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第34回 JOC、広報の敗北か勝利か

あの記者会見はこう見えた!

石川慶子氏

2019年1月15日、JOCの竹田会長が五輪招致での不正疑惑について説明するための記者会見を開きました。が、当初は30分の予定だった会見が、急遽回答できることがないという理由で質疑応答なし会見になり、用意された文章を読み上げるだけの場となりました。
当然、報道陣からは不満が出ます。一方、JOCもリスクは取りたくない。果たしてJOCの広報戦略は成功といえるのでしょうか。

記者の戸惑いとは

大手新聞社から私に電話が来たのは15日夕方。記者の疑問は、「JOCの会見を広報の視点からみてどうなのか、解説お願いしたいのですが。今の段階では説明責任を果たすことよりも質疑応答することのリスクが高いと判断したと説明しています。わかるんですがなんとも釈然としないのです。これをどう受け止めていいんですかね」。憤りというよりは当惑したために電話をしてきたようです。私からすると、戸惑う記者に興味を持ちました。早速動画をユーチューブで確認。

確かに竹田会長のコメントは原稿を読み上げただけでさっさと終わってしまいました。その後、会見を速やかに終了しようとしたら、報道陣から「なぜ、質疑応答がなくなったのか説明してほしい」「真ん中に立ってきちんと」と広報担当者が詰め寄られるシーンとなりました。

報道陣に囲まれたJOC広報担当者は、悲壮ではありましたが優秀でした。「私が今お答えできることは、なぜこの記者会見で質疑応答がなくなったのかということ、誰がこの記者会見を準備したのかというこの点のみです」と回答を限定していたからです。

報道陣が怒った理由は、30分という記者会見をアナウンスしておきながら、夜中に方針変換して質疑応答をなくしたこと。しかも会見は7分で終わり、竹田会長は原稿を読んだだけでさっと引っ込みました。運営としては、お手本になり、ある意味うまいともいえるのですが、、、

一方、JOCからすると、メディアトレーニングをやったら、あまりにも言えないことだらけで質疑応答そのものにリスクがあると判断。余計なことを言って批判されるよりは、質疑応答がないといって批判される方が、ダメージが少ないと判断するのは、ある意味正しい判断なのだろうと思います。従って、報道陣の批判を承知であればJOCの勝利といえるでしょう。もっとも、最初の段階で記者会見ではなく、コメント文の発表ということでHP掲載の判断ができていれば一番良かったのだろうと思います。初動判断ミスであることは確かです。

せめて気持ちを込める

本来なら、仏政府の反撃という見方もある中、世論を味方につけることができた筈。もっとうまいやり方はなかったのでしょうか。私だったらどうするかを考えてみました。質疑応答なしにするのは仕方ない判断だったとしたら、せめて原稿の読み方のトレーニングをするだろうと思います。法務が用意した原稿を棒読みではあまりにもマナー違反といえるからです。ゆっくり読む、顔を上げて、あたかも原稿がないかのように報道陣を見つめて訴えかける。読んだとしても間を作る。強調する言葉は2度3度繰り返す、原稿にある言葉でいいので自分の言葉で強められる部分は強める。そのような練習をして7分を20分程度まで引き伸ばす。テレビのためにも見せ場を作り、テレビカメラに向かって身の潔白を訴えかける。言葉に感情を乗せ、ゼスチャーを使い、全身全霊で訴えかけるトレーニングをしていたことでしょう。どうして私にメディアトレーニング依頼をしてこなかったのかなあ。せっかく記者会見を開いたのに、批判報道になってしまい、何とももったいないことです。

参考
サンスポ(会見内容と広報部長とのやりとり全文)
https://www.sanspo.com/sports/news/20190115/spo19011516560004-n1.html

朝日デジタル(動画)
https://www.asahi.com/articles/ASM1H42B5M1HUTQP018.html

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