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  1. 外見リスクマネジメント 石川慶子
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第12回 謝罪時の外見リスクとは?

人生において謝罪の経験は一度もない、と主張する人はおそらくいないでしょう。ところが謝罪は案外難しい。言葉だけではなく、全身謝罪モードにしなければ、かえって相手を怒らせてしまうこともあるからです。

昨年は、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗氏が女性蔑視発言で謝罪会見をした際の態度、服装が批判を浴びました。原因は、何について反省しているのか不明な上に、書類で相手を指す上から目線の態度、紅白ストライプのおめでたいネクタイ。2018年の日本大学アメフト部のタックル事件では、監督が相手チームへの謝罪に赴く際、遅い行動もさることながら、ピンクのネクタイだったことが違和感をもって報道されました。ピンクは大学カラーだったからだ、と擁護した人がいましたが、謝罪は自己主張や大学の宣伝のために行くのではありません。謝罪の目的は相手の怒りを鎮めるためです。自己主張、組織宣伝カラーは脇に置いて、シンプルで公式感のある服装で相手に失礼がないようにすることがダメージコントロールになります。目につかない服装、落ち着いた態度であればこそ、じっくりと言葉に耳を傾くことができるのです。

では、具体的にはどうしたらいいか。つい笑顔になってしまう人は、眉毛の上下運動や口を引き締める。甲高い声で話す癖のある人は、低くゆっくりとしたスピードで話す。とはいえ、これは平時からの訓練が必要。すぐにできることといえば、服装。服装は知識があれば整えることができます。

男性でありがちな服装の失敗は、シャツの第一ボタンを外す、ストライプのシャツ、ネクタイ、スーツを着用してしまう、高級な腕時計をしてしまう、といったことです。

シャツは苦しいからだと思いますが、普段第一ボタンを外している男性は多いのですが、謝罪の時に第一ボタンを忘れずに留める努力はしてほしい。また、ストライプは華やかに見えてしまうので避けます。白のシャツ、濃紺のネクタイ、濃紺のスーツ、黒のベルトに黒のひも靴、を普段から一通り揃えておけばどのような場面でも対応できます。ポケットチーフは、さまざまな意見がありますが、私は謝罪時には外すことをお勧めします。チーフは清潔感やきちんと感は表現できるものの、四角く折りたたんでいれればまだしも、パフ型で挿入してしまうとパーティー向けになってしまい華やかな雰囲気になってしまうからです。これをやってしまったのが、かんぽ生命の不適切営業問題で記者会見をした日本郵政の長門正貢社長(2019年当時)。第三者委員会の報告書を読まずに記者会見をした挙句、「朝から会議だったんだ!」と捨て台詞で会場を後にしました。服装だけではなく、向き合う姿勢に欠けた態度でした。

女性でやりがちな失敗は、派手なイヤリングやピアス、ネックレスをしてしまったり、一目でブランド品とわかる服を着用してしまったりすることです。胸元も気を配りたい部分。シンプルで胸が空きすぎない白のブラウスやカットソーが好ましい。キラキラ光るアイシャドウや赤い口紅といったメイクは避ける。ストッキングも黒ではなくナチュラルにして清楚にする。黒ストッキングは夜の印象を与えてしまうからです。女性は女性に厳しいので、謝罪する相手が女性の場合には特に注意が必要です。記者会見ともなれば、多数の女性によるチェックが入ります。色はどうするか。紺やチャコールグレーなら間違いがありません。シンプルな黒は喪服に見えてしまい、レースの黒やデザイン性のある黒は華やかに見えてしまうからです。スーツかワンピースも悩みどころですが、デザイン性がなければどちらでも構わないだろうと思います。スーツであれワンピースであれ、華やかさがあったり、体のラインがくっきり見えたりするとリスクにはなります。

恥ずかしながら、筆者は外見リスクマネジメントに取り組む前には、紺のジャケットや白のシンプルなインナーを持っていませんでした。紺と白の組み合わせはつまんないと思っていたからです。しかし、外見リスクを研究し始めてから、考え方を変えました。手持ちの中から地味な服を探すのではなく、謝罪時でも着用できるシンプルな服装を一式揃えることにしたのです。今ではすっかり紺ジャケット、白インナーの素晴らしさに魅了されています。写真や動画を撮影すると、痩せてスマートに見える、品よく見える、内容に集中できる。白のインナーは反射板となって顔を明るくする、どんな色のスーツにも合わせられる。同じ白でも丸襟、Vカット、スクエアカット、ハイネック、ボータイと様々な形で変化をつけることができる。大きな発見でした。ただし、これは自力ではなく、15年以上つきあっているスタイリスト高野いせこさんからの知識と着こなし術の提供があってこそのこと。

謝罪の気持ちを伝える際には、言葉だけではなく、相手からどう見えるのか、服装、態度や表情に配慮して組み立てることが信頼回復につながるのではないでしょうか。

【外見リスクマネジメント基礎講座】(石川慶子MTチャンネル、RMCAコラボ企画)
謝罪時の服装リスク 色、柄、着こなし方の注意 下記で画像解説しています。
https://youtu.be/f7XNaYw5sOg

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