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第37回 天皇陛下スピーチから学ぶ

あの記者会見はこう見えた!

石川慶子氏

2019年4月から当協会で広報リスクマネジメント研究会を本格的にスタートすることになりました。1回目のスピーチライティング研究を18日に開催したところ、海外の演説に学ぶのもいいが、日本人なのだから天皇陛下のスピーチを研究対象としてよいのではないかという意見があり、私も共感しました。2019年4月30日に平成が終わり、5月1日から令和が始まり、新しい時代の始まりを天皇陛下のスピーチから学ぶことにしたいと思います。

上皇陛下、感謝に溢れ

まずは、4月30日上皇陛下のおことばを振り返ってみました。

今日をもち、天皇としての務めを終えることになりました。
ただ今、国民を代表して安部内閣総理大臣の述べられた言葉に、深く謝意を表します。
即位から30年、これまでの天皇としての務めを、国民への深い信頼と敬愛をもって行い得たことは、幸せなことでした。
象徴としての私を受け入れ、支えてくれた国民に心から感謝します。
明日から始まる新しい令和の時代が、平和で実り多くあることを、皇后と共に心から願い、ここに我が国と世界の人々の安寧と幸せを祈ります。

構成を見ると、退位の事実、謝意、自分の気持ち、感謝、願いと祈り、という構成。200字でありながら、簡潔にまとめられています。

私が着目した言葉は、「国民への深い信頼と敬愛をもって行い得たことは幸せなことでした」「私を受け入れ、支えてくれた国民」「皇后と共に」でした。国民の代表として皇室に入り、受け入れ、支え続けた上皇后への感謝と国民への感謝が重なり合います。思えば、上皇陛下と上皇后陛下は私たちの親世代に当たります。私の父と母のあり方を振り返ると、夫を立てて妻は一歩下がって支える時代であったと思います。

壇上から降りる際に上皇后陛下をエスコートする姿も目に焼き付きました。支えてもらってもそこに奢らず、見下さず、支え続けてくれた人に最高の敬意を表す姿だったように思います。2人が歩み続けることができたのは、「深い信頼と敬愛」があったから。苦難があっても振り返れば「幸せだった」、これは誰もが最後に発したい言葉でもあります。そんな人生を歩みたいものだと共感します。

天皇陛下、「国」への思い

5月1日、天皇陛下が誕生し、即位の言葉を述べられました。

日本国憲法及び皇室典範特例法の定めるところにより、ここに皇位を継承しました。
この身に負った重責を思うと粛然たる思いがします。
顧みれば、上皇陛下にはご即位より、30年以上の長きにわたり、世界の平和と国民の幸せを願われ、いかなる時も国民と苦楽を共にされながら、その強い御心を御自身のお姿でお示しになりつつ、一つ一つのお務めに真摯に取り組んでこられました。上皇陛下がお示しになった象徴としてのお姿に心からの敬意と感謝を申し上げます。
ここに、皇位を継承するに当たり、上皇陛下のこれまでの歩みに深く思いを致し、歴代の天皇のなさりようを心にとどめ、自己の研鑽に励むとともに、常に国民を思い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国及び日本国統合の象徴としての責務を果たすことを誓い、国民の幸せと国の一層の発展、そして世界の平和を切に希望します。

皇位継承の事実、上皇陛下への敬意と感謝、歴史に学ぶ姿勢、責務を果たす決意、願いという構成でした。「国民」5回、「日本国」3回、「上皇陛下」3回、「憲法」2回、「世界の平和」2回など、繰り返される言葉が多くありました。「国」だけを取り上げれば8回使っていることになり、国への思いが強く出た内容だったといえるでしょう。繰り返される言葉には思いがこもるからです。

私が着目したのは「歴代の天皇のなさりようを心にとどめ、自己の研鑽に励む」。過去を教訓として深く考察し、自らを磨いていくという言葉に、令和の時代のあり方を感じ、共感しました。慣例通りや人からの指示を待つのではなく、自ら考察し、行動する決意を強く出しつつも、あくまでも憲法にのっとることを表明したのだろうと受け止めました。リスクマネジメントも過去に向き合い、自らを律していくことが鍵となります。私が4月から開始した「広報リスクマンジメント研究会」も「自己研鑽の場」としてアナウンスをしました。思いが共通していて嬉しくなりました。

皇后雅子様は私と同世代。働く女性が皇室に入り、出産の重圧、適応障害などが報じられ、雅子様の状態は現代の課題をそのまま映しているようでした。守旧がぶつかった時代を生きているとも言えますが、新しい時代を切り開くには摩擦も必要ではないでしょうか。令和は議論が活発な時代になるのかもしれません。楽しみです。

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