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千葉科学大学 危機管理学部 危機管理システム学科 教授 木村 栄宏 著
リスクコンサルタント、リスクマネジャーとして、認識を新たにするべき分野として、「リスク政策」がある。ここでは、リスク政策について、考えていきたい。
リスク政策とは何だろうか。環境問題分野では、リスク政策という呼び方は浸透しており、一般化している。しかし、リスク政策は環境分野に限られるわけではない。また、最近では、リスクガバナンスという概念も、徐々に浸透してきている。リスクガバナンスという場合は、例えば対象が食品、原子力、化学物質、医療等といった、国民の安全・安心に直結する分野、あるいは「災害リスクガバナンス」という言葉で代表される防災、減災、災害対策等の危機管理分野等で用いられ、考え方も体系化されつつある。リスクガバナンスとリスク政策は、何となく似通った概念ではないかと思う方も多いだろう。だが、リスクガバナンスとリスク政策は異なるものだ。
確かに、リスク政策といった場合も、リスクガバナンスと言った場合も、共に「予防原則」という考え方が基本にある。潜在リスクを顕在化させないために、「未然に防止すること」「事前に警戒すること」が優先される。宇宙船地球号、ローマクラブレポート、沈黙の春等々、環境リスクに対して予防が大事であるという認識は、社会的に認知されているだろう。
一方、リスク政策と言った場合、政策主体は国家や自治体等、行政である。リスクガバナンスは利害関係者が互いに社会的に調整していくものであるのに対し、リスク政策は行政が主体となる。例えば最新での麻生首相の支持率は、19%へ低下という主要新聞の世論調査の結果が出ているが、理由付けとして大きいのは「政策への不満」であった。「政策」の場合は、正当性の検証(正しいか正しくないか)、有効性の検証(費用効果分析)、迅速性(素早い環境変化への対応)、実施後の不可逆性(たらればの世界)といった特徴があろう。
こうしたリスク政策の考え方は、リスクコンサルタントやリスクマネジャーと密接であり、相互に応用可能である。
(続く)