという事です。空き家問題は「空き家を持っている人の問題」ではなく「管理されていない空き家の近隣に住んでいる人の問題」です。
https://money-property.com/fudousan/akiyamondai/

ところで、調布市役所HPの前記「空き家問題と調布市の取り組み」と題するウェブページでは、「空き家が発生する原因とは」という見出しの下に、以下のように記載されています。

空き家問題は、空き家の存在自体が問題ではなく、防犯、雑草の繁茂などによる害虫への懸念、倒壊の危険などの面が、近隣への悪影響と発展し、問題となります。
このことから、空き家問題は所有者側の視点ではなく、近隣住民側の視点で語られることがほとんどです。その結果、残念ながら空き家は地域の景観や安全を損なうものというイメージが定着してしまいました。
空き家問題は、所有者が「悪」で、被害を受ける可能性のある近隣住民が「善」という単純な構図ではありません。空き家問題の特性として、所有者自身も管理や利活用について、困っている状況にある方が増えている実態が存在するからです。
(http://www.city.chofu.tokyo.jp/www/contents/1505374438938/index.html)

4.空き家放置の理由

「お金つくーる」というサイトの前記「【空き家問題の対策】4つの原因と問題点を知り持ち家を活用する方法」(2018.07.04掲示)と題するウェブページでは、「なぜ放置される空き家が出てくるのか?」という見出しの下に、以下のように記載されています。

【理由1.】空き家所有者の高齢化
空き家の所有者の年齢について見てみましょう。以下のグラフは国土交通省の「平成25年度空室実態調査」による戸建て空き家所有者の年齢のグラフです。
全体的に65歳以上が多いですが、(参考)「居住世帯ありの持ち家の戸建て住宅の、家計を主に支える者」の年齢と比較すると、10ポイント以上高くなっていて、高齢者が空き家を所有している比率が高いことが分かります。
空き家になってしまった理由としては、住人の死亡や入院、老人ホームへなどの施設への入居など高齢者特有の理由が50%を超えます。…(中略)…

所有者が高齢だと体力的にも管理ができないケースが多くなります。空き家が現在の居住地よりも離れていたりすればなおさらです。
高齢者が死亡した場合子供が相続することになりますが、核家族化で子供も住居をもっていますので、多くの場合親の住居は空き家になってしまいます。

【理由2.】「住めない」「貸せない」「売れない」三重苦物件
空き家の多くは老朽化して住めなくなった住宅がほとんどです。建築時期で見ると「その他の住居」の74.6%が昭和55年以前の旧耐震基準の建物になります。…(中略)…
耐震基準だけでなく建築時は適法であった建物でも、その後の法律の改正など建坪率や接道などが違法になってしまったものは「既存不適格」と呼ばれます。既存不適格の建物の場合、購入後に増改築をしようとすると規制に引っかかるため大規模に手をいれられません。
このような建物の場合、当然所有者も住みませんし賃貸に回しても借主は現れないでしょう。家を解体する前提で売却しようとしても、解体費の捻出や解体費用分の値引きもあり、希望する価格で売れないため放置されているケースも多くあります。
放置された結果、老朽化も進み58.9%の建物で腐朽、破損が生じており、27.2%で屋根の変形や柱の傾きなどが生じています。…(中略)…

【理由3.】固定資産税が高くなるから解体しない
近隣の迷惑になるほど老朽化した空き家であれば、解体して更地にすれば問題は無くなります。ところが、土地の固定資産税にはその土地に家が建てられている場合の特例があり、敷地が200㎡以下の場合は固定資産税が6分の1になります。(200㎡を超える場合は家の床面積の10倍までの固定資産税が3分の1に軽減) …(中略)…
居住していてもしていなくても、建物さえ立っていれば軽減措置は受けられますので、「住めない」「貸せない」「売れない」住宅は、どんなに老朽化が進んでも解体がなかなか行われません。

【理由4.】新築偏重の日本の住宅市場
日本では戦後の住宅難の時代から高度成長期にかけて、住宅の量を確保することを目的に住宅政策がとられてきました。
また住宅建設による経済効果もあり、景気刺激策として新築住宅への減税などの優遇措置が取られてきました。現在も新築住宅への優遇措置は続けられており供給は続いていますが、人口減少が転じた今は供給過多になっています。
一方中古住宅の市場は民間の経済原理まかせで、中古住宅を買う際のローンやリフォーム費用などには優遇措置は取られていません。
買い手側からすれば新築住宅の方がお得であれば、当然新築に流れます。実際に住宅取引に占める新築住宅の割合は8割で、中古住宅は残りの2割しかありません。…(中略)…

【理由5.】相続と地権者の問題
空き家を取得した経緯を見てみると、52.3%が相続で取得しています。核家族化により両親との同居をしている世帯は少数ですから、相続した時点で空き家になっています。…(中略)…
複数人で相続した場合、不動産の処分方法で折り合わず棚上げになる場合もあります。
「育った家だから壊したくない」「先祖代々の家は売れない」などの感情的理由や「地価が高くなるまで持っていた方がいい」といった経済的な理由もあります。兄弟姉妹の仲が悪く何年も話し合いにすらならないケースもあります。
相続問題のほかにも複数名義人がいる借地に建てられた家など、権利関係で問題がある建物は、解決までのめども立たずそのまま放置されるケースが多くなります。

(https://money-property.com/fudousan/akiyamondai/)

5.問題の本質

「考える不動産投資」というブログサイトの「空き家問題の本質。空き家を埋めれば別の空き家ができる」(2016.08.08掲示)と題する記事では、以下のように記載されています。

空き家問題の本質をシンプルに考えると、世帯数に比べて家の数が多いということで、その解決策は世帯数を増やすこと、家の数を減らすこと以外にありません。
空き家問題の対策は上記のどちらか、もしくは両方を促進するものである必要があると思いますが、実際に進められている対策はどうでしょうか。ほとんどが、空き家を減らして別の空き家を作ることにしか貢献していないように思えます。…(中略)…良質の中古住宅のストックを作ることは大切なことだと思いますが、並行して「新築の抑制」と、「古い住宅の解体」を進めていく施策がなければ意味がありません。そのためにシンプルに有効な手段はたくさんありますが、どれも企業や業界団体、官庁の既得権益を冒すものなので、容易に進められないのかもしれません。…(中略)…
問題意識があっても、様々な既得権益に阻まれて、実際の施策は本質的なポイントからずれていってしまう、というのはままあることですが、それがこの「空き家問題」に置いては特に顕著に感じられます。
http://blog.oneman-band.biz/?eid=1

6.結語

空き家問題は、住宅の需要が供給を上回っていた住宅難の時代と裏腹に、少子高齢化により住宅の需要が供給を下回るようになったことから生じています。空家等対策特別措置法が制定されてから3年経ちましたが、空き家は今後も増加し、空き家率3割時代(両隣のうち片方は常に空き家の社会)の到来が懸念されています。このような憂慮すべき事態を打開するために、すべての国民が安心して快適な生活を送ることができるよう、産官学が連携して、住宅の需給バランスを図ることが望まれます。

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