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  1. 産業法務の視点から 平川博
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第52回 物流の次世代技術

業法務の視点から

平川 博氏

1. 論説

「次世代ロジスティクスサービスを支える先進技術開発」
曽我修治他5名【日立評論2017 Vol.99 No.6】


1.はじめに
近年物流業界において、eコマース(Electronic Commerce)の拡大などにより少量多頻度配送が増加する一方で、労働力の不足やサービスの高付加価値化などにより、労働集約型オペレーションの収益性が悪化し、社会インフラとしての物流の維持が危機に直面している。これに対して、リソースの共用化やAI(Artificial Intelligence)・ロボット活用による省人化などの新しい取り組みが急速に進められている。

今後、物流の仕組みは、図1のようなロジスティクス向け共通プラットフォームにさまざまなリソースがつながり、荷主からの要求に対してプラットフォームの最適化エンジンが任意のリソースを協調させ、最適なロジスティクスを構築して運用する形態になっていくと考えられる。…(中略)…

図1|次世代ロジスティクスソリューション

2.ロジスティクス最適化技術
顧客の望む場所・時刻に高効率にモノを配送するには、以下の3点が求められる。
1.倉庫配置や輸送手段などの物流ネットワークの最適化
2.各倉庫に保持する在庫量や入出庫人員・トラックなどのリソース配置の最適化
3.手配したトラックのサイズ、台数、ドライバー制約の下で効率的なルート・順序を決める配送指示の最適化
日立は、これらの長期・中期・短期レンジの最適な意思決定を支援し、さらには自動化する技術を開発・製品化している【図2参照】…(中略)…

図2|タイムスパンに応じたロジスティクス最適化のアプローチ


http://www.hitachihyoron.com/jp/archive/2010s/2017/06/12b06/index.html

このように、日立は少子高齢化現象による労働力不足や製造・物流技術の飛躍的な技術革新、経済のグローバル化等を視野に入れて、社会全体の最適化という壮大な構想に取り組んでいます。

2.無人搬送機を使ったBtoB物流

千葉県印西市で2016年5月に竣工した「プロロジスパーク千葉ニュータウン」というマルチテナント型物流施設では、以下のように、物流およびアパレル業界で初めて無人搬送機を使ったBtoB物流に取り組むことが報じられています。
「プロロジス/TSI・プロダクションと物流の次世代技術導入で業務提携」
【LNEWS[2018年12月03日配信]】


プロロジスは12月3日、アパレル企業TSIの物流業務を請け負うTSI・プロダクション・ネットワーク(TSIPN)と物流分野での新サービスと次世代技術の検証・導入に関する共同の取り組みについて、業務提携を行うと発表した。
業務提携の内容としては、ロボットを活用したマテリアルハンドリングに適した施設設備の検討、アパレル向けの次世代型物流プラットフォームの構築などが含まれている。
取り組みの一つとして、TSIPNは「プロロジスパーク千葉ニュータウン」において、無人搬送機型ピッキングロボットの運用を開始し、EC商品のみならず店舗向けのアパレル商材の庫内オペレーションをロボットでまかなっていく。
無人搬送機を使ったBtoB物流は、物流およびアパレル業界で事例がなく、この取り組みが先例となる見込みだ。また、TSIPNが利用している「プロロジスパーク成田1-C」においても、ロボットを使った物流オペレーションに切り替えていく予定としている。


https://lnews.jp/2018/12/k1203307.html

ここで指摘されているように、世界標準に適合しなければ、国際交流の場で取り残されて、衰退の一途を辿ることになるでしょう。

(2)輸送包装開発
「世界標準の輸送包装開発」とは?
【ランスモントHP】


複雑化する物流環境の中、世界で勝ち続ける企業が求めた「世界標準の輸送包装開発」とはどのようなものなのでしょう?それは次の4つの視点を持つ、“物流における可能性”のさらなる追求でした。
・実際の輸送環境を計測・解析し、最適な包装設計のための評価試験条件を、データに基づいて定義することができる。
・輸送環境の実測ができない場合でも、自社の物流条件に適した試験規格を選択し運用することで、最適な包装設計と評価試験を実践できる。
・試験精度、解析精度、再現性などにおいて、世界に認められた機器を使用することで、海外の顧客からの要求にも余裕を持って対応できる。
・世界で利用される輸送包装試験規格や新しい規格・規制情報にアンテナを張り、評価方法・試験条件の変化に迅速に対応できる。


http://www.lansmont.co.jp/standard/

因みに、平成28年3月28日に開催された我が国物流システムの国際標準化等の推進に関する連絡検討会の第1回会合で提出された国土交通省物流審議官部門国際物流課作成の「我が国物流システムの規格化・国際標準化に向けて」(資料1)と題する資料では、「物流システムの国際標準化の推進に関する政策的位置づけ」という見出しの下に、「政府全体として、我が国の技術やシステムの国際標準化を推進することとされており、物流システムもその海外展開や物流産業の成長のため、標準化を図ることが必要」と記載されています。

(http://www.mlit.go.jp/common/001126401.pdf[原書2頁])

4.次世代技術の開発

(1)センコー 世代技術の新法人を設立
【物流Weekly[2018年7月22日掲載]】


センコーグループホールディングスは7月17日付で、AIやロボットなどの次世代技術の開発やシステム販売などを行うイノバテックスタジオを設立した。
同社はアームロボットや無人搬送機など、物流センターの省人化・機械化につながる設備を一部事業所で導入しているが、これをさらに加速し、AIを活用した業務の自動化・効率化の研究開発を本格化させるため、今年4月、「AI化プロジェクト」と「ロボティクスプロジェクト」を設置。イノバテックスタジオは、このプロジェクトの技術開発部門を法人化するもので、トラックの運行効率を向上する自動配車システム、倉庫内のセキュリティーを強化する顔認証システムの開発や販売などを行う。


(https://weekly-net.co.jp/news/39415/) 

(2)イノバテックスタジオが課題解決のお手伝いをします
【イノバテックスタジオHP】


お客様の専門分野が抱えるビジネスの問題と、私たちの提供するソリューションが交わることで、新たなイノベーションが生まれます。
「世界中の人々の生活を、あなたのビジネスが幸せにする。」私たちinnovatech studioはそんな未来の創造をお手伝いします。


(https://innovatech.studio/)

5.結語

遅かれ早かれ、物流の次世代技術は、AIとロボットが一体化して、世界中に分散している市場を統合して、最適化を図ることを実現するものになるでしょう。そのためには、生産・製造業者と消費者の間に入って需給調整を行い、最適な在庫管理を行うことが必要です。既に生産・製造もAIとロボットが担うことが期待されていますが、特に人類の生存に不可欠な食糧の供給源である農林水産業は、目まぐるしく変化する天候の影響を受けやすく、いつでも臨機応変に対応することが必要であることから、産官学が連携して、人類がAIとロボットとの共存社会の実現を図ることが望まれます。

 

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