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千葉科学大学 危機管理学部 危機管理システム学科 教授 木村 栄宏 著
1.0、2.0、そして3.0という呼び名で、ある事象や考え方、パラダイム等の次元が変わっていくことを表わす言い方がある。たとえば最初に一般になじみがでてきたのがWeb1.0やweb2.0だった。web2.0は流行語にもなったが、情報の送り手と受け手の一方通行がwebを通して双方向に流動化した情報発信、あるいは1台1台別々個々のパソコンではなく、ネットワークで繫がったサーバーによりそれまでのアプリケーションソフトなどが動くことになったことだ。 web3.0では、携帯技術やセンサー技術などの進歩により、個人と企業が 「ソーシャル」をキーワードに結びつき、仮想と現実の融合となることといっても良いだろう。 CSRについても、1.0、2.0,3.0の時代がある。これは、『社会貢献でメシを食う。』(ダイヤモンド社、2010年9月、米倉誠一郎氏監修、竹井善昭氏の著作)で示されているものだ。その考え方を引用、紹介させていただくと、次の通りである。 日本のCSRは、3つの段階を経て進化している。まず、CSR1.0とは「慈善」の時代、次のCSR2.0は「本業を通じたCSR」の時代、そしてCSR3.0が「本業との統合」の時代である。CSR1.0では、企業はNPOへの寄付、つまり金を出すだけだったが、CSR2.0になると、お金を出すだけではなく、自分たちにとっても意義のある出し方、つまり本業を通じたCSR、あるいは本業を活かしたCSRである。具体的にはアサヒビールの「うまい!を明日へ!」プロジェクトや、王子ネピアの「千のトイレプロジェクト」など様々なものがある。 CSR3.0では、「本業を通じたCSR」ではなく、本業の中にいかに社会貢献を組み込んでいくかという「本業とCSRの統合」である。CSR3.0になると、不況でも企業は簡単にCSRから手を引けないが、社会貢献を行う方が企業は儲かるし、社員のモチベーションもあがることも企業はわかってきている。このように日本のCSRは進化してきたが、CSR3.0時代では、CSRは企業の中核事項になっている、というものである。 この考え方は大変わかりやすく、納得できる。例えばキリンビールが「キリンフリー」を開発した当初、アルコールを主製品としている企業にとって、飲酒運転の社会的な問題が大きくなったことに伴う、キリンビールのCSRの一環としてのものであり、上記の区分で言えばCSR2.0のものかと私は思った。しかしその後ノンアルコール飲料の多大なる参入、開発競争を見れば一目瞭然のとおり、これはCSR3,0を先んじて行っていたのだとも捉えられる。 さて、一方、2012年5月15日に国際規格(ISO22301)として発効したBCMSであるが、いわばこれも1.0,2.0そして3.0へと変遷し発展してきたものと言える。 日本におけるBCP1.0時代は、内閣府「事業継続ガイドライン」、経済産業省「事業継続計画対策ガイドライン」、中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」と政府により相次いでガイドラインが示された平成17~18年頃。9.11同時多発テロによって日本でもBCPの存在意義が一躍有名になり、また2002年にISMS適合性評価制度で日本でも始めてBCMが規定されたが、それはBCP1.0より前のBCP0.0の時代とここでは位置づけよう。単に個々のBCPを策定する段階のBCP1.0から、マネジメント(BCM)、そしてBCMS(事業継続マネジメントシステム)に変化したのがBCP2.0。ISO22301はその認証制度の確立のために現在JIPDEC(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)が中核となりそのスキームを開発している最中であるが、まさにBCMSを企業や組織にビルトインさせる、BCP2.0から3.0への契機となろう。 更にBCP3.0を定義すれば、CSRと一体となった形、キーワードは「社会連携」になるのではないか。BCP自体がまわりの企業や組織を巻き込んで助け合う、社会全体が一企業一企業同士のネットワーク、連携により結びつき、イコール社会貢献になっている姿である。 従来、CSRは余裕のある大企業や利益があがっている一部の企業による、慈善的なもの、あるいはPR的なもので、投資ではなくコストという位置づけだったと思われる。しかし、現在はCSR3.0時代を迎え、企業の取り組みも大きく変化した。この背景には共生意識、持続可能な社会、エコ社会、格差社会、東日本大震災時に発揮した日本人の強い団結と連携など、様々なことがあるのではないだろうか。これはまさにBCP3.0も同様である。BCP3.0、社会連携、これらは今後のBCPを考える上での鍵となると思われる。
≪PR RMCA主催 ISO22301対応「BCM-RM研修コース」≫ http://www.rmcaj.com/_rmca/guide/authorization/bcm-rm_k.html
執筆者:木村 栄宏 (きむら ひでひろ) 千葉科学大学 危機管理学部 危機管理システム学科 教授
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