第20回 健康管理リスク政策(1)
企業における健康管理は、旧労働省の時代から労働安全衛生法により義務づけられている。労働者の健康状態などが把握され、新たな問題に対処する施策がだされるなど、リスク政策は、時代とともに進化している。メンタルヘルス・リスク政策のその一部であるが、今回は、健康管理一般に関するリスク政策について、企業としてリスク対処の観点で私見を述べたいと思う。
そもそも、国民全体の健康維持・増進自体が国の施策と言えるので、別に企業に限った話ではない。2002年に公布された健康増進法では、「生涯にわたって、自らの健康状態を自覚するとともに、健康の増進に努めなければならない」とあり、健康維持は、国民の義務であり、国民の権利であるとも言える。
したがって、企業における健康管理リスク政策は、労働と関連する施策だけととらえがちであるが、その範囲については、企業では確実に忠実に行っている。しかし、健康リスクという観点から見た場合、充分の政策が行われているとはとても言えず、厚生労働省総務課生活習慣病対策室の施策を掌握した上で、新たな、労働と関連する施策を加えるという手法が必要であると言えよう。
抽象的な部分が多いため、簡単に双方のリスク政策の概要を述べた上で、その内容を説明することにする。
1)企業での健康管理リスク政策
企業は、労働安全衛生法により、職場の健康管理を行うことを義務づけられており、労働者の健康状態などの把握などのため、一般健康診断、特殊健康診断として必要な健康診断項目が定められている。健康診断の的確な実施に加え、その結果に基づいて、医師による事後措置や保健指導の実施(二次健康診断)が必要とされている。一方、労働者には自主的な健康管理の努力が求められているが、医学知識の不足、健康の維持・増進についての認識が欠如していることもあり、実際には二次健康診断でのアドバイスすら守られないことも多い。義務づけられたリスク政策が実行されているにもかかわらず、充分な健康管理が徹底されていない点に、大きな健康リスクが残されている。
このため、国は、「事業場における労働者の健康保持増進のための指針(THP:Total Health Promotion 指針)を策定し、心身両面にわたる健康保持増進措置を推進しており、メンタルヘルス・リスク政策も行っているが、THP自体が義務化されていないこともあり、徹底されているとまでは言えない状況にある。
2)厚生労働省の健康増進対策
厚生労働省総務課生活習慣病対策室は、国民が一体となった健康づくり運動を総合的かつ効果的に推進するため、2000年より「二十一世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)について取り組んでおり、また、2008年4月より「特定健康診査・特定保健指導」(いわゆるメタボ検診)が始まるようになった。メタボ検診については、国民の知るところになっているが、健康日本21については、国民に浸透しているとまではいえない。
(以下、次稿)
参考資料
労働衛生のしおり 平成21年度 中央労働災害防止協会/編
厚生労働省 総務課生活習慣病対策室 施策の紹介 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/index.html#shi_05
生活習慣病を知ろう http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/seikatu/index.html
メタボリックシンドロームを予防しよう http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/metabo02/index.html
生活習慣病予防(健康づくり)特集 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu/index.html
健康日本21 http://www.kenkounippon21.gr.jp/ |